【パリ行ったことないの】 山内マリコ
本を閉じて眠りに落ちると、当然のようにかなりの頻度で、あゆこはパリの夢を見た。行ったこともないのに。夢の中では細部まではっきりと、そこはパリなのだ。目醒めたときに足の裏に、バレエシューズで石畳を歩いた感触がたしかに残っている。
p11
そしてあのころ自分が想像していたような”将来”とか”未来”なんて、結局どこにもなかったんだなぁと思った。あるのはただ、”現在”のみだ。
p147
いまから考えると、どうしてそんなふうに、全員が同じライフコースを、同じようなタイミングで生きな