【2020年の恋人たち】 島本理生

初対面のときに青が似合うと言った瀬名さんの言葉を思いだす。瑠衣は美術部だったこともあって色使いに敏感なのは分かるけれど、男性に言われたのは初めてだったかもしれない。必要な服を畳んで段ボール箱にしまいながら、このままがいいな、と口の中で呟く。どうして男女は触れた途端にすべてが違ってしまうのだろう。
p85




「別れの言葉が言えることは、幸せなのかもしれないね」
p254




出会って別れて、別れてまた出会って、別れて、別れて あと死ぬまでに何度くりかえすのだろう。
p268




ただそこに人がいて、一緒になにかを楽しんだり発散しようとしたりしていること。ただそれだけで、救われる人がいるのだと、途方もない実感に包まれていた。
p285




どうなるか分からない人生なんて嫌だった。でも、生きていれば幸も不幸も容赦なくやって来る。だから、守ったり叶えたいなら、ただ一つ「私」を手放さなければいいのだ。
p292

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