【女のいない男たち】 村上春樹

人と人とが関わり合うというのは、とくに男と女が関わり合うというのは、なんていうか、もっと全体的な問題なんだ。もっと曖昧で、もっと身勝手で、もっと切ないことだ
p47




若いときにはそういう淋しく厳しい時期を経験するのも、ある程度必要なんじゃないかしら? つまり人が成長する過程として。  
p100




恋をするというのはそもそもそういうことなんです。自分で自分の心がコントロールできなくなり、理不尽な力に振り回されているみたいに感じる。
p156




人生って妙なものよね。あるときにはとんでもなく輝かしく絶対的に思えたものが、それを得るためには一切を捨ててもいいとまで思えたものが、しばらく時間が経つと、あるいは少し角度を変えて眺めると、驚くほど色褪せて見えることがある。私の目はいったい何を見ていたんだろうと、わけがわからなくなってしまう。
p219




人間が抱く感情のうちで、おそらく嫉妬心とプライドくらいたちの悪いものはない。
p244




ブランデーは沈黙に似合った酒だ。静かに揺らせ、色を眺めたり、匂いを嗅いだりして時間をつぶすことができる。
p245


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