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初!八ヶ岳ソロ山のぼりに大興奮〜苔の森とニュウ〜

初めて八ヶ岳にのぼったのは8年前の天狗岳だった。
てっぺんではガスに覆われまったく景色を拝むことができず、またいつかのぼりたいと思っていた。
そして、梅雨入り前のわずかな晴れ間に、今だ!と苔むす八ヶ岳をめざすことにした。
まるで8年越しの恋を取り戻すかのように、どきどきとハラハラをたずさえて。

八ヶ岳はひとつの山を指すのではなく、本州中部の長野県から山梨県にかけ、北は蓼科山、南は網笠山まで南北30km、東西15kmにわたり連なる山々を総称して呼ばれている。由来はいくつかあるようだが、たくさんの山の連なりというのが広く認知されているようだ。
八ヶ岳連峰の中央に位置する夏沢峠を境に北八ヶ岳、南八ヶ岳と分けられ、北八ヶ岳では苔の広がる原生林と池沼が神秘的な世界を漂わせ、南八ヶ岳は岩綾帯で夏には多くの高山植物がみられるという。
こうして書いているだけで、のぼりたくなってしまうのは私だけではないだろう。

今回リベンジ!と天狗岳も考えたのだが、いきなり日帰りソロでのぼるにはちょっと不安もあり、まずはのぼりたい山を間近でみよう!と比較的のぼりやすそうな “ニュウ” という山を選んだ。
ニュウとはちょっと珍しい山名だが、その由来について

刈り取り後の稲を円柱形や円錐形に積み上げる稲わらの「にう」が語源

山と渓谷オンライン

と "山と渓谷オンライン" に書いてあった。
ニュウのてっぺんは、ポコンと尖っていて、円錐形というのがなるほど理解できる。

ー ルート

6月上旬。
今回選んだルートは白駒池を登山口に、ニュウ、中山、高見石を周回し白駒池に戻るルート。
標準タイムが4時間半ほどの山行で、日帰り可能な初心者でものぼりやすいといわれるルートだ。
白駒池までは茅野駅からバスもあるが季節運行のため6月は走っていない。
よって、今回は車一択。

登山ルート

朝5時自宅を出発。東京はすでに20℃ほどありちょっと暑い。
関越の練馬インターから約3時間で白駒池入口駐車場へ。
駐車場の気温は12℃でひんやりする。
上着を2枚プラスし、お手洗い(協力金50円をポストに投入)を済ませ、駐車場目の前にある ”白駒の池入り口” から山のぼりスタートだ!

白駒の池入り口

ー 白駒池からニュウへ

白駒の池入り口から青苔荘までは徒歩10分。整備された木道を進む。

青苔荘までの整備された木道

入り口を越えるとすぐ苔に包まれた神秘的な空間がはじまる。
苔の美しさについつい写真を撮ってしまい、なかなか前に進まない。

もっと眺めていたい気持ちをおさえ、ようやく青苔荘へ到着。

青苔荘

紅葉シーズンは青苔荘の奥にある桟橋からの景色が素晴らしく、その様子は以前秋に訪ねたときの記事にあるのでよければご覧ください。

しょっぱなから寄り道ばかりしタイムが遅れているので、今回は桟橋にはよらず先へと進むことにした。

青苔荘の脇の道から進む

青苔荘から先は細い木道を池のまわりに沿って進む。

細い木道
もののけの森
木の間からのぞむ白駒池

登山道まではいくつか分岐があるが、看板が出ているので迷うことはない。

分岐ごとに看板があり迷わずにすむ

青苔荘から少しいくと右手に白駒湿原があらわれた。

白駒湿原

外国からの観光客らしき人が木道に腰掛け、ニコニコしながら私をみて何やら指をさしている。
指の先をみてみると

鹿さんがいた

鹿さん発見!
声は出さずに「お〜!」と顔で返事をし、私も静かにレンズを交換。

池の周りは木道があるが壊れている箇所もあり注意が必要。

歩きにくい道が続く

青苔荘から20分ほどでいよいよ登山道らしい道が始まった。
最初はゆるやかな道だが、かなりの悪路なため足元は注意が必要。

土はドロでぐちょぐちょになっている
横に目を向けると癒される

のぼりの道が始まってから30分ほどで急登になった。

果てしない急登の道

てっぺんの前で一度ゆるやかになるが最後の最後でグッとのぼる。
標高が高いせいかちょっと息切れも早い感じがした。
それほどのぼっていないけれど、岩が大きいので足への負担は結構ある。

ニュウてっぺんまでの最後の急登

てっぺんを感じる光。
のぼった先は崖の上だった。

ひらけた場所は崖の上

左手にニュウのてっぺんとおぼしき岩の塊がある。
「あ〜、これが八ヶ岳の岩だ!」
これまでのぼってきた岩とはなんだか規模が違うように感じた。

ニュウのてっぺんへの岩
岩をよじのぼる

やった!
ついに八ヶ岳の山に初めてひとりでのぼることができた!

ニュウてっぺん

ニュウの標高は2352m。
初の2000m越えソロ登頂だ!
感慨深すぎて泣きそうになった。

てっぺんはものすごい強風。大きな岩の塊でお昼休憩できるような場所はない。
でも、ひとりだったのでここはのんびりウロウロてっぺんを愉しんだ。

のぼりたい山が間近にみえる。
天狗岳と硫黄岳だ。
あの岩肌にゾクゾクする。

左側に硫黄岳、右手が天狗岳
あたりの山々が一望できる
富士山もみえた!

曇っていたが360度のパノラマを愉しむことができた。
しかし、まだあの山どの山がわからない。
今度は大きな地図も持ってこよう。

ー ニュウから中山へ

30分ほどてっぺんを満喫し、今回の山行で一番高い山、中山をめざす。
ジブリ作品の"もののけ姫"を思わせる原生林の中で、みずみずしい苔がただただ美しい稜線だった。

ジブリの世界のよう
原生林の中を歩く

岩の道から木の根っこの道、平坦な道もありながらのぼりくだりを繰り返すこと50分。ようやく標高2496mの中山に到着した。

中山てっぺん

中山のてっぺんは何もないけれど、おなかがすいていたので石の上に腰をおろして行動食を食べた。
すると登山教室の団体さんが通りかかり、ガイドらしき方が「この先5分ほどのところに展望台がありますよ」と教えてくれた。
「そうだ、そういえば展望台があったはずだ」
集団が通りすぎる前に行動食を食べ終え、皆さんのあとをついていった。

中山展望台。
岩だらけのひらけた展望台からはうっすらとアルプスの山々が見える。

中山展望台
北アルプスが遠くにみえる

ガイドの方が「北アルプスがみえるね!」と声高々におっしゃってくれたので、私もツアーの一員のように一緒に眺める。
「あ〜憧れの山が肉眼でみえている」
感動もひとしおで強風の中、しばしたたずんでいた。

そこでツアーの方々と別れを告げ、私は本格的なお昼ごはんタイム。
といってもカップラーメンだが。
今回もサーモスの山専用ボトルに熱々のお湯を入れて持ってきた。
しかし朝お湯を入れてから6時間以上経っている上に、気温も低いのでぬるいまではいかないが、さすがに熱々ではなかった。
麺はちょっと芯が残る感じ。
やはり低山で6時間以内までかなあ。2000m超える山だったら、バーナーを持ってきたほうが良さそう。
とはいえ、完食!やっぱりてっぺんで食べるカップラーメンは特別なのだ。

ー 中山から高見石

中山展望台から高見石まではぐんぐんくだる。石と石をぴょんぴょんまたぎ軽快にくだっているつもりだったが、ペースは標準よりゆっくりめだった。

石の道
白いお花がたくさん咲いていた
ニリンソウ?

高見石小屋の手前で少しのぼり返しがあったがおおむねくだること1時間、高見石小屋へ到着。
高見石小屋はこの日はおやすみだった。揚げパンが有名だけど、泊まってみたい山小屋なので次の機会にお世話になろう。

高見石小屋

休むことなく小屋の右手から大きな岩をよじのぼって高見石のてっぺんまで向かう。
この高見石てっぺんまでの岩が意外と怖かった。

大きな岩をよじのぼる

なんとかてっぺんにたどりつくも、びびって立ちあがれず岩にどっかり腰をおろす。
すると、先ほど別れを告げた登山教室の団体さんがあとからスイスイと軽快にのぼってこられた。
「みなさんすごいなあ」と思ったら、荷物を小屋の前にデポされて身軽そうだった。
「あ〜、そうか、デポしてくればよかったのか〜」
毎回学びが多い。

高見石のてっぺんも風が強く、びびっていたのもありレンズ交換できなかった。こうなると交換不要のレンズが欲しくなる。
白駒池がみえたけれど、立ちあがることもレンズ交換もできずなんだか微妙な構図、、、

高見石のてっぺんから

それでも眺められて本当によかった。
高見石の岩くだりは怖かったので団体さんのあとを追い、そのままついていきそうになったが、再び別れを告げひとり下山へと向かった。

ー 高見石から白駒池へ

高見石小屋からもまたどんどんくだる。
大きな石の道をくだるので、かなり神経を使う。足もだんだん疲れて踏んばりがきかなくなる。下山も必死だった。
高見石から30分ほどで白駒荘に到着。

白駒荘

ここから先はアップダウンはなく池の周りを通って駐車場に戻る。
その途中、なんとまた別ルートでおりてこられたあの登山教室の団体さんと再会。みなさん「あ〜またお逢いしましたね〜。お疲れさまでした!」と声をかけてくださり、まるで久しぶりの同級生にあったかのように嬉しかった。

素晴らしい山行だった。
てっぺんの景色はもちろんだが、神秘的な苔に包まれて歩ける道は心が洗われるようだった。
しかし、標高差のわりに疲労度も大きかった。
気圧や酸素の関係もあるのかもしれないが、足を大きくあげたり悪路だったり、慣れない道が体力を奪っていったのだろう。

初めての八ヶ岳ソロでこのルートを選んだのは正解だったと思う。
いきなり天狗岳の日帰りではもっとバテていたに違いない。
入門コースかなと思っていたが、やはり東京近郊の低山とは違う点がいくつかあった。
・アクセスが車で3時間かかった
・標高が高いこともあってか息があがりやすかった
・大きな石や岩が多いので足への負担が大きかった
ゆっくりのぼることがとても大切だと感じた。
無理をしないことは怪我や遭難を防ぐ大切な要素で、慣れてくるとチャレンジしたくなるけれど、自分の体力や経験をみまがうと思わぬ事故に遭ってしまう。
特にソロのときはなおさらだ。

八ヶ岳は泊まりのほうが私にはいいなと思った。
魅力的な山小屋もたくさんある。
次のステップが待ち遠しい。

下山までが山のぼりというが、私にとっては帰宅するまでが山のぼり。
帰りの運転がもっとも危険だ。
そう、私はいつも帰りの電車で爆睡するのだから。
でも、今回は八ヶ岳のソロ山のぼりでアドレナリンが放出されていたのか、帰りの運転で一度も眠くなることなく無事に帰宅。
長い一日旅が終わった。

梅雨明けがいまか今かと待ち遠しい。


距離:8.2km
累積標高(のぼり) 535m



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