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9年越しのリベンジはこれ以上ない美しさだった〜八ヶ岳天狗岳〜

八ヶ岳連峰は夏沢峠を境に以北を北八ヶ岳、以南を南八ヶ岳と呼ばれているが天狗岳は八ヶ岳連峰のほぼ中央、北八ヶ岳の南側にある。
西と東の双耳峰で標高2646mの西天狗岳は長野県茅野市に位置する北八ヶ岳の最高峰だ。

天狗岳は9年前、友人と一緒に一泊二日の山行で初めてのぼった。
しかし、あいにくの天気でてっぺんは真っ白。何も見えなかった。
記憶にあるのは岩を掴んでのぼったことだけ。
そして昨年7月、リベンジ!と再び天狗岳をめざすも濃霧のためまさかの途中撤退。
「どれだけ相性が悪いんだ」と思いながらも、どうしてもてっぺんからの景色が見たかった。
天気は複数の登山天気とアプリで確認し、今度こそ間違いないという天候を狙って6月中旬リベンジを決めた。

ちなみに昨年断念したときは、御射鹿池まで足を伸ばし素敵なカフェでランチを愉しんだのでそれはそれで思い出に残る山行だった。


ー ルート

迷ったのは時期とルート。
当初は白駒池の駐車場に駐め、憧れの高見石小屋に泊まり天狗岳を周回する予定だった。
しかし、スケジュールの関係で泊まりが難しい。渋の湯からのコースもあるが、やはり前回諦めた唐沢鉱泉からのルートでてっぺんをめざすことにした。
唐沢鉱泉の駐車場は昨年ブヨの嵐で大変だったので、今回はまだそこまでいないであろう6月にした。
さらに、雨上がりだったので苔も潤っているだろうと期待も高まった。
唐沢鉱泉から西天狗岳方面に向かい、第一展望台、第二展望台を経てまずは西天狗岳、そして東天狗岳まで向かう。
そこから今回は東天狗岳から根石岳の稜線が綺麗という噂を聞きつけ、稜線好きの私は根石岳まで足を伸ばした。
東天狗岳に戻り本来は中山峠を経由し黒百合ヒュッテから下山する予定だったが、分岐で間違え天狗の奥庭方面から黒百合ヒュッテに向かった。
これがとんでもなかった。

天狗岳登山ルート

ー アクセス

新宿方面から向かう場合、中央高速道路の諏訪南ICでおり30分ほどいくと、唐沢鉱泉と夏沢鉱泉に向かう分岐に出る。分岐を左に進むが、そこから3.6kmは未舗装の道。
未舗装といっても大きめの砂利で整備されているので普通車でも通ることができる。ただし、ところによっては少し陥没している箇所もあるので、ゆっくりゆっくり進むことをお勧めする。私の車は車高が低めなので時速10~20kmで進み、途中何台かの車に抜いてもらった。
特に帰りはくだりでスピードが出てしまうので要注意だ。
唐沢鉱泉の宿の手前の路肩スペースに登山者は車を駐めることができる。
40台ほど駐められトイレもある。
宿のすぐ横のスペースは宿泊者専用の駐車場になっている。

電車の場合、JR中央本線茅野駅からタクシーで1時間弱。
唐沢鉱泉に宿泊すれば送迎のバスもあるようだが、宿泊しない場合は茅野駅からの手段はタクシーになるようなので、車でくる人がが多いと思われる。
渋の湯登山口には茅野駅からバスもあるようなので、公共機関を使われる方は渋の湯からのアクセスをチェックすると良いと思う。

ー のぼり

この日も朝というか夜中に起き、2時半に出発。
唐沢鉱泉の駐車場には5時半すぎに到着した。
6月平日の6時前なのでさすがに駐車場はまだまだ空いていた。

唐沢鉱泉前の駐車スペース
まだまだ空きがある

諏訪南ICを降りたとき、あたりが曇っていたのでまさかまた?と嫌な空気がよぎったが、駐車場に着いたときには晴れていてほっとした。
トイレは100円の協力金を払うがトイレットペーパーは用意されてあった。
手を洗うところはない。
黒百合ヒュッテまでお手洗いはないので、ここで済ませておくことをおすすめする。

唐沢鉱泉駐車スペースのトイレ

前日は大雨だったので道がぬかるんでいるだろうとゲイターをつけて山のぼり開始!
まずは西天狗岳をめざして進む。

看板の先を右手に進む
この橋を渡るとのぼりスタートだ

序盤はゆっくりとあげていく感じ。

緩やかな道からスタート

途中、石の道もあるがそれほど険しさはない。

石の道

雨に潤った苔が青々として美しい。
苔むした、苔深い、まさに八ヶ岳の苔を見ているといろいろことばが浮かんでくる。
眺望がなくとも、この苔を見ているだけで心は癒される。

青々とした苔
苔の中を進む

1時間ほどのぼると徐々に道も急になってくる。
そんなとき、ピンク色のかわいいお花を見つけた。
初めて見たイワカガミ(コイワカガミ)。たくさん咲いていて急坂でも元気をくれる。

イワカガミ(コイワカガミ)
群生していた

のぼり始めて1時間半、ようやく開けた場所に到着!

この岩を越えると
開けた場所に到着!

この場所は第一展望台の看板の少し手前にある。この岩にのぼってみるとそこには素晴らしい景色が待っていた。

アルプスの山々、御嶽山、ありとあらゆる山が遠くの方まで見渡せた

昨年は真っ白で何も見えなかった景色がそこにはあった。

西天狗岳から赤岳まで一望できる

昨年のぼった赤岳はやっぱり格好よかった。
第一展望台を過ぎると再び樹林帯に入るが、そこからはもうパラダイス!
歩く道も美しく、ひとつひとつの風景に感動して幸せでいっぱいだった。

自然の美しさは眺望だけではない
道そのものが美しい
こんなところにもイワカガミが!

第一展望台から30分ほどでこの切れ落ちた箇所を通過すると第二展望台に到着。

右が切れ落ちた崖
第二展望台

そしてさらに20分気持ちのよい道を進むと、、、

西天狗岳までの岩のぼり

そう、この岩は昨年私が断念した場所。
あの時は真っ白で数メートル先が見えなかった。
この日はまぶしいほどの光が頭上から降り注いでいる。
加えて大好きな岩である。満面の笑みとともに岩をしっかりと掴んでいく。

ふり向けば絶景。

ふり向けば絶景

光に導かれながら前へと進んでいく。

太陽に向かって進む

岩のぼり、意外と長くて20分くらいのぼっただろうか。
途中疲れてもふり向けば絶景なので愉しくて仕方がなかった。
岩のぼりが終わるとすぐてっぺん!ではなくもうちょっと先へと進む。

てっぺんまであとちょっと!

ー 天狗岳てっぺん!

ついに!のぼり始めて2時間45分、西天狗岳てっぺんに到着!!

西天狗岳てっぺん

この時どれだけ清々しい笑みを浮かべていたか!
西天狗岳は東天狗岳より丸みのある開けたてっぺんだ。
こんなにも澄んでいる空があるのか!というくらい遠くの山まで一望できた。

八ヶ岳(赤岳、横岳)
南アルプス(北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳)
中央アルプス
北アルプス(穂高と槍ヶ岳)
御嶽山
前方に蓼科山と後方に後立山連峰

あっていると思うのですが、、、
間違っていたらご指摘ください!
天狗岳は西天狗岳の方がほんの少し標高が高く二等三角点を持っているが、双耳峰なので西天狗岳でたんまりと景色を堪能して東天狗岳へと向かった。
西天狗岳から東天狗岳は目の鼻の先。ちょっとくだってのぼるけれど、10分かかったかなあという程度だ。

西天狗岳から見る東天狗岳
一旦くだってのぼる

東天狗岳てっぺん到着〜!!

東天狗岳てっぺん

東天狗岳のてっぺんの方が西天狗岳より少し狭いかな。
見ての通り岩がゴツゴツあるてっぺん。
でも岩に座れるので、こちらで休憩している人の方が多かったような気がする。
私もここで休憩。
東天狗岳からは奥秩父方面もよく見える。

手前が根石岳、左手に硫黄岳、奥に赤岳、阿弥陀岳、真ん中奥が権現岳かな
浅間山方面
奥秩父時方面
右にちょこんととんがっているの、金峰山の五丈岩じゃないかなあ
何の山かはわからないが水墨画のようで美しい

西と東で見える景色が少し変わり、そのちょっとした変化がまた愉しい。
ずっと見ていたい。
帰りたくない。
そして、てっぺんについてから決めようと思っていたが、根石岳まで足を伸ばすことにした。
これがこのあとの私に大きな負荷となるとはこの時はまだ知らない。

ー 根石岳へ

まずはこの急な岩をおり橋をわたる。

東天狗岳から根石岳へ最初のくだり
橋をわたる

橋をわたると見えた景色がこちら。

緑と青と美しい山々

正直、ここで満足だった。
なぜならばこの先の激くだりが目の前に見えたから。
どうしようかと悩んだが、ここまできたら行ってみよう!と先へと進んだ。
ざれている上に急でくだりはかなり怖かった。
おりて見上げたらちょっと恐ろしい壁。

こりゃ急だわ

稜線の鞍部にある白砂の場所が気になる。
激くだりをおりたのだからもうあとは進むのみ!

根石岳までの綺麗な稜線に歩みは止まらない

そして、白砂の位置までたどり着くと、、、

右手に天狗岳
左手に硫黄岳

確かにこの場所から見る天狗岳と硫黄岳は圧巻だった。
荒々しさと優美さ。八ヶ岳を象徴するような風景が広がっていた。
ふとまたここまででいいか、と思った。
けれどてっぺんハンターの私はやはり最後までいきたい。
根石岳のてっぺんまで向かった。

根石岳てっぺん
根石岳山荘
お風呂があるそうで、お風呂からの景色が格別だとか、、
気になる山荘のひとつ
東天狗岳
西天狗岳

根石岳のてっぺんは狭いので、一通り景色を堪能するとすぐ東天狗岳に向けて出発!

東天狗岳までの道のり
急登になっているのが見てとれる
なかなかきついのぼりかえし
東天狗岳直下

根石岳までの稜線はとてもきれいだった。おすすめされる理由がわかる。
しかし、東天狗岳からはガッツリくだるので「軽くもう一山」というよりは「しっかりもう一山」といった印象。
距離は短いし、行程も短いのだけれど、「濃い」というのが近いかな。
根石岳が通過点ならいいけれど、戻ってのぼり返すのはなかなか大変だった。
東天狗岳では休まず黒百合ヒュッテに向けて進む。

ー 黒百合ヒュッテに向けて下山

中央に見えるのが黒百合ヒュッテ
目と鼻の先に見えるんだけどなあ
中山峠と天狗の奥庭への分岐

そう、この分岐こそ運命のわかれ道。
本来、私はここを中山峠方面に行く予定だった。
しかし、つい前の人につられてすりばち池方面をおりてしまった。
それに気づいたのは「天狗の奥庭上」にたどり着いたときだった。

すごいザレ場をくだる
遠くに見える岩の塊が天狗の奥庭上あたりだと思う

「なんかすごい岩だらけで歩きにくいなあ」と思いながらおり進んだ。
ザレて滑るし急だし、かなり神経を使いながらくだる。
天狗の奥庭上についたとき、稜線に標識らしきものが見え、あれ?とアプリを開くと間違っていることに気がついた。
どちらからでも黒百合ヒュッテにはつくのだが、天狗の奥庭方面はザレて急な斜面とどこまでも続く岩、岩、岩。
ペースはかなり落ち、岩好きの私ももういいわ(ダジャレではなーい!)と思うほどずっと岩くだりだった。

おりてきた岩を見上げる
天狗の奥庭

天狗の奥庭とは何であるのか、調べてみたもののよくわからなかったが、まあ天狗の遊び場でもあったのだろう。ぴょんぴょん跳ねるには愉しそうな岩であることは間違いない。
しかし、かなりしんどい思いまでしていく価値がここにはある。
それがすりばち池だ。
雨量が少ないときは干上がっていることもあるとか?
今回は豊かな水を有した池に出逢うことができた。

すりばち池

自然の恵みの力で生まれた池。いろいろな生き物の恵みとなっているのであろう。岩の合間に見れる池なんて、なんと風流なのだろうか。
しかし、ここからもまだまだ岩くだりは続く。
しばしの癒しの時間だった。
東天狗岳をくだり始めて1時間、ようやく黒百合ヒュッテを真下に捉えることができた。

最後の最後まで岩くだり

岩くだりはかなり時間がかかり、東天狗岳てっぺんから1時間。30分おしでの到着だった。
根石岳にのぼったこともパワーの消費だったので、黒百合ヒュッテをゴールにしたい気持ちだった。
黒百合ヒュッテでは食べたいメニューがあった。
それを愉しみに岩くだりをがんばった。
そのメニューがこちら。

黒百合ヒュッテの名物
ビーフシチュー

黒百合ヒュッテ名物といわれるビーフシチュー。
具がたっぷりで、パンとの相性も抜群!
山でこんなに美味しいシチューが食べられるなんて幸せでしかない。
ゆっくり堪能し、ゆっくりと疲れをとった。

黒百合ヒュッテ

ー ラストスパート

さあ、あともうひと踏ん張り!
勝手にこの先はゆるやかだろうと思っていたが、そんなことはなかった。
沢の道で岩や石の道で天狗の奥庭ほどではないけれどそこそこ気をつかう。

岩なのか石なのかわからないがとにかく大きな石の道

それでも途中木道があったりなだらかなところもあったりと、普通の体力であったらキツくはない道のりだと思う。

ずっと続いてほしい木道
苔が青々しててすごく綺麗
木の根っこ道は滑りやすい

帰りはほとんど人に会わなかった。
黒百合ヒュッテからは比較的道はなだらかだけれど、大きな石が多いので神経を使う上に変な力が入り足の裏が痛くなりやすい。
歩き方の問題かも知れないが、、

黒百合ヒュッテ経由の方が圧倒的にきついけれど、景色の美しさを思うとやはり周回でよかった。

どんなに疲れてもこの景色があればがんばれる

そしてついに!この橋をわたるとゴールは間近だ。

登山道の終わりを告げる橋
橋をわたると唐沢分岐
分岐のあとは砂利のなだらかな林道

黒百合ヒュッテから2時間!
ようやくゴールの唐沢鉱泉に到着。
唐沢鉱泉の前にある源泉が美しい!
今回は駐車場でブヨのお出迎えはなかった。

唐沢鉱泉前の源泉

9年越しのてっぺんは感無量だった。
てっぺん前の第一展望台に着いたとき、すでに涙がでた。
天狗岳は決して困難な山ではない。でも、9年前に見たかった景色をこうして見ることができた事実がとにかく嬉しかった。

ただ山にのぼっているだけで、その景色を見ただけで感動できるって本当にすごい。
山はただそこにあるだけで感動をくれるのだから、改めて山の偉大さ、自然の素晴らしさを感じる山行になった。


距離:9.3km
累積標高(のぼり/くだり):1026m/1028m
タイム:8時間26分(休憩53分含む)





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