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選挙への関心

自民党総裁選の話題がマスコミをにぎわせていますが、新しい総理総裁のもとで衆議院総選挙が控えています。与党自民党の問題の他に野党の政権担当能力などが主な話題になりそうです。そのようななか、東京都知事選で不適切なポスターが掲示された問題を受けて、公職選挙法の改正が話題に上がりました。少子化が進む日本において、40歳未満の若年者の投票率が高齢層に比べて、大幅に下回るといった状態が続いています。少子高齢化社会社会において、高齢者が医療・介護などの高齢化対策に強い関心を持つのに対し、若年者が子育て支援などの少子化対策や教育などに関心があると言われています。投票に行かないはずの若年者も少子化対策などに関心はあるのに政治参加しないのはなぜなのか少しだけ考えていきたいと思います。

投票行動はどう決まるか

選挙において投票に参加するか棄権するかを有権者はどのように判断をしているか。アメリカの政治経済学者アンソニー・ダウンズによると有権者は投票によって得られる利益と参加に伴うコストで決まるとしています。これを数理モデル化したものが「R=P×B+D-C」として表されています。Rは投票で得られる効用、Pは自分の投票が選挙結果に与える影響、Bは自分の支持者が当選した時と他の候補者が当選した時の効用の差、Dは選挙の参加から得られる満足感、Cは投票参加にかかるコストを示しています。この計算式は有権者の主観的変数となっているものの、選挙制度などによっても変わってくる。難しい言葉を使った数理モデルですが、端的に言ってしまえば「投票行動(コスト)に選挙結果は見合っているか」ということだと思います。

なぜ棄権するのか

一般的に投票参加にかかるコストは投票所に行く(機会コスト)と投票先を決める情報収集に関する(情報コスト)に分けることができます。機会コストは投票所に行くコストとしていますが、最近の選挙においては期日前投票が導入されたことにより機会コストを下げる制度が設けられています。期日前投票の投票率は回数を追うごとに延びていますが、その反面、投票所の開設時間や開票作業にかかる費用的負担や人的負担などを考慮し投票所の時間を短くすることができる法改正も行われるといった選挙費用問題も考えられています。期日前投票などの機会コストの他に、政党や候補者の政策を知るための情報コストも投票行動に大きな影響を与えています。

衆議院総選挙意識調査より

若年者を中心に選挙への関心や仕事が棄権理由になっているのに対し、高齢者は体調を理由に棄権していることが多いことがわかる。注目すべきは18~69歳までの層で20%以上が政策や人物の違いがわからず棄権をしているということ。これは各政党や候補者が政策を打ち出す際に違いを示すことができていないということの表れだとも言えます。政権与党の野党化、野党の発信力不足など様々言われていますが、有権者が何を望んでいるのかを把握しそれを政策として打ち出していくことも必要だと思います。

おわりに

今回の公職選挙法見直しで議論される不適切なポスターなどを防止して選挙の品位を保つのはとても重要なことですが、有権者の投票にかかるコストを減少させ、投票行動に繋がるような公職選挙法の改正も考えていかなければならないと考えます。投票所に向かう機会コストを減らすことのできるインターネット投票についても検討されていますが、これは選挙の公平性の確保という最も大事な部分を担保できることが大前提です。既に実証実験なども行われているので今後の運用に期待をしていきたい。そして、公職選挙法改正による選挙制度の見直しから投票行動に繋げるだけではなく、政治家が政策の違いを明確にし有権者にしっかりとした判断材料を示していくことも大事だと考えられます。

おまけ

先日、大洗町の町長選挙が無投票で終わりました。自治体が抱える選挙の問題として、職員のマンパワーと選挙費用が挙げられると思う。その点だけから考えると、首長選挙において対抗馬が出ないということも当該自治体の首長の選挙にかかる費用の削減という実績と考えてもいいのかもしれない。民主主義の根幹たる意思表示がというのはまた別の話ですが…。ところで自民党総裁選では各候補の大きな政策的違いを見出すことができるでしょうか?これから注視していきたいと思います。


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