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東南アジア放浪記~告白~




カンボジア、プノンペンにて。

あの日も特に何も無かった。特に何もなく一日を終えようとしていた頃、偶然みかけた良さげなBARに入ってみた。

BARカウンターに座ると、隣に1人で赤ワインを飲んでいる美しい女性がいた。彼女は正統派な美人で少し近寄り難かったが、俺は勇気を出し、たわいも無い会話を始めた。

彼女は人と違うオーラを纏っていて、不思議な魅力を感じた。酔いが回れば回るほど打ち解けていき、お互いが自分のことを話すようになる。

彼女には産まれたばかりの子供がいるらしい。しかし、彼女を孕ませた男はすぐに行方をくらました。夜分、家を空ける彼女は子供の面倒を見れないため、今は両親に預けているらしい。愛していない男との子。むしろ憎しみすら覚える相手との子だが、子供を愛していない訳では無い。ちらりと見えた携帯の待受画面は子供の写真だし、子供のことを話す彼女の表情は幸せそうだった。


楽しくお酒を飲み、良い時間を過ごした俺達はBARを出て千鳥足で川沿いへ。夜道を散歩する。そよ風が今さっき出会ったばかりの男女の背を撫でる。そして彼女は呟いた。「実は私、娼婦なの」と。

最後まで読んでいただきありがとうございます。 海外を放浪しているので、サポートいただけたら旅の中での活動費に役立てさせていただきます!