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東南アジア放浪記~こだわり~




旅をしていると、自分と同じ旅人に多く出会う。目的も旅のスタイルも人それぞれで見ていて面白い。皆に共通するのは旅が好きだということ。そして自然や人間を心から愛する人が多い気がする。

カンボジアの川沿いを1人歩いていると、白人の男が行き交う車の間をすり抜け、道路を渡りながら、大きな声で俺を呼びかけた。男が旅人なのは一目瞭然だった。同じ旅人を見つけて声をかけてきたのだろう。「写真を撮ってくれないか?」男はそう言うと、俺はスマホを渡された。
何も無い川を背景に男の写真を撮ることになったのだが、この男非常に注文が多い。俺からしたらどこも変わらない川の景色だが、男はあそこが良いと言い出し、写真を撮るスポットまで少し歩いた。俺がカメラを構えるとカメラの向きと的確な距離を伝えられ、男はこう言った。「俺をど真ん中にして撮ってくれ、少しもずらさずに。」そして言われたとおりに数枚撮ったのだが、どの写真も男は仁王立ちをし真顔でカメラに向かって真っ直ぐ立っているだけだ。何も変わらない。撮れた写真を確認してもらうため、男の元へと歩き出すと、もう少し撮ってくれ。そう言って先程と同じ位置に俺は導かれ、男をど真ん中にして、また同じ写真を数枚をとった。男の指示通りに撮っているのだが、なかなかokがおりない。20枚は全く同じ写真を撮っただろうか。ようやく男にとって満足のいく写真が撮れたらしい。俺からしたら一枚目に撮った写真と何も変わらなかった。

男は割と難易度の高い旅をしているようで本物のバックパッカーに見えた。今はアジアを1人で旅していて、来週には日本も訪れるという。
別れ際にインスタを交換し、男の投稿をみてみると、どれも世界各地の景色を背景にして、男がど真ん中に無表情で仁王立ちしている写真ばかりだった。
これがこの男のスタイル。こだわりが強く、癖の強い本物の旅人に出会えて俺は少し嬉しい気持ちになった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。 海外を放浪しているので、サポートいただけたら旅の中での活動費に役立てさせていただきます!