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東南アジア放浪記~ミャオミャオ~




低予算で旅をするバックパッカーの俺にとっていかに節約するのかが鍵である。かといって常に支払いを渋る訳ではなく、価値のある物や体験などには出し惜しみがないが、食には興味がないため、俺は基本ローカルな安い飯を食っている。
観光地にあるような観光客向けのレストランは物価が安い国でも驚くほど高い。俺がよく食べているのはローカルなレストランのチャーハンだ。チャーハンは安くてハズレがない。料理をしない俺にはわからないが、チャーハンを不味く作るのは難しいのだろうか。数え切れない程、各地のチャーハンを食べてきた俺の舌を唸らせたのは、カンボジア、シェムリアップのローカルなレストランで出会ったチャーハンだ。

普段節約のため朝飯は食べず、昼に2食分を食べる。灼熱のような日差しが照りつけていたため、空腹は紛れていたが、何となく立ち止まったローカルなレストラン。店内には猫が縦横無尽に行き交い、猫カフェのようになってしまっている。席に着き、メニューを開くと、俺は2ドルのチャーハンを頼んだ。毎昼チャーハンを食べていても飽きることはない。夜は他のものを食べているし、チャーハンには個性があり、店によって味が全く違う。チャーハンを待つ間、若干、手持ち無沙汰になり、退屈するかと思ったが、ふと足元を見ると黒猫が寝転がっている。隣のテーブルにいた欧米の老夫婦はどこからか持ってきたナッツを床にばら撒き、猫達を勝手に餌付けている。喜びを多く感じてるのは与えられた猫の方ではなく、与えた側の老夫婦のように見えた。70代くらいの夫は、猫言葉を発して猫との会話を試みている。ミャオミャオ。言葉だけならまだいいが、ミャオミャオと発する時の表情も猫に似せているようだった。最大限に可愛げのある表情をしながらミャオミャオと発する夫を見て、妻は真顔でご飯を食べている。チャーハンを待っているほんの数分で、ミャオミャオをどれだけ聞いただろうか。やってきたチャーハンよりも、もうすでに俺の脳はミャオミャオに侵食されている。
チャーハンがやっと来て俺はスプーンでチャーハンを1口。衝撃が走った。思いもよらなかった舌の唸るチャーハン。耳障りなミャオミャオを一瞬で消し去ってしまうほどのチャーハン。一見普通のチャーハンだが、塩気が絶妙で深みのある味だ。漫画ワンピースでもこんなシーンがあった。319話。料理人であるサンジというキャラクターがとある町で絶品のチャーハンに出会い、感銘を受けるシーンを俺は思い出した。厨房にはどんな料理人がいるのかと気にはなったが、覗くことはしなかった。この町には二度と来ないが、この先もこの絶品のチャーハンを思い出すことがあるだろう。

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