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「どうやったらチームの創造性をあげられますか?」

嬉しいことに、いろいろな劇団や劇場にお招きいただき、ハラスメント防止研修をさせていただく機会が増えた。

研修に使える時間・対象者・目的などによって内容をカスタマイズしているので、毎回微妙に(場合によってはかなり)違うのだが、いつも必ずいれている話が「他者に暴言を吐く人が、周囲の人にどれだけのダメージを与えているのか」というもの。

他者に暴言を吐かれ、その瞬間頭が真っ白になったという経験をしている人はいても、それがどのくらい自分や、自分以外の周囲にも影響があるのかは分かってない。そこを具体的に説明することで、座組全体で「これだけ影響があるんだから、やっぱり他者に暴言を吐くようなことは絶対ダメだよね」と腑に落ちやすい。

ある組織で研修をさせていただいた際に、
「暴言を吐く人がチームの創造性にマイナスの影響を与えることは分かりましたが、逆に、どうしたらチームの創造性を増すことができますか?」という質問をいただき、めちゃくちゃよい質問!!と思ったのでnoteに書こうと思った次第。

私は数年前に「コーアクティブ・コーチング」を学んだのだが、コーアクティブ・コーチングの基本理念のひとつに
人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である
というものがある。

足りないところがあるから伸ばしてあげよう、ということではなく、その人自身がそのままで満ち足りた存在であるという大前提があり、でもその人が本来の自分の能力を発揮できていない阻害要因があるとすれば、それは何か、本人が自分自身を探求する旅の伴走者として、あるいは壁打ちの「よき壁」としているためのコーチング技術を学んだ。

(本題からはずれるけど、やはりコーチ自身がこの「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」ということを心から信じられないとコーチングは難しいなと思う。そういう意味で、コーチングを学ぶということは、ある意味、まずは自分自身のことを徹底的に理解するためのトレーニングでもあったと思う。)

で、もともとの質問「どうしたらチームの創造性を増すことができますか?」ということに対しては、そもそもチーム自体は創造性にあふれた人たちの集合体なので、創造性にあふれている(はず)。しかし、それが発揮できていないのだとすれば、それを阻害しているものが何かを考える必要がある。

たとえば
・ハラスメントがある
・他者へのリスペクトがないチームになっている
・誰かのアイデアや発言を鼻で笑うような、馬鹿にするような態度をする人がいる
・上下関係が厳しく、そもそも下の人たちが発言し辛い環境になっている
・高圧的・威圧的にふるまう人がいる
・競争意識が激しく、優越感と劣等感の感情がつねにチームに渦巻いている
・アイデアや、改善案などを出したところで実行されない(そもそも実行する気がないのにアイデアだけを求められる)
・アイデアをパクられる、乗っ取られるからチームに共有したくない
・はっきり言わないのに、不機嫌そうな態度で察させようとする人がいる
などなど

なので、アイデアが出てこないチームになってしまっているのであれば「みんな、やる気を出して、もっとアイデア出してよ!」と無理矢理引っ張り出そうとするのではなく、そもそもあるはずのものが発揮できない理由は何かを考える必要がある。
逆に、その「本当の理由」から目を背けて、いつまでたっても「個人のやる気」の問題にしていては、改善はできないと思った方が良い。

そういう意味での「環境整備」にハラスメント防止研修が役にたつ側面もあるかもしれないし、ハラスメント防止研修という名目で、外部の人が入ってコミュニケーションのルールを一度整理するやりかたもアリだなとも感じる。

穴が開いたコップを一生懸命水で満たそうとして、「底に空いた穴」という根本原因には目を向けず、「穴が開いていても水が満ちる裏ワザ」を必死に探しても、そんなものは残念ながら無い。とはいえ、組織レベルでも、個人レベルでも、簡単に穴が塞げるなら苦労はしないわけで、みんな原因は実は薄々(あるいははっきりと)分かってはいる。
「このコップ、穴が開いてますよ!」と、その事実をまずは認識することからしか始まらないなとも思う。


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