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パワーポジション:柔術初心者が身につけるべきこと

パワーポジションとは、素早い動作を行うための動きやすい構え・姿勢のことです。この姿勢が身につくと、文字通り、力(パワー)を効果的に発揮できます。

初心者が困ること

初心者はガードポジションをとってもほとんど何もできません。なので、スパーリングの最初、たいていトップポジションになります。そして、あっという間にスイープされたり、関節技をかけられたりして、防戦一方になってしまいます。

防戦一方にならないためには、トップポジションでしっかりした姿勢、つまりパワーポジションをとり、相手の自由にさせないことが重要です。パワーポジションを意識できると、青帯の先輩くらいには対処できるようになるはずです。

パワーポジションってどんな感じ?

簡単に言うと腰を落とした前傾姿勢がパワーポジションです。ただし、いくつかのポイントを抑えないと上手く機能しません。もう少し詳しく書くと

  1.  足を肩幅よりも少し広めに開き、つま先と膝の方向を合わせる(ガニ股、内股NG)

  2. 背筋を伸ばしたまま前に上体を傾ける

  3. 少し腰を落とし、膝を曲げ、いわゆるヒップヒンジをつくる。

という感じです。スクワットとかデッドリフトの姿勢ですね。下の動画でパワーポジションの基本を説明しています。ウエイトトレーニングに馴染みがない人は見てみると良いかもしれません。

球技でも格闘技でも、相手に合わせた瞬発的な動きが求められる競技ではパワーポジションを取ることが多い。格闘技ならレスリング、相撲、総合格闘技、球技なら野球、バスケットボール、バレーボール、テニスなどなどです。そしてもちろんブラジリアン柔術でも、パスガードやスタンドでの攻防でパワーポジションが文字通りパワーを発揮します

具体的には

下の写真のように、スパーリングの開始時には、前傾し、かつ、ヒップヒンジがしっかり効き(お尻が上がり)、膝が軽く曲がった姿勢をとります。これがパワーポジションの一例です。相手がガードを取ってきてもこの姿勢を維持できると有利になります

柔術におけるパワーポジションの例

この姿勢ですと、素早く動けますし、相手に押されたり、引かれたりしても、簡単に体勢が崩れません。骨格でこの姿勢を作るので、全身にそれほど力を入れているわけではありません。力んでいると動けませんからね。

このように力んでいるわけではないが、簡単には崩されず、素早く動ける姿勢を身につけるとトップポジションで出来ることが増えていきます

バスケットボールやテニスの指導者に聞くと、大学生や高校生くらいでそれなりの経験がある選手でもパワーポジションが身についていないことがあるそうです。骨格や筋力は、人それぞれなので形だけを真似しても機能しないことがあります。自分自身の内的な感覚が重要なので、少し試行錯誤しながら、相手から押されたり、引かれたりしても動かず、かつ素早く動ける姿勢を探すと良いと思います。

パワーポジションの利点

多くのスポーツでパワーポジションを取るのは、第1にパフォーマンスが向上するからです。これはスポーツ科学で古くから知られていました(例えば、Howorth, 1946)。加えて、無理なく力を発揮できるので怪我を防ぐことにもつながります。自然に動けるので体にも負担がかからないんですね。

ブラジリアン柔術にはレスリングのスタンド姿勢が参考になる

寝技の攻防が長くなる格闘技にレスリングがあります。レスリングでは引き込みがないため、立ち姿勢も重要です。柔道と違って投げ技による一本がないので、寝技での展開を考慮した立ち姿勢が求められます。

中村剛士選手(専修大学出身、全日本大学選手権優勝)による解説が非常にわかりやすいので紹介します。

この姿勢がとれれば、相手に簡単にコンロールされなくなります。習ったテクニックを使うこともできます。そうすると自然に相手に簡単にやられることが減っていきます。スパーリングが楽しくなりますよ。

引用文献

Howorth, B. (1946) Dynamic posture. Journal of  American Medical Association, 131, 1398–1404.

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