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設計事務所で9年働いてみて

組織設計事務所で8年とアトリエ事務所で1年、働いてみて思ったこと、
そこから不動産デベロッパーに転職した理由などを書いてみました。

長く働くことで良い建築はできるのか。

学生の頃は夜遅くまで建築を考え、たまに徹夜する建築家がかっこいいみたいな価値観がありました。
でも、社会に出て働いてみるとそんなことよりも色んなことを知っていることがメリットになることが多々ありました。
例えば、お客さんと話す時に世の中のことを知っていないと会話にもならない。
建築のことでいえば話題になっている建築や美術展に観に行けないほど働いていたら話についていけない。
だから、長く机に座って建築を考えることで本当に良い建築ができるのかと思うよいうになりました。
24時間建築を考えるのは良くても、24時間会社に拘束されるのは良くないと思います。
自由な時間がたくさんあり外に出て色んなものを見たり体験した方が良い建築をつくる種になるのではと思いました。

何歳まで働くのか。

そもそも自分が死ぬ頃の社会では何歳が定年なのだろうか?
今でも65歳定年が普通で定年後も働く人はたくさんいます。
そんな今が2021年で、自分が65歳になる2057年は果たして65歳が定年だろうか?
きっと70歳以上になっていると思います。
そんなことを考えた時に毎日22時まで働くことを70歳まで続けられるのだろうか?と思うようになりました。続けていたらきっと、どこかで体を壊すのだろうと思います。

幸せってなんだろう。

7年目くらいまで仕事を長く、たくさんやることが幸せで充実していました。
でも、最近は業界にも慣れてきて仕事もわかってきてもっと他のことに時間を使いたくなってきて、仕事をすることだけが幸せなのかと疑問に思うようになってきました。
具体的には自由な時間がほしくて、それを資格の勉強だったり、趣味だったりに使いたくなってきました。

設計事務所は儲かるのか。

設計事務所は儲かるのか?と言われれば儲からないです。
儲からないというのは、労働時間に対する給料は低い=時給は安いという感じです。
なぜ、労働時間が長いかかといえば、考えることが多い、検討することが多い、手戻りが多い、それに対して納期がないから、マネジメント能力がないから、などだと思います。
マネジメント能力は自分で改善するとしても、それ以外は納期がたくさんあれば改善できると思いますが納期が伸びても受注額は増えないので時間がないことには変わりがないというどうしようもできない業界なのだと思います。

独立

設計事務所で独立することはマネタイズできるビジネスではないと思います。(特にアトリエ事務所)
独立してまず最初の仕事として考えられるのは住宅の設計だと思います。
住宅を設計してその売上(300万円)をもらい、それを元手に住宅の設計をする。ある程度はその繰り返し。
正直マネタイズできるようなビジネスではないです。
1物件300万円の設計料で設計、監理含めて1年間つきっきりになり、同時に受注しても、たぶん1人で設計するには2物件が限度かなと思います。
それ以上受注を増やすと品質が落ちると思うので、MAX年間の売上が600万円、そこから経費や税金で引かれるので実質手元に残るのはかなり少なくなることがわかります。

西野さんの動画でも言っていますが「絵本の売上で絵本をつくるのは難しい」
まさにアトリエ事務所も同じだと思います。

なので、これからは独立1本ではなく副業で設計を行うパターンが正解なのではと思っています。
本業の仕事で得たお金を元にすれば他の設計事務所よりもお金をかけられ、他と違ったこともでき設計を続けられるかなと思います。

組織とアトリエのマインドの違い

組織系、アトリエ系の両方で働いてみて大きな違いは、図面の書き方施主に対してのマインドの違いでした。

図面の書き方については、アトリエはとにかく細かく書きます。ただ、設計図としての細かく書くのではなく絵として細かく書くという感じです。
植栽を書いたり、車を書いたり、色を塗ったり。
その目的は、ぱっと見それっぽく見せるためだそうです。
なんでそうしているか考えてみるとお施主さんが個人だからなのだと思います。
個人の人は建築を詳しく知っていないのでそれっぽいものが出てこれば信用してしまうのかなと思います。
ただ、そういう営業の仕方もアトリエ事務所では大事なのかなと思いました。
それに比べて組織事務所は建築的に重要なところ重要ではないところを取捨選択して、書くところは書く、書かないところは書かないという図面の書き方です。
このやり方になっているのは、今現在、設計のどのフェーズにいるのかというのを考えて無駄なことはせずに仕事を多くこなし利益を出すことに重きを置いているからだと思います。
自分は新卒で組織系に入ったのでこの考え方がベースにあったのでアトリエのやり方は最初は違和感がありました。

マインドの違いでは、お施主さんが個人、法人というところで違うのかなと思います。
アトリエは個人のお客さんが多いので自分(設計事務所)を信用してもらわないといけないので多少不安なこと、わからないことがあっても、はったりかませたりします。
だから、アトリエ事務所の先生は口がうまい印象があるのかもしれません。
組織系は法人相手が多いので簡単にはったりはかませません。バレますし、後々問題になります。
だから、組織系はの設計者は大人しい印象があるのかなと思います。

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