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等級・評価・報酬がシンプルに構造化されたものを、リクルートの具体例に照らし合わせてみる

坪谷邦生さんが書かれた図解 人材マネジメント入門という書籍を読みました。人材マネジメントの機能をわかりやすく説明されていて、特に等級・評価・報酬の構造に対する理解が深まったので、このnoteで書いてみることにしました。

人材マネジメントの6つの要素

まず前提として、この本では人材マネジメントの要素・ファンクションを、以下の6つに分類しています。(これは、人事測定研究所編「トータル人事システムハンドブック」の内容をモデル化し、著者が編集したものだそうです)

  • 人事評価

  • 報酬

  • 等級

  • リソースフロー(採用+異動+代謝)

  • 人材開発

  • 組織開発

この構造は自分的にとても面白かったです。これまでは、「採用→配置→評価+報酬+等級→育成→代謝」とフロー的な構造で整理していたのですが、これは有機的・相互作用的に捉えられるので、また違った切り口で見れるなと思いました。

この構造の中で、等級・評価・報酬について書いていきます。

1.等級について

等級の定義

等級とは、「人を何かの基準によってランキングするもの」と定義されています。

また本書では、等級こそが人材マネジメントの骨格であり、採用要件、人事評価の基準、賃金などの外的報酬の水準は、等級という骨格の上に組み立てられている。と述べられています。

等級の種類

等級の種類は、大きく「人基準」と「仕事基準」の2つに分けられます。

  • 人基準

    • 年功

    • 職能資格

  • 仕事基準

    • 職務

    • 役割

「ミッション(≒役割)
リクルート社では、その半期のミッションによって等級が決定されます。役割等級に近い形ですが、変動は大きく、ミッションによって上がりも下がりもします。基本的に積み上がることはありません。

自分がリクルートキャリアに所属していたのは2018年まででしたが、社内ではミッション・グレード制という名称で等級が定められていました。M1, M2, M3,,,のように決まっていて、それに応じて基本給が上がります(M12とかが上限だったかな・・)。半期に1回の査定会議のタイミングで昇格するかが決まります。

ここからは自分の感覚値になりますが、がっつりドライに役割等級というよりも職能資格の色合いを含んでいたように感じます。等級の昇格は、成果をもとに能力を評価していたのではないかなと想像できるのと、グレードが下がった人というもあまり聞いたことがありませんでした。
というか、人事制度はその会社独自の最適解を策定すればよいので、「役割なのか?職能なのか?」という問い自体がそもそも筋わろしなのかもしれません。

2.評価について

評価の目的

給与や仕事のアサイン・勤務地などの処遇を完全に同じにすることは不可能で、処遇には必ず格差があり、それを決めるための根拠が評価結果とされています。

人事評価の目的は大きく3つと述べられています。

  • 公平感ある処遇の分配

    • 宝の山分けのこと。賃金だけでなく、仕事のアサインや勤務地、福利厚生、椅子の大きさまで

  • 社員の活用と育成

    • 賃金額を決めて伝えるだけの評価は最悪。 「お上からのお達し」となり労使間の感情的対立を煽る結果となる。 どうすれば活躍できるか、これからどう成長すべきかを検討し、異動・配置・アサインを含めて援助を考える。

  • 企業文化の醸成

    • 人事評価のフィードバックの積み重ねが企業文化を作っていく。 「何を評価するか」は企業の重視する価値を直接的に表したものであるから。

評価の種類

人事評価の対象、つまり「何を評価するか」は大きく3つに分けられます。

  • 1.仕事の結果

    • 業績、成果とも呼ばれる。売上や利益などの業績数字、作り上げた製品などはもちろん、業務改善や遂行もあたる 日本で多く使われているMBOもそれに該当する。

  • 2.行動

    • 行動評価、能力評価、情意評価、コンピテンシー評価などの手法がある

  • 3.個人的特性

    • 知識、スキル、基礎能力、性格特性などを指す。 適性検査やアセスメント、資格試験、技能テストなどの手法を使って把握することになる。

「Will Can Must」
リクルート社では、一人ひとりの主体的な思いを目標に結びつける「Will Can Must」によって人事評価を行っています。本人が実現したいこと(Will)、活かしたい強みや克服したい課題(Can)、能力開発につながるミッション(Must)からなる「WCM(目標管理)シート」を半年に一度記入して、上長とすり合わせることで目標となります。この目標の達成度によって賞与額が決定します。

このWCM(≒MBO)で書いた目標の達成度によってS評価、A評価、B評価のように評価され、それに応じて賞与が決まっていました。前述の等級昇格は、おそらく行動(能力)を評価されていたのかなと想像しています。

この通りひとくちに「評価」といっても、このように構造化されると理解が進まりました。成果も行動も個人的特性もいずれも見るし、それの反映先が違うだけだと。これも等級パートで記載したのと似ていますが、「ウチは成果評価なのか?能力評価なのか?」という問いも筋わろしということだと思います。全部見たらよくって、そのウェイトを会社や組織の最適解にしたらよいと理解しました。

3.報酬について

報酬の定義

本書には、報酬を「外的報酬」と「内的報酬」に分けていますが、このnoteでは「外的報酬」に閉じて書いていきます。

働くことで外(企業)から与えられるものを「外的報酬」と呼びます。賃金だけでなく昇進・椅子・福利厚生なども含まれます。

外的報酬が足りないとき人は不満を持つが、過剰に与えられてもモチベーションは上がらない。そして企業が分配できる原資には限りがある。つまり外的報酬は「満足ではなく納得」を目指すべきものであるといえます。

賃金の種類

報酬のなかでも賃金は最も重要な外的報酬です。
賃金は、以下の3つで構成されています。

  • 基本給

  • 手当

  • 賞与

基本給の種類

基本給とは「賃金」のベースになるものです。日本企業では、年功給・職務給・職能給とその対価を複合的に組み合わせて運用しています。

リクルート社では、任されるミッションの高さによってグレード(等級)および月給が決定します。そして、個人及び組織の半期ごとの目標達成度(成果)によって賞与が決定します。

つまり、基本給はグレード(ミッション)の高さで決まり、賞与は成果(WCMの達成や組織成果)によって決まるというバランスを取っていると理解しました。

さいごに

HRの仕事をするようになってからだいぶ理解が進んだと思っていましたが、等級・評価・報酬をこのように構造化してみるとより解像度が上がりました。また、あらためてリクルートを含めて長く生き残っている会社というのは、本当に人事制度しっかり設計してるなーと毎回思います。長い期間積み重ねたアセット・資産だなと感じます。

また、この書籍は簡易的でかつ構造的に書かれているので本当におすすめです。2月に組織開発編も出るらしいのでこれも読んでみようと思います。(僕にインセンティブは一切入りませんので他意なきレコメンドです笑)


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