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世界の潮流?NY市で屋内活動にワクチン証明書の提示が必要に。 週刊インバウンドニュースマガジン8月2週号

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1:ニューヨーク市、レストラン利用等にワクチン証明が必須に。世界の潮流は?

日本で同様の方針は実施可能でしょうか?

アメリカ・ニューヨーク市では、飲食などの屋内活動を行う際にワクチン接種証明書の提示を義務つけることを発表しました。

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ニューヨークのデブラシオ市長は、今回の決定をワクチン接種率の向上や経済回復のため、と述べています。

他国に比べ接種が進んでいるイメージのアメリカですが、実は接種率が59%を超えたあたりから、接種スピードが穏やかになっています(上図)。

そのような現状を踏まえた危機感から、このような施策決定に至ったのでしょう。

実際、アメリカ企業の間では、社員のワクチン接種を義務化する動きが進んでいます。

背景にはデルタ株の感染拡大があります。また、オフィスへの出社を再開させたい企業の場合、接種を義務化することでオフィス勤務の安全したいとも考えているようです。

日本の場合、国家によるワクチン接種の強制はもちろん、企業によるワクチン接種の義務化もなかなか難しそうです。

反対に、ワクチンの非接種強制も認められません。7月21日の記者会見で、加藤官房長官は「接種するよう、または、接種しないよう強制すること、接種の有無により不当な差別的扱いを行うことは適切ではない」と述べています。

個別事例への言及は避けられましたが、こちらはタマホームに関する各種報道を念頭においているようです。

アメリカ以外では、フランスなどヨーロッパでも飲食店利用について、ワクチン証明書の提示が義務付けられる動きが拡大しています。

ただし、当然市民からの反発は強く、大規模なデモが発生しています。日本で同じような規制を敷けば、規模や形式の差こそあれ、同様の反発が起きるのではないでしょうか?

日本では海外のような強制性のある施策実施は難しいでしょう。強制まで行かない、ワクチン接種者への優遇措置であっても、差別性の観点から批判は多く集まりそうです。

日本国内だけではのことを考えれば、それでも問題ないかもしれません。しかしインバウンド業界は顧客が海外におり、競合も世界中の国々になります。

今後「コロナを抑え込めている国」が国際観光の復活需要の多くを獲得すると推察しています。その中で、世界の基準とずれた考え・施策を実施していれば、少なくともインバウンド業界の復活はさらに遅れることになるでしょう。

2:宿泊・観光施設は必見。コロナ後に備える、インバウンド対応支援の各種事業が観光庁より公募

観光庁から発表された事業を3つご紹介します。

1.宿泊施設のインバウンド対応支援事業(ストレスフリー、バリアフリー)

7月30日と、1週間以上前に発表された公募ではありますが、有益だと考えご紹介いたします。

本事業では、その名の通り、宿泊施設が行うべきインバウンド対応整備に関して、金銭的な支援を受けられます。対象となるのは、5以上の宿泊事業者により構成される宿泊事業者等団体です。

対象となる経費は無線LANの整備、洋式便所の整備、クレジットカード等端末の整備などなど(詳細は後述)。

なお、補助金はストレスフリーとバリアフリーの2つに別れており、後者は手すりやスロープの設置などの経費に対して補助がなされます。

来るインバウンド回復に向けて、海外旅行者に選ばれ、訪れたお客を満足させられる設備を整備しましょう。

■ストレスフリー補助金概要
対象:宿泊事業者団体
補助上限:150万円
補助率:3分の1
公募期間:令和3年7月30日(金)~9月10日(金)
ポータルサイト:https://shukuhaku-inbound.com/stress-free
公募要領こちら
対象


・館内共用部の無料公衆無線LAN環境の整備
・館内共用部の洋式便器の整備
・自社サイトの多言語化(宿泊予約の機能を有するサイトに限る。)
・館内共用部の国際放送設備の整備
・館内共用部の案内表示の多言語化
・オペレーターによる24時間対応可能な翻訳システムの導入又は業務効率化のためのタブレット端末の整備
・クレジットカード等決済端末の整備
・ムスリムの受入のためのマニュアルの作成
・一の客室における無料公衆無線LAN環境、洋式便器及び多言語対応を図るための整備の完備
・サーモグラフィ又は非接触型体温計の導入
・非接触型チェックインシステムやキーレスシステムの導入
・混雑状況の「見える化」
・その他宿泊施設の稼働率及び訪日外国人の宿泊者数を向上させるために必要であると大臣が認めた事業(宿泊事業者等団体の運営費、構成員宿泊事業者又は特定宿泊事業者の人件費など経常的経費は補助対象外)

■バリアフリー補助金概要
対象:宿泊事業者団体
補助上限:500万円
補助率:2分の1
公募期間:令和3年7月30日(金)~9月10日(金)
ポータルサイト:https://shukuhaku-inbound.com/barrier-free
公募要領こちら
対象

・手すりの設置
・スロープ(傾斜路)の設置
・出入口の拡幅
・開き戸から引き戸へ改修
・聴覚障害者・視覚障害者用案内信号装置の設置
・車椅子使用者が利用やすい洗面台の設置
・着脱・高さ調整可能な車いす対応
・ハンガーラックの設置
・段差解消
・バリアフリールームへの改修


2.既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業 災害時避難者受入施設支援事業 (計画公募)

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本事業は既存観光拠点再生・高付加価値化推進事業の一環として、宿泊施設が災害対策環境を整備する際、その活動を費用面から支援することを目的としています。

なお、対象となる宿泊施設は、自治体と災害協定を結んでいることが条件となります。

また宿泊施設が非常時に避難先となり、近隣住民等の受け入れを行えるようになることが目的であるため、実施にはそれなりの責任や義務も付随することをご認識ください。
さらに要注意なのが、今回の公募は補助金交付の申請ではなく、その前段階の事業の計画を採択するためのものである点です。

9月3日までの間に、事業者は整備計画を事務局に提出。計画が採択された事業者のみ、計画や補助対象事業をより具体化させた上で、交付申請を行う流れになります。

■概要
対象施設:地方公共団体と災害協定を締結している宿泊事業者(詳細条件は要項をご覧ください)
採択予定件数:各都道府県 3施設まで
補助率:2分の1
補助上限額:1施設あたり2,000万円
公募期間:令和3年8月6日(金)~令和3年9月3日(金)
申請フォーム:https://kizonkanko.net/6/
公募要領:http://kizonkanko.net/6/pdf/KB_SG_0802.pdf
対象整備


・災害対策環境の整備に伴う施設改修
  ・客室における改修(客室出入口、トイレ、浴室、洗面所 等)
  ・共用部における改等(敷地内通路、階段、廊下、屋内通路 等)
・消防用設備及び災害対策環境の整備に伴う設備の購入等
  ・消防用設備の補強等(スプリンクラー設備等の耐震補強等)
  ・自家発電装置等の購入等


3.<追加募集>令和3年度 観光振興事業(観光地の「まちあるき」の満足度向上整備支援事業・「道の駅」インバウンド対応拠点化整備事業)

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こちらは3月26日に公募が開始された「観光地の「まちあるき」の満足度向上整備支援事業・「道の駅」インバウンド対応拠点化整備事業」の追加公募です。

駅や道の駅など、観光客が集まりやすいスポットの受け入れ整備に対して、支援が行われる事業です。

応募受付期間:令和3年8月2日(月)~10月29日(金)17時必着
整備計画作成主体:市区町村、都道府県、観光地域づくり法人(DMO)
補助対象事業者:地方公共団体、民間事業者及び協議会等
補助率:1分の1
支援スキーム:https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001339065.pdf
申請方法:まち歩きはこちら、道の駅はこちら
補助対象経費


・多言語観光案内標識の一体的整備
・観光スポットの掲示物等の多言語化整備
・無料公衆無線LAN環境の面的整備
・ワーケーション環境の整備
・飲食店、小売店等も含めた地域における多言語対応、先進的決済環境の整備
・公衆トイレの洋式便器の整備及び清潔等機能向上
・観光スポットの段差の解消
・ICT を活用したゴミ箱の整備
・混雑状況の「見える化」と推奨ルートの表示
・デジタルサイネージを活用した災害情報発信機能の強化
・外国人観光案内所の整備・改良 ※JNTO外国人観光案内所の認定取得が必要
・観光拠点情報・交流施設の整備・改良
・手ぶら観光カウンターの機能向上

このメールマガジンでは繰り返しお伝えしていますが、旅行者が来れない今こそ、受け入れ対応整備を行うタイミングです。ぜひご活用ください。

3:JATA会長にワールド航空サービス菊間氏が就任。旅行回復の指針提示を政府に求める

JATA(日本旅行業協会)の新会長に、ワールド航空サービス代表取締役会長の菊間潤吾氏が就任することになりました。

菊間氏は会見にて、旅行業界の経営が危機的状況にあること、ワクチン接種の推進に期待していることを言及。

ワクチン接種完了者に対しては行動制限を段階的に解除していくなど、国際的潮流に日本が取り残されないような判断を、政府に働きかけていく考えを示しました。

その他、行動制限解除のための国としてのロードマップや指針を明らかにするよう、政府に対して要望している旨発言しています。

ただし、世界各国でデルタ株の感染が広がり、その危険性についても議論が続いている現状では、渡航制限解除の指針を示すことについてすら、国内では批判が集まりそうです。

私たち旅行業界の人間は、世界と日本の認識のズレ、業界の人間とそれ以外の方との認識のズレを意識し、そのようなズレを埋めていく努力が必要であると考えます。

4:あとがき


先日閉会を迎えたオリンピックは、日本の中に様々な溝が存在することを明らかにしました。

関係者の発言や行いに関する批判をきっかけに、「こういう行動はおかしいんだな」「このような行動を行う人が本当にいるんだ」と気づきを得られた方が多いのではないでしょうか?

今回は「世界と日本の認識の差」「日本人の間にある認識の差」について言及しました。

さて、オリンピックを見て世界の人々は、日本についてどう感じたのでしょうか? 「日本は同じ価値観を共有できる国だな」と思ってくれたのでしょうか? それとも「日本は自分たちとは(悪い意味で)違う国なんだな」と思ったのでしょうか?

おそらくその答え合わせは、これから行われるのでしょう。コロナが落ち着き、旅行者が再び日本を訪れるようになったら、ぜひ今回のオリンピックの感想を彼らに聞いてみたいと思います。※オリンピックの記憶が薄れる前に戻ってきていただきたいですね。

ギャップや認識の差を埋めるためには、両者の間をつなぐ媒介者が必要です。海外とローカル、2つの異なる層と触れ合う旅行業界こそ、そのような媒介者にふさわしいのではないかと私は考えています。

インバウンドという業界が、日本の窓、地域の窓として、他の世界の風を吹き入れる存在になれるよう、みなさんとともにこれからも取り組んでいきたいです。

今週もお読みいただきありがとうございました。

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