夢の話

私がかつて住んでいたマンションの夢をよく見るのです。

そのマンションは愛媛県松山市の町はずれの、山の辺りにありました。

私のマンションの外観は灰色の煉瓦柄で、泥汚れで薄く茶色になっていました。

コンクリートを敷いただけの小さな自転車置き場があり、原付や自転車がバラバラと押し込まれていました。

向かいには田んぼがあって、腐った野菜が堆肥として投げ込まれていました。


枯れかけた生垣の横を抜けると共用玄関に出ます。狭く、屋根は雨防止のためか汚いトタンに覆われていて、薄暗いのです。空気は糠のような臭いがしてそれが染み付いたようにコンクリートの色も濁っていました。

ドアを開けるとキッチンでした。キッチンに入ると排水が上手くいっていないため、僅かな下水の悪臭が漂っています。キッチンに電気は無いため、シンクの上の照明をつけます。それでも明るさは全く足りず、方々が暗いままでした。シンクは酸化しきって灰色で、野菜屑や油汚れが散らばっていて、更に埃が覆いかぶさっています。廊下はギシギシとなる黒い木ですが、砂があるのかジャリジャリとした感触が足の裏に感じます。

右手にはユニットバスがあります。開けるとカビて赤くなった壁とバスタブが目に入ります。便器は黒く薄汚れていて、水は澱んでいるのが分かります。カーテンは半ば外れて壁に癒着しています。

キッチンの突き当たりにはリビングがありました。暗い部屋で照明をつけても、昼でも、薄暗いのです。左端には服が乱雑に積み上げられ、黒いちゃぶ台とベッドと布団がありました。

ちゃぶ台の天板はシミだらけで埃まみれで、テレビモニターが置かれていました。他に置くところはなかったのです。

積み上げられた服も、座椅子も、布団も、全てがカビ臭くなっていました。クローゼットはほぼ空で開け放たれ、闇を一掃広げています。

私はここで菜や麦味噌をグチャグチャと食べて暮らしていたのです。

空気は澱み、悪臭が人間の脂の臭いと混じって漂っています。タバコの灰皿から立ち上る煙ですら清潔に見えるほどでした。さらに湿気ていてジメジメとしていて、まるで風通しが悪いのです。死体が新陳代謝をせずに腐って行くように、この家の機能が死んでいるからです。

私はリビングの真ん中に座って鍋から汚い不味い何か酸っぱい野菜を食べて居ましたが、急に憎しみが湧いてきました。

何故私はこんな暗いところにいるのだ。

何故私は

ああ臭い臭い

涙が止まらない。

だが飢えては食べなければならない。

ああ憎い。

安穏と清潔な、そうで無くとも落ち着く温かみのある部屋から私を除いている奴らが。


ああ憎い。

許せない。

お前達を覗いてやろうか

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