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【書籍紹介】表現活動で”人間らしさ”を取り戻す。『労働者のための漫画の描き方教室』

労働者のための漫画の描き方教室

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漫画家になるために漫画を描くのではなく、労働者であるあなたが、昨日とは違う思考を得るために、明日の新たなあなたと出会うために、あなたは漫画を描き続けるべきである。
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労働はつらい。
生活のための手段でしかないはずなのに、それが生活を蝕む状況がお正月。
(もちろん、自分が望んで仕事に時間を割くのを否定するつもりはありませんが)
労働組合への申し立てや、次の職探しなど
環境改善には、たいへんな時間とエネルギーがいります。

袋小路な「労働つらい」という状況、負の感情をどうにかしたい…

作者の川崎さんが思いついたのは、「漫画をかく」ことでした。

なぜ「労働つらい=人生しんどい」のでしょう?
それは、労働者としての自分の側面にほぼ100%の時間を割いているため、
「自分には仕事しかない」と信じ込んでしまうから。

「表現者」としての自分をもつと
労働の辛さを表現に昇華させることができます。
表現者としての視点で、労働を捉えられるようになります。
そうやってなんとか、辛い労働を乗りこえてゆけるはず…

本書において「漫画」とは、労働を生き抜くための手段として定義されます。
あらゆる自己啓発本の謳うように、「漫画を書けばすべてうまくいく!」ことはありません。
むしろ、漫画を描き続けるには思考力がいるため、ぜんぜん楽じゃない。

でも、自分の喜びのためにおこなう表現活動は、生きるための必須条件。
労働が辛い分、表現への渇望やその喜びは大きくなるのでは…。

いまあるポピュラー音楽の源流はブルースやレゲエとかの労働歌だし
スペインのフラメンコや大正日本のプロレタリア文学など、迫害からうまれた文化は数多あります。
(だからといって、強制する側の存在や、つらい労働を手放しに美化するつもりはないけれど。)

辛い状況の中で、表現活動に救済を求めてきた人々の歴史がある。
そのうえで、わたしたちは「文化」を享受している・・・

飽食の時代にそんなことを思い出させてくれるほど、
川崎さんの個人的な経験に基づいた
「漫画=つらい労働者人生からの脱脚」という哲学には力を感じます。

私自身、学生時代には1ミリも続かなかった日記を
多忙な社会人時代には必死に書いていたなぁと深く頷きながら読みました。

<目次>
序章 本書の意義と本書における漫画の意味
第1章 漫画を描く動機
第2章 漫画を描く目的
第3章 漫画と言葉
第4章 漫画と編集
第5章 漫画を描くための基礎技術
第6章 漫画を描くための応用技術
第7章 漫画を素早く描くための諸技術
第8章 漫画を発表する
第9章 漫画を継続する


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