イカキングは無駄遣いか?
イカキングをご存知だろうか?
2021年3月、石川県能登町のイカの駅つくモールに設置されたモニュメントである。
建設費に約3000万円かかっており、そのうちの2500万円をコロナ禍の地方創生臨時交付金で賄ったというものだ。
町の担当者によると、コロナ後の産業振興の起爆剤に出来ないかということらしい。
ところがコロナ禍の臨時交付金をイカのモニュメントに注ぎ込むのは無駄遣いだという意見が噴出した。地域医療に使うべきでは?等ごもっともな意見が並ぶが、産業振興に使うことを国は禁じていない。
カニの爪
ところで、北海道の紋別市にカニの爪のオブジェがあるのをご存知か?
もちろん名産のカニのPRの為のオブジェだが、1番太いはさみの爪が天に向かって伸びているだけだ。
いつしか旅人は北の大地にカニの爪を目指す様になった。
カニの爪と自撮りをする旅人が後を絶たないほどである。インスタでカニの爪と検索すると画面がこのオブジェで埋め尽くされる。
カニの爪には旬が関係なく、カニの獲れない時期でもカニを発信するし、夜でも星と戯れるし、雪に埋もれても白の中の赤が人を呼び寄せる。
オブジェやモニュメントは時に地域の目玉になるようだ。そしてそれはSNSとの相性が非常に良く、まさに広告塔として力を発揮する。
例えばあなたの街が、テレビで取り上げられるとして、〇〇市にやってきましたという時に画面に映されるものはなにがあるか考えてほしい。
他にも山形県米沢市にはニワトリが、滋賀県甲賀市にはたぬきが待っている。山口市にはキツネもいたな。
オブジェ建築
僕の学んできた中では少なくとも、建築はオブジェにしてはいけないという謎理論が蔓延っていると思う。
例えば、ハート型の建物をそのまま建てると面白くない、下品だとされるらしい。ビビッドなピンクの外壁でリボンでもつけてあげようか。なんなら窓もハート型の両開きで、内装はクロスをピンクのストライプで統一して、白いドアをつけてあげよう。
でもこれはダメらしい。
形ありきの建築は、建築を学んだモノに嫌われる。
形をモチーフにするなら、イメージをこねくりまわして建物が悪目立ちしないように配慮して、どこまでもその形をインスパイアした形状にしなければならない。
出来上がったハートの建築は、概念はハートなんですとか、ハートの成分をこうするとこうなりましたとか、そういうものが出来上がる。
だから相応にして、建築家の建築が建ったとき、〇〇をイメージしたというのが、形でないこともあるので、外観だけを見てふーんよくわかんないや。みたいなことが起こる。
まあ確かに、町並みがハンバーガーの形のバーガー屋やスーツの形した紳士服店だらけになってしまったら日本列島総テーマパーク化になるのは間違いないだろう。
ところが最近オブジェ的な建築が出てきた。
長崎県諫早市のいくつかのバス停の待合所を、フルーツそのものにしてみたのだ。
みかん、いちご、メロン、スイカ…
田舎のバス路線が脚光を浴びた。
バス停そのものが観光地となった。
バス停はまだ小さいから…と思っていたら、なんと静岡県浜松市の春華堂本社はでかい家具になった。
ゆるキャラから学んだもの
イカに話を戻そう。
多分、イカキングは成功する。海外メディアにまで取り上げられて、能登町のことを世界の人が認識した。
そもそもモニュメントとしても、イカの足を巻きつけらるポイントがあったり、口の中に入れるので、巨大イカに食べられてみたり。アトラクションとして申し分ないように感じる。これは写真撮りたくなる。
変にデフォルメしてアートチックにしなかったのも良かったかも知れない。アトラクションに全振りしたことで誰にでもわかるデザインになっている。誰もがイカとして認識できる。誰にでも直感的にわかるデザインはユニバーサルデザインだ。
ただちょっと恐いのは、かつてゆるキャラがそうだった様に、後追いするモノが多すぎると効果がブレる。
イカキングの場合はもう突き抜けて世間に広まったので逃げ切ることができるだろう。早めにやったもん勝ちだ。30番煎じくらいまでなら効果ありそうだ。
後追いする自治体、民間は気をつけるべきだろう。
結局のところ今回の騒動で僕の個人的見解としては、能登町でイカキングと写真撮って、新鮮なイカ食いたいとなったわけである。
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