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しょんぴん版 THE短編集

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短編
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2014年12月の記事一覧

イトー君

イトー君

[2453文字] #小説 #短編

ぃと・・・
伊藤君?
伊藤君かな…?

ぁのォ~ っちょっと失礼しま・・
ぉぉおお~っ! 伊藤君じゃないか!!
やっぱ伊藤君だ!
そうだと思ったんだよ
こんな所で会うとはなぁ!
元気にしてたのか?
見た感じあんまり変わったように見えないが
・・ずいぶん苦労もしたみたいだなぁ
でもまぁまぁ元気そうで良かった!
ぁそうだ時間あるかい?
立ち話もなんだから
ちょっ

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巣立ち

巣立ち

[3681文字] #短編 #小説

まだ免許を取れない中学の頃から母親に、
「あんた、オートバイだけは乗りたいって言わないねぇ」
と先手を打たれ、 まだションベン臭かった僕はまんまと、
「あんなものには興味ネェよ」
と言わざるを得なくなっていた。しかし当時当然ながらバイクに興味のない高校1年生などこの世に居る筈もなく、僕は十六才の誕生日を迎えた途端、そういった行きがかり上仕方なくこっそりと

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羽化

羽化

[2157文字] #短編 #小説

_田舎の片隅にある男が住んでいた。
_世間では中年と言われる年齢に達しているが、男は一度も結婚をしたことがない。今も小さな家に一人で暮らしている。家は小さい。街から山をいくつも超えた田舎町の、そのまた村外れにひっそり建つ家である、庭だけは都会にはあり得ない広大さがある。しかし敷地の境などははっきりしない。おそらくここが境であろうと思われるあたりは雑草に覆われ、男

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ポスト

ポスト

[2940文字] #短編 #小説

_鉄製の扉の中腹にあるポストに今日も何かが投函された。鉄扉独特の金属的な響きでガタン!と音がする。その度に男は神経質に身を強ばらせる。投函者の足音が遠ざかるまで、なぜか息を殺しジッとしているのが癖になっている。一人暮らしの安アパートは狭く、部屋のどこに居てもその音は聞こえる。テレビを観ていようが、トイレに立っていても、風呂に入っていようが、ガタン!が聞こえると男

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