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ディレクター目線による,怒髪天のNEWアルバム「more-AA-janaica」について


怒髪天のNEWアルバムが発売される。毎作品、毎ライブごとに、怒髪天は最高だと思っているけれども、今回の怒髪天も最高の作品を作り上げた。

なんというか、怒髪天の凄さってもう音楽という尺度だけでは収まり切れないというレベルに到達していると思っていて。怒髪天が存在していることの凄みというか楽しさというか面白さというか、、、。

その視点で、一旦音楽より先にお知らせしたいトピックが初回盤のみに付属する写真集「DA・SO・KU」。アー写を見て驚いて(笑って)くれた人も沢山いると思いますが、そんな写真がびっしり詰め込まれている写真集です。ここまでフルスイングで50代のおじさんたちが躊躇なくやりきってる姿は、今の疲れ切った日本に元気を与えてくれると思う。且つ、とにかくふざけてるのにデザイナー木村さんをはじめ、カメラマンの新保さんたちも含めてプロが本気でやってるからクオリティーがハンパないです。(かけた予算もハンパない!)

当日の撮影スタジオではずっと大笑いしながらやってた記憶がある。

元々4人の人間力がものすごく、それが1枚1枚の写真に滲み出ているので、ぜひ購入は写真集付きをおすすめします!(もちろんCDのデザインも木村さんが最高の作品にしてくれているので、通常盤でも!初回盤も通常盤もCDの内容は一緒です。)

そして本題。今作の楽曲は本当にとんでもない。ためらう事なくぶっ飛んでいる。リード曲「令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~」はクレイジーキャッツや昭和時代を彷彿とさせる曲なんだけど、歌詞の「今のクソみたいな世界」への仕留め方が痛快だし、楽曲の行ったり来たりの展開は制作の時に「この曲、グランジですね」と友康さんと話をしてた。溜めて溜めてドカーンと爆発するという展開はグランジだし、陰と陽の振り幅はもうどうかしている。ミクスチャーとでも言ったらいいのかな、、、。

「OUT老GUYS」こちらもやりまくっている。増子さんの最近のリアルな体験が歌詞に盛り込まれたり(例の深夜のスーパーのくだりはデモの時点ではなくて、制作の時に起こった事件なので途中で歌詞が変わった)、中年の人たちが聴いてくれたらやる気出ると思う。

個人的に、若者に向かって

「いつも平熱ゴクロウサン」

ってめっちゃかっこよく歌っているこのフレーズがめっちゃグッときました。もしかするとこの歌を聴いて若者が何か気づいてくれると良いなとか思ったりもするけれども。

曲も友康さんがやりたいよーにやってる。ふざけてるんだけど真剣にふざけてるから最高にクール。メタル曲なのに、途中でいきなりサンバが入ってくるという展開も意味が分からないけど、めっちゃかっこいい。坂さんがこの部分にめちゃくちゃリズム楽器をダビングして、さらに謎の高揚感を生み出してくれてます。

この2曲で今作がいかにぶっ飛んでるのかという事が伝わりつつ、この後の曲も濃厚なラインナップが続きます。全曲を書き出すと毎度長くなり過ぎるので、ちょこっとだけ。

「ジャナイWORLD」についてはこのアルバムの中で最も2枚目の顔をしている楽曲。ファンキーな曲でありつつ、今までの2曲のに通じるムードがより現実的に歌われている。いかに今の世の中が終わってるのかがあまり救いのない形で綴られているので、聴いていてヒリヒリするけれども、そこは怒髪天というバンドの包容力というか、結局は「それでも頑張ろう!」と思える気持ちなれる。僕は自分でこのバンドを担当していて、怒髪天のもっているこの感じこそが一番大切な気がしている。

増子さんが心の中に抱えてる不満やイライラみたいなものって計り知れないし、それってもしかするとこの2023年を頑張って生きている人には共通していることなんだろうなと思ったりもする。真面目に考え過ぎると、もうドツボにはまってしまうような世界。

でも怒髪天って結局、明るいのだ。常にメンバーは明るいし楽しそうにしている。メンバー間には常に信頼感とユーモアが溢れかえっている。このくそみたいな世界をなんとかしてくれるのはまさにこのパワーなんじゃないかって。触れる物みな楽しくしちゃう、みたいな。

個人的な話をさせていただくと、数年前父が他界して、あまり心の整理もつかないまま数日後初めてのライブ現場だったのが怒髪天の京都磔磔だった。皆さんに迷惑をかけてはいけないと父の事は伝えずライブを観ていたんだけど、怒髪天のライブに救われた気持ちになって号泣してしまった。というか本当に文字通り「救われた」のだ。あのライブのパワーを受け取って沈みまくっていた心が浮かび上がるような、何か悲しみからほどけていくような感覚があった。(しかも実は会社経由で父のことは伝わっていて、ライブ後直接温かい言葉をかけていただきました、、、、。)

実はそれ以外でも怒髪天のライブを観ながら泣いちゃったことは何度もあるんだけども、この怒髪天の持っている稀有な力は、今作の至る所にも宿っている。聴いてくれた人、写真集を見てくれた人をきっと陽の方に、正の方向に導いてくれると思う。しかも大笑いしながら。

おおっと、また長くなりそうなので、この辺で。ちなみに坂さんがツーバスにチャレンジしているんだけど、彼の凄まじさもいつかテキストにしてみたい。変態というカテゴライズをされつつ、なんというか坂さんの中には果てしない世界が広がっている。

そして「一択逆転ホームラン」。普通に考えればこれがリード曲のはず。めっちゃポップで歌詞もキャッチー。これを前面に出さないなんて勿体なさ過ぎるんだけど、そこが怒髪天の真髄なのかもしれない。ライブでは間違いなく光り輝く1曲になるはず。TBSのJUNKでリードじゃないのにオンエアしてもらったりもしてました。嬉しかった。

さらに続くのが「たからもの」。これもシングル曲です!曲も歌詞もグッときまくる。ただ、この歌詞に関しては人生という道をだいぶ歩いた人にばっちりハマるということなのかもしれない。サビで歌われる

夢中になって探し回った物じゃないけど
なんかグッとくる
コレだよなぁ あぁコレだよなぁ
あぁそれからずっとタカラモノ

人生を生きてきて、必死にやってきても掴めないもの上手くいかない事ばかりだけど、今自分が手にしているもの、立っている場所、それを「たからもの」と言える強さ、美しさ。それこそが一番大切で、幸せって事なのでは?と思う。(もしかしたら若者はこの歌は今は聴かないで突っ走った方がいいかもしれない。逆にそのくらい大切なことが歌われているから。)

そしてこの曲はとにかく音がいい。シミさんはこの曲だけ今回プレベを弾いてるんだけど、この音色だけでこのアルバムは買う価値があると思うってくらい素敵。気持ちよくてずっと聴いていられる。ベースだけでなく、ドラムもアコギの響きもめちゃいい。

さらにいうなら増子さんのボーカルも新境地。50代になって新境地って、嘘みたいな話だけど本当に素晴らしい歌。優しいというか、哀愁があるというか、とにかく真摯に伝わるボーカルが録音できた。シングルにするべきレベルの曲なんだよなぁ。

ラストは「Go 自愛」。ニューウェーブ風味のパンク曲。「OUT老GUYS」と対をなすように音に隙間がありまくるけども、熱量は尋常じゃないレベルで、歌詞もひとつも抜きどころがなく、ひたすらに「生きる」と歌われる。しかも曲尺が1:48。この曲がラストにくるアルバム最高、怒髪天最高。

僕は生きていくのに必要で、とても大切な要素は「ユーモア」だと思っていて、いかにそのユーモアが大事なのかをいっつも怒髪天に教えてもらっています。生きていくのがしんどくなる時に怒髪天の存在が「なんとか明日も頑張るか」と思わせてくれるのです。しかもしかめっ面とかじゃなくて、バカ笑いしながらすくい上げてくれる。

繰り返しになりますが、そんな怒髪天がいっさいの躊躇いもなくやりまくってやりきったアルバムなのです。間違いなく最高です。ぜひ聴いてください。

、、、長い、もう終わりにします。読んでくれた方ありがとうございました。

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