シューイチワインバー、2024年2月報告
シューイチワインバー・スリーサウザンド、2月の営業が終了しました。
▶ シューイチバーの詳細はこちら。
来てくださったお客さまのおかげで、本当に楽しく、充実したひとつきでした。見切り発車ではじめたことだったけど、なんとか無事に1ヵ月まわし切ってほっとしています。それぞれの営業日を思い返すと、嬉しくて、ちょっと泣けちゃう💐(ますたやすぐ泣く)
さて、実はこの1ヶ月、謎にお腹を壊し続けていたますたやですが、その諸悪の根源もおそらくシューイチバーです。(不健康の原因)
思った以上に、緊張してました。そして、誰にかけられたわけでもない謎のプレッシャーを感じていました。自分がはじめたことで勝手にプレッシャー感じるとか、自家発電もいいところですよほんと。
話は変わりますが、このワインバーはわたしにとって、いつか自分の本当の居場所を持つための予行演習の意味合いも兼ねています。
だから今のわたしに起こってるできごとは、すべてが貴重な経験値。駆け出しシューイチワインバー経営者のあたしが、今しか感じられないことを感じるための場所でもあるんです。
業界人としても、まだまだひよっこのますたや。そんなわたしが「今」どんなことを考えているのか。どんなことに直面し、どんなことで悩んでいるのか。そして、この場所をどんなお客さんが訪れ、どんな会話をし、どんな場所に育っていくのかーー
そんなことを、ひとつも忘れないでおきたいと思って、こうして筆を執りました。
あとから読み返したら、すごい恥ずかしいかもしれない。なんにもわかってないだろうし、甘ちゃんなことを言ってると思います。自覚はあります。それでも。
今のあたしにはたぶん、今のあたしにしかできないことがある。今のわたしには、今しか感じられないことがある。そう信じて、今のあたしの現在地を、ここに記していきたいと思います。
お客さまとして来てくださったみなさんも、これからお客さまとしてお越しいただくみなさんも。そして、業界の大先輩のみなさまたちも…よかったら少しだけ、心の隅っこのスペースをお貸しください。
この業界ひよっこ奮闘記を、酒の肴にでも使っていただけますと、わたしも奮闘しがいがあるというものです。
2024年2月|シューイチバーのワインについて
まずはなにはともあれ、ワインの選定のお話をしたいと思います。なにせうちは、ワインバーですから。
シューイチワインバー・スリーサウザンドのコンセプトは、ワインとおしゃべりを楽しむバーです。そう、うちのバーのメインのひとつはもちろんワインなんですが、もうひとつの大切な楽しみがおしゃべりなんですね。
わたしがワインバーを開く前、先輩のソムリエにお店のことを相談する機会がありました。そのとき先輩ソムリエから「どんなお店にしたいの?」と聞かれたんです。咄嗟に出て来たのが、まさにこの答え。あたしはワインも好きだけど、なにより、みんなとおしゃべりがしたいんですーー
なお、このときソムリエからは、「ああ、なるほど。つまりおかまバーみたいなことだね」と真剣な顔で言われ、思わず「そうです!!!」と得心した気がしたんだけど、果たしてその反応でよかったのかどうか、そこに関してはいまだにはなはだ疑問です。
話がそれました。
だからうちのワインは、おしゃべりを引き立てるためのラインナップを選んでいます。具体的には、グラスで飲んで普通にちゃんと美味しくて、考えすぎずに飲めるワインたちです。
おしゃべりが盛り上がるときって、ワインは脇役になると思ってるんですよ。
「なんかすっごい楽しかったけど、そういえばなに飲んだか忘れちゃった」
そういう時間って、わたしにとってはすごく楽しかったことが多いんですね。ワインを忘れていることは、幸福な時間を過ごした証拠というか。
もちろん、高価なワインや貴重なワインを飲んで、そのワインについてワイワイ語るのもまたワインのひとつの楽しみです。わたしはそれだって大好きだし、そういう楽しみをあえてなくしたいわけではありません。
でも。わたしの得意分野はやっぱり、古酒やグランヴァン、希少性の高いワインよりも「普通に美味しい、手に入る3000円くらいのワイン」だと思ってるんです。等身大で、いつもどおりに飲めて、でもちょっとだけ「あれ、美味しい」と小さく感動できるワインたち。
だからこそ、ちゃんと美味しいワインを選びたいと思っています。そのためにわたしは、ワインを選ぶちからをもっと身に着けたい。ここは正直まだまだ経験が浅いし、勉強も修行も足りていないところです。
なお、その修行不足の部分に関しては、今は業界の先輩たちに助けていただいています。
たとえば、うちのワインバーを「おかばバーと同義」(意訳)と言い放った先輩ソムリエは、現在うちのバーの営業担当をしてくれています。うちのワインの半分は、このソムリエが卸してくれるワインです。
なにせこの人、わたしがワインにはまるきっかけとなったお店の元店長でして、わたしがワイン界隈でもっとも長くお世話になっている方でもあります。責任取ってほしいわ(本音)だからこそ、わたしの好みも筒抜け…というかなんというか、この人が選ぶワインを、わたしは世界で一番信用しています。ほら、コンセプトもしっかり共有できてるしさ(おかまバーだけど)
そしてもう半分は、おなじくもっとも信頼しているお店のうちのひとつ、水天宮アフリカーさんや、おもしろフランスワインの気があいすぎる三ノ輪の鈴木酒販さん、そのほか、いろんなワイン屋にうかがって、話しながら選んでいます。自分のワ活がてら、シューイチバーに合うワイン探しの旅。ああ、楽しい。本当に楽しいんだこれが。
この、ワインを選ぶ時間はわたしにとって、ものすごく幸福な時間です。なにを出そうかな、あれを出そうかな、これもいいな、ああ、あれもいいな。みんな、美味しいって飲んでくれるかな…!
そうやって、来てくれるかもしれない「誰か」のことを想像しながら、ワインを手に取るこの瞬間の、多幸感たるや。
で、このあと「お支払い」という恐ろしい時間がやってくるわけで、結局またお腹を壊すことにはなるんですが(腹弱勢)、うちのワインバーは自信を持って「いま、あたしが飲みたい」美味しいワインを取りそろえております。えっへん!(お前が飲みたいんか)
ぜひ、みなさんにも、一緒に飲んでもらえると嬉しいです🍷
2024年2月|シューイチバーのお料理について
さて、わがシューイチバーは「お料理は出てこない」バーとなっています。
ちょっとしたおやつとチーズ盛り(¥300)、簡単なプレート(¥500)はご用意していますが、基本的には「自分が食べる分を持ち込んで、ワインとともに食べる」スタイル。
料理ができない場所なので半分は苦肉の策だったんですが、これがですね、いざ始めてみるとなんだかおもしろいことになってるんですよ。
たとえば先日は、お料理上手なお客さまが、めちゃめちゃ美味しいバスクチーズケーキをお持ち込みくださいました。開店祝いに、と焼いてきてくださったそれを、みんなでシェアしていただいたんですね。
ちょうどその日は、スペインの濃い赤ワインが開いていた日でした。とろふわでみちみちにうま味の詰まった濃いチーズケーキに、バニラの香り漂うテンプラニーリョ。意図したわけではなかったのですが、これが最高のデザートになったんです。
そうか、こういうことができるのか!と、新たな発見をした気持ちでした。お持ち頂いたお食事と、うちのワインとのコラボレーションなんて…!
なお、この日お越しくださったお客さまたちはその後口々に、「ラッキーな日に来た」と話しましたとさ。それな。
こんな感じで、どうもうちのバー、手作りに限らず「みんなでシェアしたいおつまみ」を思い思いに持ち込んでいただく雰囲気が生まれています。
威勢よくピザを持ってきてくれた友だち、ウーバーイーツをその場で頼んでくださった業界の先輩、プリッツだっておつまみスナックだって、もちろん「シェア」精神のかたまりです。ありがたくいただきます!
重ねて言いますが、もちろん基本は「自分の分だけ」お持ち込みいただくので、まったくかまいません。今夜自分が食べる分を、そのへんのコンビニで買ってくる。十分。もしくは、うちのパンプレートを召し上がっていただく。ありがとう。本当の本当に、それでまっっったくかまわないんです。だってみんなの分を考えるのって、結構面倒じゃないですか。あたしだけ?
でも、たまにはこんなラッキーなこともあるかもよと、みなさんにはそっとお伝えしておきます。
こんなことが重なるうち、なんとなく「食とワインのコラボレーション」についても思いを馳せるようになりました。きっかけをくださったのは、これもお客さまです。
そのお客さまとは、バーで初めてお会いしました。ななさん、とお呼びしてるこちらのお客さま、実は3月に『お惣菜とお酒のお店』を開かれます。
▶ せっかくだからお店のご紹介。今ではずいぶん工事が進み、すごく素敵なカウンターテーブルができています。完成とオープンが楽しみすぎる…!
ななさんとの雑談中のことでした。「いつか、コラボもできたらいいですねぇ」なんて言葉がさらっと飛び出したんですよ。そうか、コラボ…え、コラボ?こ、コラボ…?!!(太字)
わたしはたぶん、料理が不得手です。いや、できないわけじゃないんですが(言い訳)、今のところあまり気持ちが乗っていません。今後もずっとしない、と決めてるわけでもないんですが、少なくとも今しばらくは、軸足がワインに傾いていると思うんです。
自分が一生のうちにできることは限られています。そして、得意なことも、ひとそれぞれ。だったらわたしは、わたしの得意を活かしながら生きていくほうが、たぶん周りもハッピーです。
そしてその分、誰かの得意をうちのお店で開花させてもらえたら、そんなことができたら、なんか、結構イイんじゃないだろうか…!
というわけで、いずれはなにか食イベントみたいなことも、頭の片隅に思い描いています。何にも決まっていないからこそできる自由。うわ、楽しい。
みなさまからのアイディアやお声かけ、引き続きお待ちしています🌸
2024年2月│シューイチバーを訪れたお客さまたち
今月はシューイチバーのオープンということで、ますたやのお友達のみなさんが駆けつけてくださいました。みんな本当にありがとう!いや、本当に。みんなの存在自体が、笑顔が、わたしにとっては特別なご祝儀でした。
そもそもわたしがシューイチバーを開こうと思ったきっかけは、「わたしにとって大切な誰かが、ふらりと訪ねてきてくれる居場所が作りたい」と思ったから。それがまさに目の前で繰り広げられるわけですから、ずーっと心が幸福でした。
なによりも、お友達のみなさんのおかげで予約のない日がなかったことが、わたしを芯から支えました。ひとりでも誰かが来てくれるなら、お店を開けよう、と、そう思ったんです。
こう言っては身も蓋もないですが、シューイチバーの準備って結構大変です。シューイチしか開かないもんだから、毎週重い荷物を抱えて大都会を駆け抜けることになります。なんなら、毎週金曜日はワイナリーの勤務日でもあるので、朝、千葉から四谷三丁目まで出て荷物を置き、御徒町まで戻って働き、また四谷三丁目に繰り出しています。
ま、好きなことだから文句はまったくないんだけど、疲れるか疲れないかと二択で聞かれると、そりゃもう疲れる一択です(率直)
でも、あのひとが来るから、私も行こう。そう思うことができました。ちょっと筋肉はしんどいけど、今日もお店を開けよう。なるほど、飲食店における予約ってこうして店主の心を救うんだな、なんてことも実感したりして。うん、わたしもできるだけ、ひとさまのお店は予約するようにしよう…
一方で、初めて来てくださった方、予約なく当日ふらりと来ていただける方もいらっしゃいました。これはこれで、めちゃくちゃ嬉しいもんなんですね。
おひとかたなんて「予約しちゃうと、直前で怖気づいてしまうかもしれないから…」と、あえてご予約なしで頑張って来てくださったそうです。キュンですよ、そんなもん。
ますたやに会うのに緊張もなにもいらないわけですが、でもなんとなく、わかる気はします。初めての場所、初めて会うひと。ハードル、高いですよね。そもそもわたしも緊張しいだし、なんだったら自意識もエベレスト並みに高いので、初めて行くお店のドキドキ感はわかります。ワイン会の前なんて、そわそわしすぎて電車に乗り間違えたりするからね…
なおかつ、あの、目の前に立ちはだかるあやしげなビル。あんなところ(※失礼)に勇気を出して入ってきてくださるみなさん、本当にありがたみがすぎます。そんな緊張がわかるからこそ、お部屋に入った後はリラックスできるよう、わたしも心を尽くしたい。
そうそう!嬉しかったのは、「これからワインを知っていきたい」という方がいらしてくださったこと!
そのお客さまは以前、単発のますたやバー企画に参加してくださったレディだったんですが、聞けばなんとそのイベントのときに、『ワインってどうやら、楽しそうだぞ?!』と、思ってくださったみたいなんですよね。ええぇ!嬉しい、そうだったの…?!
この方がいらした営業日は、ちょうどワインの猛者たちが同席してくれた日でもありました。おかで、ワインの楽しさがたくさんシェアできたんじゃないかと思っています。ああそうか、こうやって、ワインの輪って広がっていくんだなぁ…!
「ワインを好きになると、この楽しい仲間に入れてもらえるんじゃないかと思いました」
お客さまからうかがった言葉ですが、なんという褒め言葉。うれしすぎる。
よかったらぜひまたお越しいただきまして、ワイン片手にワインの話や、ワインじゃない話を、ともにできると嬉しいです。ほら、あったかい沼はこっちだよ(手招き)
お客さまと作るシューイチバー
さて、2月の営業を終えてみて、わたしはやっぱりいろんなことを感じました。想定以上に難しかったこともあったし、思ってもみない驚きや発見もありました。見切り発車で始めたことの利点ですね(ノープランともいう)
お店ってたぶん、自分が思ったようには育っていかないと思うんです。わたしだけのちからではコントロールできないというか、生き物みたいなところがあるというか。
わたしはもともと観劇が好きなんですが、あれに似てるな、と思います。舞台は、お客が育てていくもの。お客と一緒に、育っていくいくもの。千秋楽で起こる息のあった拍手に、「ああ…こんなふうに育ったんだな」と感じるあの、得も言われぬ小さな感動。
自分の店であり自分の店じゃない、とは、飲食店の先輩のみなさんがおっしゃる至言です。「お客様に育てていただく」、これって本当にそうなんだと思います。まだまだ、ひよっこのあたしにはわからないことだらけだけど。
一方で、こんなお店に育っていくといいな…という希望も見えてきました。これは、自分のこどもに思うのと似てるかもしれません。期待であり、願いでもあります。そして、それが叶えられなくても、成長そのものがうれしい、そういったたぐいの。
ちょっと恥ずかしいんですが、これも何かのよしみです。せっかくなので、わたしの夢を聞いてってください。
うちのバー、いつか文豪喫茶みたいな場所になるといいなぁと夢見ています。そう、たとえば、村上春樹がやっていたピーター・キャットみたいな。
そこに行けば、誰かがいる。顔なじみのあのひととか、いつか出会ったあのひととか。そんな空間で、ワインを1杯飲む間に交わされる、なんでもない言葉たち。
「イタリアのワインが好き?だったらほら、あっちのお客さんに聞いてみたらいいよ」そうやって、小さな輪が重なっていくような――
金曜日の夜って、ときどき寂しいじゃないですか。特別なにかあったわけじゃないけど、なんとなくまっすぐ家に帰りたくない金曜日の夜が、あたしにはありました。しっかり誰かに会って話したいわけじゃないけど、このままひとりでもいたくない。ワイン1杯、ちょうど、そのくらいの、ほんの少しの「間」が欲しい夜が。
そんなとき、ふらりと立ち寄れる場所があると人間は生きていけると、わたしはわりと本気で思っています。生きてるうちにいつの間にか背負ったなにかを、少しだけ「置いて」帰れる場所。都会のエアスポットみたいな、ささやかな居場所。
まさに今、わたしにとってここが、そんな場所になろうとしています。そう、長らく忘れていた「ハナキンの夜」が、実はいま、わたしにも復活してるんですよ…!うわ、それは思ってもみなかった。そうか、これはわたしのための場所だったのか。みんな付き合わせてごめんね、でも、ありがとう。
というわけで、よかったらそんなあたしのハナキンの1杯に、お付き合いくださいませ。なんと今月のお席…まだたくさんあいてるんですよこれが!(宣伝)
もう少し詳しいシューイチバーのこと[経営報告など]
さて、ここまでお読みくださったみなさん、ありがとうございました!
長いでしょう。わかる。疲れるでしょう。あたしもそう思う。いつも長々とすみません。言いたいことがありすぎる人生…誰よりもおしゃべりしたいのはアタシなんだわ。
というわけで、ここから先はメンバーシップのみなさまむけの、経営報告的なサムシングを書き綴ります。ここまでが主に見切り発車のよき点だとしたら、ここから先は見切り発車の、よくなかったほうの気づきについての記録。はは、いろんなことが起きるもんです、本当に。300円の単品でも読めますので、気になる方はどうぞ。ただ、読んでも読まなくても、特段人生に影響はないとは思います。
そうそう、シューイチバーにいらして、その場でメンバーシップになってくださったお客さまもいらっしゃいました。ありがとうございます!メンバーシップの方には、対象のグラスワインを1杯無料でお出ししています。その場で入って抜けていただくのでまったくかまいませんので、ぜひお得に1杯飲んでってください。なお、2回目以降はチャージ(¥300)を無料にいたします。引き続き入ってくださる方も、ぜひまた足をお運びくださいませ。
というわけで、3月のご予約、まじでお待ちしております。今週はブルゴーニュのぷるみえくりゅをお出しする予定なんですが、このままだとわたしがひとりで飲みきっちゃうことになります(飲むなよ)
お待ちしてまーす!🍷
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