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ショートストーリー

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#ではない

物語「ポストモダンガール」②

そして、カラオケを皆々が歌い、彼女が歌う番がやってきた。そして、彼女は選曲する。トイレで出入りする周りの行動を気にしつつ、ウケが良くない限界線を認識しているはずだ。おそらく好きなアニメのオープニングだかエンディングを歌いだろうが、我慢しているに違いない。選曲履歴には無いものの、検索履歴にはその手の曲がびっしり詰まっていることがその証左だ。さぞ、悔しいだろう。こういう光景を見て、「これだから日本人は

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物語「ポストモダンガール」③

微量のコーラをグラスの中に入れるという無意味な動作をした後、私は部屋に戻った。

曲の進行状況を示す6段階の数字は5から6へと変わった。

ちょっと戻るのが早かったなと、後悔する。ずっとスマホを見ながら形容しがたい表情をする友人。

私は噛みしめる。ビリビリとむしゃくしゃに破り捨てたい衝動を我慢して。

頼む、早く終わってくれ。君はもう十分過ぎるほど、役目を果たした。もう無理する必要ないだろ。『雰

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