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飛ばせ飛ばせ!今だ!追い越せ!の移動の話~ベトナム旅行記(7)

関西組も無事に、ベトナムに到着した。予定では16時にはベトナムに到着しているはずが実際には20時をまわっていたので、飛行機の遅延による関西組の疲労は相当なものだっただろう。ゲートから出てきたみんなの顔は、それぞれに疲労の色が滲み出ていた。

ダラット空港のゆるキャラ
ダラットはきのこ狩りが出来る観光地として
有名らしいです

ベトナムの空港ダラットからFuture Coffee Farm(以下、FCFと書く)のあるバオロクまでの所要時間は、チャーターバスで約2時間かかる。みんなお腹も減っているのだけれど、20時ともなると空港周辺には食事ができる場所も少ない。とりあえず、バオロクのToiさんの自宅近くまで戻ろうと言うことになった。関西組は、疲れている上に、空腹ともなると2時間も大変だろうなと思った。

んが、しかし、これからが違う意味でも大変なのだ。

何が大変か。

チャーターバスのドライバーの若いおにいちゃんが、もう飛ばす飛ばす。猛スピードでバオロクを目指すのだ。

怖い。

このバスが飛行機なら、このまま離陸してしまうんじゃないかというくらいのスピードで飛ばす。助手席に座っている僕は、暗くなっている夜道を下の写真ようにガンガンいくので、恐怖に慄いていた。ベトナムは一応街灯はあるのだけれど少ないので、基本的に車は常時ハイビームで走っている。なので、対向車のハイビームは眩しく、暗い方はどこまでも暗いので目がおかしくなって周りがとても見づらいと言うのも恐怖感に拍車をかける。

実際の夜道。結構眩しいのだ。

運転席の速度メーターが助手席からだとよく見えないので、時速を測るアプリを開くと「時速 80km」と表示されている。

時速80kmなら大したことないじゃないかと思うかもしれないが、高速道路ではない一般道をこのスピードで走っている。さらに、道路は2車線。日本の2車線の一般道を、時速80kmのスピードで走っていると想像してみてもらいたい。僕の感じていた恐怖感は、想像に難くないだろう。ベトナム名物のクラクションの嵐のもと、前に走る車を煽ったり、対向車線に飛び出て追い越しを行ったりして、車はどんどん進む。対向車線に飛び出した瞬間に、実は対向車が向こうから来ていたなんてことも一度や二度ではない。そんな場面に遭遇するたびに、僕は冷や汗が出て、下腹部がキュッと縮み上がってしまう。

さらに、怖いことに、そんなに荒い運転をしながら、ドライバーのお兄ちゃんの顔色はまったく変わらない。時折、口笛を拭きながら、片手でスマホをいじったりしている。

僕はそんな姿に内心ビクビクしながらも、時間が経つにつれて彼の運転技術はなかなかのものだと思うようになった。危ない!と思っても、間髪その危機を顔色ひとつ変えずそれを免れている(免れていたから、この文章を今この僕が書けているのだけれど)。それを幾度なりに目にしていると、だんだん彼に信頼感が出てくる。そして、根拠のない(まったくない)安心感が出てくる。そうなってくると、こちらもなぜかアドレナリンが出てきて「イケイケ!もっと飛ばせー!」という気持ちになるから不思議である。

ベトナムの道路交通法はよくわからないのだけれど、二車線で対向車線に飛び出しての追い越しは、基本的にはどのドライバーもやっている。でも、時折、それをしなくなる区間がある。目の前の車が比較的ゆっくりしたペースで進む車であって、対向車線に対向車が来ていなくても追い越しをしようとしない。だから、おそらく「追い越し禁止区間」があるのだろうと推察した。その区間がどのようにしてわかるのかが(標識があるのか?)最後までわからなかったのだけれど。そういうときには、ドライバーのおにいちゃんは、「チッ」と舌打ちをして、「これでもか!」というくらい前車との距離を縮めて煽っている。もう前の車のお尻と、こちら車の先っぽがくっついてしまうんじゃないか、というくらいに詰めている。もちろんクラクションも鳴らしている。

そこまでされたら、前の車も、少しスピードを上げるとか、路肩に寄せてこちらを先に行かせるとか、そういう対処をしても良さそうなものだけれど、そういうこともしないので、その車を先頭に僕たちの車の後ろにも大渋滞ができている。

ドライバーのおにいちゃんの苛立ちは、どんどん募っているのが側から見てもわかる。僕も、調子のいいものでさっきまで「もっとゆっくり走ってくれぃ!安全運転をお願いします〜〜!」と心の中で叫んでいたのに、今では「前の車!おせ〜ぞ!」なんて心の中で叫んでいる。いい気なもんである。

ドライバーのおにいちゃんと僕は妙な連帯感を抱きながら、彼は心理的に物理的に前の車を煽り、僕は心から念を送るという手段で前の車を煽った(陰湿!!)※こういうのは日本では絶対に許されない。たぶん、ベトナムでも許されない。

そうこうしているうちに、急に道路が広く開け4車線になった。
ドライバーのお兄ちゃんはここぞとばかりに、アクセルを踏み込む。
それまでの鬱憤を晴らすかの如く、ガンガン飛ばす。エンジンが「ぶぉ〜んん」といううなりをあげて、それに応えている。もうこのスピード感の方に慣れっこだ。

ふとToiさんのウチまであとどれくらいだろう?1時間くらいは来たから、あと1時間くらいかな?と思って、グーグルマップを開くと「あと15分」と表示されている。このおにいちゃん、どんだけ飛ばしてんだ・・・。そういえば、別車でこちらで向かってきているToiさんの車はどうなっただろう?空港を出てすぐに、行き先へ案内すべく先頭を走るべきToiさんの車を、このお兄ちゃんはいともさらっと追い越して、そしてあの爆走に入ったのだ。そのことを思い出して、バックミラー越しに後ろを見ると後ろに後続車はない。だいぶ、Toiさんの車を突き放してしまったらしい。

僕たちがあと15分で到着しても、Toiさんたちはあとどれくらいかかるかわからないなぁと思った。Toiさんは客人が同乗しているときに、爆走をする人ではない。彼の運転を見る時は、僕も一緒に乗っている時なので、Toiさんの爆走を見たことはない。たぶん、Toiさんはこのお兄ちゃんのように爆走はしないような気がする。性格的に。クラクションを鳴らすのも見たことがない。時々、道を間違えて、照れ隠しにいつもあの笑顔で「ひゃひゃひゃ」と笑っているのを見るけれど。

街の様子が静かになり、車の交通量も減ってきた。
Toiさんの自宅の近くに戻ってきたのだ。

バスは静かに「フォー」のお店の前で止まった。時刻は結構な遅い時間になっていたけれど、フォー屋さんは人で溢れかえっている。

イバーのお兄ちゃんが「あの店でToiさんが待てと言っている」と教えてくれた。でも、ズカズカと大人数で勝手に入るわけにはいかないので、Toiさんたちの到着を待ってお店に入ることにした。Toiさんたちがまもなく到着して僕たちが中に入ろうとすると、それまで大人数で宴をやっていたおじちゃんたちが、「俺ら帰るから、こっちへ座れこっちへ座れ」と椅子を用意してくれている。やっぱりベトナムの人は、親切な人が多い。

ここのフォーも絶品だった。Toiさんの連れて行ってくれるお店は、美味しいところしかない。やはり味にうるさいToiさんなので、その選別の目は確かである。

ここで、今回のベトナム旅のメンバーが揃った。
初めて会う方たちも多いし、こんなに大人数での行動は久しぶりのことだ。

僕はわりに一人旅ばかりしてきたので、新鮮な気持ちである。
大人になってきたのか、新しい出会いには心からワクワクする。

そこから広がる可能性は、無限大だからだ。
4年前にToiさんと出会って、僕の人生はガラリと変わったように。

さて、旅の本格始まり。

関西組へのToiさんの歓迎の挨拶




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