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○○さんの話はしちゃいけないよ

夢の見方が変わっていると言われました。
多くの方が自分が体験する夢を見るそうですが、私は俯瞰視点で見ることが多いのです。
また、俯瞰視点でない場合、夢だと自覚して見る明晰夢が多かったりします。


ある日、スリラーナイトの怪談凸待ちをした夜、夢を見ました。
暗い中、嫌な感触に包まれます。
金縛りが起きるわけでもなく、ただ、じんわりと体にまとわりつき、ゆっくりと下に引き下ろすような、上からべったりと押さえつけるような、嫌な感触です。
夢の中でも、感触だけは生きていました。

ああ、霊だ。凸待ちしたから来たのかな。

いつもの明晰夢だと分かっていたから、私は冷静に考えていました。

すると、急に体に何かが降ってきました。
毛布のような柔らかさでありながら、ずん、と重いものです。
私は夢の中で押しつぶされました。
手足は動きます。目も瞬き出来ます。
ただ、重さ故に自由が利かない。
そんな状態で、私の顔のそばで誰かが囁くのです。

「○○さんの話はしちゃいけないよ。」

私は、先日凸待ちで話した、亡くなった叔父のことかと思いました。
茶化す気持ちはありませんでしたが、結果的に話の結末を笑いに落としたからです。
私は「ごめんなさい。○○さんの話はもうしません。」と答えますが、重さのあるそれはどんどん重くなります。

ああ、不味い。飲み込まれてしまう。

夢を覚まさなければ、と思い、私は夢の中で動ける限りの力で身体を叩きました。

そのおかげで、目が覚めました。
ですが、床暖房で暖めていた部屋は酷く冷たく、身体は首から肩にかけ強張っていました。
偏頭痛もしています。
機械の故障かと思いながらも、やけにはっきりした夢の感触と罪悪感に、私は叔父の写真と観音様に手を合わせ、詫びました。


けれど、叔父の名前は○○では無いのです。
私の知り合いに、その名前の人がおひとり居るのですが、その方とは特に仲が良かったわけでもありませんし、縁も切れています。

なぜそんな夢を見たかは分かりません。
もしかしたらこの先、○○さんの話を知るのかも知れません。
その場合も、私はその話をしないままだと思います。

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