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「アリさんにあげよっ」好き。

お父さんが子どもに言った。「アリさんにあげよっ」と。

子どもの小さな足の先を見てみると、ねずみ色の道の上に桜色のわたあめが落ちていた。子どもが、手にしているわたあめの一欠片を落としたのだ。

「アリさんにあげよっ」というお父さんの言葉は、子どもが拾って食べないようにするために、ふと出た一言だろう。なんて、かわいくて、ユニークで、やさしい一言なんだろう。この言葉そのものが、わたあめのようだ。

子どもがわたあめを拾って食べないように、他の言葉でも止めることはできる。直接的な言葉であれば、「拾っちゃダメだよ」とか、「ダメ〜」だったり、「コラー、拾うなー」なんてね。言葉じゃなくても止めることができますよね。先にわたあめを拾ったり、子どもを持ち上げたり、さいあくな場合、子どもの手を叩くことだってできる。

でも、そのお父さんは「アリさんにあげよっ」って言ったんです。しかも、咄嗟にね。咄嗟の言動には、その人の人間性がまるごとこぼれ落ちる。ぜったい、やさしくて、クリエイティブなお父さんです。

いやあ、好きだな。「アリさんにあげよっ」、そして、お父さん。

もうこのお父さんのお嫁さんになりたいと思ったくらいですよ。うん、結婚されてるけどね。もうこのお父さんの帰宅時に「お風呂にする?」「ご飯にする?」って言うのを想像したくらいですよ。うん、結婚されているし、子どももいるけどね。もうこのお父さんと老後に一緒に手をつないで歩くことを想像したくらいですよ。うん、ぼく全く関係ないですけどね。

「アリさんにあげよっ」が好きだと思ったかたは、あなたの好きを教えてくださいね。

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