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残『ポップわーるど』



毎朝いた掃除のおばちゃんがいない
よく見かけたコンビニの店員がいない
電車を待つサラリーマンがいない
僕の隣にいたはずの彼女がいない

いつのまにか、いなくなった人たち
通り人も、信号待ちする人も
図書室で必死に勉強する人も
パチンコで遊んでいるおじさんも

せんべいを買おうとしても、いない
訪問販売していたあの人も、いない
ビルの窓拭きをしていた人も、いない
僕と一緒にいたはずの彼女も、いない

やはり、いない

僕は残された人、残。
残は何をするべきか、わからない
ただただ現実を受け入れるべきか
しかし現実は虚構そのものである

残はいない人の分を補えるのだろうか
それとも、残だけで生きようとするのか
小さなコミュニティでも作っていくのか
まるで商店街みたいな世界になるの?

彼女すら、いない世界なのに?

僕はどこかへ行ってしまった彼女を思い出す
彼女は純粋だった それだけは確かだった
それ故に、彼女はいなくなってしまったらしい
しかし、僕はそれを止める権利がなかった

残はいない人の分悲しみを手に入れる
おそらく喜びが勝ることはないだろう
それでも残は生きることを止められない
いない人へ精一杯の花束を送り続けるために

残は生きなければならない

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