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指人形『真澄の空』




僕が人生を通じて人と遊んだ数はどれくらいだろう。
そのうち、小、中学校時代に遊んだ回数はどれくらいあっただろうか。
おそらくだが、一割にも満たない。
なぜなら、人と遊ぶことが嫌いだったから。

主体性が皆無だった僕は、ずっと流されていた。
だから面白いと思えないことにも付き合っていた。
だけど、それは学校が終わるまでの話。
学校が終われば、僕はまっすぐ家に帰った。

人間の友達は一人もいなかった。
代わりに、僕には指人形があった。
総勢二百を超える彼らが僕を出迎えてくれた。
僕は自然と自分の世界にのめり込んだ。

その世界は戦いを中心とした世界だった。
僕はひたすら指人形たちを戦わせた。
四角いステージの上に彼らを配置し、
場外に出すまで二つの指人形をぶつけ合う。

基本はトーナメント方式で勝った方が上に進む。
大概強いメンバーは決まっているが、
気分次第で(成り行きで)珍しいメンバーが勝つこともある。
そのときは僕自身が一番ワクワクした。

指人形たちはみんな個性を持っていた。
優しいやつ、頑固なやつ、臆病なやつ、正義感のあるやつ。
だけどみんな僕の指示に従って生きていた。
だから僕は思うがまま彼らを動かしていた。

夕ご飯の時間になると、僕は自分の世界から抜け出した。
そしてご飯を食べ終え、宿題をやって再び入った。
だいたい、そんな生活を小学校時代ずっと送っていた。
シンプルに、それが一番の娯楽だったから。

今思えば、僕が創作に目覚めたのは指人形のおかげかもしれない。
彼らにはキャラクターがあって、それに応じたストーリーもあった。
僕はゼロからそれを構成して、完結させていた。
今は小説を書くが、やっていることは基本的に変わっていない。

小さい頃もっと人間と遊べば良かった、なんて後悔は全くない。
むしろ自分の時間を有効に使っていた過去の自分が誇らしいくらいだ。
僕は指人形を使って一人で遊ぶことが好きだった。
それがあの頃の僕にとって、最高の遊戯だった。

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