アーモンドチョコレート『水無月の白昼夢』
雨だから、ちょっと散歩する。あえてね。
普段は見えない世界が見えたりして。
たとえば雨宿りをする高校生カップル。
人目を気にしながら、手を繋いだりして。
黄色い傘をさす少年が勢いよく走る。
はしゃぎながら、楽しそうにしながら。
おかげでパチャパチャと水が跳ねる音がする。
そしてこの世界にも潤いがあることを知る。
だけど雨の日はうんざりだって人もいる。
駅前のバス停は人で賑わっている。
みんな、暗い顔。疲れている。
なんだろうね。ただただ、複雑な気分。
おじいちゃんが蒼い紫陽花を見てる。
別に写真を撮るわけでもなく、見てる。
インスタ映えとか、気にしないんだろうな。
それって結構、幸せかもね。
帰りにコンビニへ寄って、なんとなく
アーモンドチョコレートを買う。
濡れた歩道をゆっくり歩きながら、
甘さと硬さと香ばしさを口に潜らせる。
人間っていいな。なんだか、そう思った。
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