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ノットファンド(短編小説『ミスチルが聴こえる』)




 見つからない、君の感情。笑っているのに「喜」が見えない。泣いているのに「哀」がない。怒っているのに「怒」を感じない。愛してると僕が言って君は笑うけど、「嬉」も「照」も「愛」もない、まるで誰もいない遊園地みたいな「無」でしかない。
 僕は探す。必死で君自身の感情を探すけど、君はいない。どこかへ飛んでしまったのか。あるいは吸い取られてしまったのか。
 焦って、君を揺すってしまう。どうしてこんなことになってしまったんだ。僕は叫ぶ。喉が痛くなるまで、ずっと。
 だけど君は答えない。ずっと。
 僕は永遠にエラー状態になった君を見つめて、やはり見つからない君の心の奥底に「愛」を注ぎ込む。どうにかして君がそれに触れてくれることを信じて。また、感情を取り戻せるように。夢想であることくらい、知っているけど。
 慣れない現実と、当たり前の真実。日常は淡々と続き、人々は人間であることを忘れてしまう。だけど、僕だけはいつまでも非日常を浮遊し、三ミリくらい宙にいる気分で暮らしている。そして今日も探し続ける。見つかるのないはずの君を。
 ロボットになった君の感情を。

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