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1997年、8月29日。『真澄の空』


それは酷い猛暑の日だった。
俺は汗をかきながら東京を彷徨う。
とうの昔にバブルが崩壊し、
日本は全体的に真っ黒だった。

御茶ノ水にいたホームレスが言っていた。
「昔は良い時代だった」と。
俺はその昔をよく知らないが、
おそらく今よりは良い時代だろう。

ノストラダムスの予言通り、
この地球が滅びてしまえばいい
そしたらみんなハッピーじゃないか。
・・・俺は憂うことばかりの雑人だな。

公園のベンチが空いていないからブランコに座る。
コンビニで買ったマズいおにぎりを、一人でかじる。
ふと、空を見上げると、そこは青い世界。
俺が望んでいた、翳りない空が広がっていた。

俺は、この空に期待していいだろうか。
すると、一羽の青い鳥が飛んでいるのが見えた。
まるでサファイア色をした宝石みたいな輝き。
思わず、感嘆の声を漏らしてしまった。

昼飯を食べ終えて、再び空を見る。
俺は一人、考え事をする。

この先の未来、俺たちはどうなるだろう。
そしてこの先の未来で生まれてくる子供たちは、
いったい何を期待し、何を夢見るだろうか。
俺はそんな子供たちに、いったい何ができるだろうか。

俺ができることはただ一つ、希望を残すこと。
そのためにできることをやらなければ。
例えば、さっき飛んでいた青い鳥のように、
誰かを感動させる存在でありたい。

1997年8月29日。空が青かった。
だから俺はもう少しだけ生きることにした。

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