ボーダーラインを越えて『水無月の白昼夢』

雨水を浴びる海って、幻想的だね。
君もそう思う？　来て良かったね。
少し話でもしようか。どうせ、暇だし。

あの地平線の先に何があると思う？
え、アメリカだって？
そう。おそらくは、アメリカだろうね。

僕はアメリカンドリームって言葉が嫌いだ。
どうしてかって？
だって、僕はアメリカが嫌いだから。

どうしてアメリカに憧れるんだろう。理解できない。
君みたいなアメリカ好きには申し訳ないけど
僕はアメリカに良い印象を持ってないんだ。

だって、彼らは日本に原爆を落としたんだよ。
それはやっぱり、酷いことだよ。
まあ、昔の話だって言っちゃえば終わりだけどさ。

君はボーダーラインを越えてアメリカに行く？
アメリカが好きなら、行ってきたらいい。
え？　奇跡的に新日のアメリカ人に会えるかもって？

そうかそうか。君は僕にこんなことが言いたいのか。
たとえアメリカが原爆を落とした過去があっても、
今のアメリカ人は違うと。過去と現在は違うと。

それもそうだね。じゃあ、僕も越えた方がいいかな？
越えて、アメリカと交わった方がいいかな。
それでもやっぱり、好きになれないと思うけど。

でも、君の言う通りかもしれないね。人それぞれ。
アジア人をヘイトする酷いアメリカ人もいれば、
どんな人種でもハッピーにさせるアメリカ人もいる。

人それぞれ。そうだね。それをこの目で確かめるには
やっぱり行くしかないね。アメリカ。
僕らはどこかで、分かり合えるかな？

え、分かり合えないって？　それでも、認め合いたい。
そうかそうか。君は随分と大人なんだね。感心した。
なら、僕は安心して君についていけるよ。サンキュー。