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少年『ミスチルが聴こえる』




 灼熱のアスファルトを踏みしめながら、僕は君を追いかける。身体はすでに大人になってしまったから、すぐに息切れしてしまうが、それでも君を探さないといけない。
「どこへ行ったんだ?」


 君は突然、僕の前から姿を消した。置き手紙もなく、メールもなく、まるでいつの間にか販売終了した商品みたいにスッといなくなってしまった。
 僕にとって君が最愛の人であることは間違いなかった。だから意識的に君のそばで笑っていたのかもしれない。無口な僕を解してくれる存在だったから。


 僕の中にいる、少年。彼が君に会いたいと叫んでいる。ここで君を見つけることができなかったら、僕は、もはや。


 夕暮れ。君と出会うこともないまま、僕は途方に暮れていた。大切な存在を失うと、空が赤く染まることすら哀愁が漂っているように見えてしまい、泣きそうになった。
「ただいま」
 ただ今、君の声がした? 振り返ると、そこには何やら荷物を持った君がいた。
「どうしたの? ずいぶんと疲れているみたいだけど」
「いや、どこに行っていたんだよ。ずっと探していたんだ」
「私を?」
「うん」
 そして、僕の中の少年が一気に駆け出して、君を抱きしめた。
「え、悠くん?」
「ごめん、少しだけこのままでいさせてくれ」
 愛するべき人を愛す。夜が近づくにつれてこの街もまた、藍に染まっていく。

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