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アオマスの小説

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どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。
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#ショートショート

牧野エミの配信〜その後 『ふうふう』

 翌日の夕方に家に帰って来ると、母さんが台所でお雑煮を作っていました。 「お雑煮ってなん…

蒼乃真澄
7日前
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彼氏との会話 『ふうふう』

 僕はゲイです。自覚したのはかなり前(小学生だったはず)で、母さんに明かしたのも中学生の…

蒼乃真澄
8日前
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母との会話 『ふうふう』

「って話だよ。あんた、本当に覚えていないの?」  僕が買ってきたジムビームハイボールを飲…

蒼乃真澄
9日前
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あるハプニング 『ふうふう』

 これは僕が五歳の頃に経験した、ある『ハプニング』です。しかし、記憶が曖昧な部分は一部補…

蒼乃真澄
10日前
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パンケーキに塩を振る(小説)

「山ちゃんは甘党だね」  大学の食堂でショコラパンを食べていた俺に、同じ文学部の宮田エミ…

蒼乃真澄
1か月前
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沈黙の赤ワイン(小説)

「結婚してほしい」  僕がこの言葉を放つのは、これで三回目だった。一度目は横浜の海が一望…

蒼乃真澄
1か月前
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君がいる夏 (ミスチルが聴こえる)

   僕の好きな夏が終わってしまった。同時に、学校が始まってしまった。夕暮れも悲しくなる季節が来る。海を見ても虚しくなる季節が来る。冷たい風が吹き、寒くなるこれからが、僕は嫌いだ。 「何聴いてるの?」  放課後。君はイヤホンをした僕の肩を叩いて、訊く。 「言っても知らないよ、君は」  それでも君は僕を離さない。 「いいじゃん、教えてよ」  小さな子供みたいにせがむ君。仕方なく、僕は教える。 「『君がいた夏』」 「『君がいた夏』? 誰の曲?」 「Mr.Child

『犬みたいな名前の食べ物』(ショートショート)

 ガラパコス携帯に、一通のメールが来た。 『今日バイトサボったから。これからそっち行く!…

蒼乃真澄
3か月前
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路地(ショートショート)

 一人、路地を歩く。何も考えず、ただひたすらに。  一匹、猫が通る。彼もまた、何も考えず…

蒼乃真澄
3か月前
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箱庭の箱を壊す (ショートショート)

 僕が生きる世界は狭い。わずかな人間関係、インスタントばかりの偏食生活、趣味もダラダラYo…

蒼乃真澄
3か月前
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ご飯が炊けるまで、誰かの生活を覗く。 (ショートショート)

 米といでさ、水入れてさ、炊飯器の中にセットしてさ、『白米』のボタン押してご飯を炊くのよ…

蒼乃真澄
3か月前
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小説の中で君と生活する『転がる石』

 冬のあるとき、僕は教室の隅で小説を書いていた。    すると君は「何を書いているの?」と…

蒼乃真澄
4か月前
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喜ばしい出来事を、このメモ帳に書き留めよう。『転がる石』

 二月一日、晴れ。夢都と散歩中、道路に転がった空き缶を拾ってゴミ箱に捨てた。近くにいたお…

蒼乃真澄
4か月前
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終わりなきミルクレープ『転がる石』

「愛を重ねよう、君と僕の愛を」 「何を言っている? ミルクレープを食べ過ぎて、気が狂ったか?」 「気が狂ったか。いやいや、僕はもともとそういう人間だ」 「なら、おすすめの精神科を紹介するよ」 「ひどいこと言うね。僕は本気だ。僕は君が好きだ。君はどうだい?」 「その好きは、恋愛対象として? それとも、人として?」 「どっちも」 「前から変わり者だと思っていたけど、まさか」 「まさか僕がゲイとは思わなかった?」 「そうだね」 「君の悪い癖だ。君はすぐに決めつけ