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アオマスの小説

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どんな一面にも些細な物語が存在する。それを上手に掬って、鮮明に描いていく。文士を目指す蒼日向真澄によって紡がれる短編集です。
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2022年2月の記事一覧

君がいた夏 2 (短編小説)

 それから毎年、僕が海を訪れると、君は光の反対側にいる影のようにそっと姿を現して、その度…

蒼乃真澄
2年前
3

君がいた夏 1 (短編小説)

 菊月が訪れると、潮風を浴びながら単調に繰り返す波の音も遠のき、僕は東京へと戻っていく。…

蒼乃真澄
2年前
2

チョコレートランデブー(短編小説)

 勇気君、机に入れておいた手紙、気づいてくれたかな。今日の放課後、図書室の前の廊下で待っ…

蒼乃真澄
2年前
23

やさしさ (短編小説)

 君には、やさしさが詰まっている。ぎゅうぎゅうに、破裂しちゃうくらいに。僕はそんな君が好…

蒼乃真澄
2年前
6

鬼が豆を投げる(寸劇)

 俺は自分の運命を受け入れよう。これは仕方がない。世の中、我慢しなきゃいけないこともある…

蒼乃真澄
2年前
4

おいおい、老いぼれ爺さん(短編小説)

 無精髭。だが頭に毛はない。左手は麻薬注射でボロボロになった。右手だけはなんとか機能して…

蒼乃真澄
2年前
9

冷える心、騒がしいラジオ(短編小説)

 極寒の冬。僕は家の中で暖房をつけて、昼間のラジオをつけつつ、ハイライトを吸って我の自堕落っぷりを心の中で笑っている。外は雪が降り積もっていて、とてもじゃないが外へ出る気分にはなれない。仕事も臨時休業になり、近くのスーパーも閉まっているとネットには書いてあった。  僕が吐くタバコの煙と、誰かが吐く寒空の下息は、同じ白色をしている。濁りのないはずの、純白。だが、俺の方は随分と淀んだものになっている。君の白い肌には程遠い色をしている。  無気力の素面人間が、愛を紡ぐことはできない