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学び続ける学びのデザイン④ 諸行無常の文化共創

 高畠熱中小学校では例年夏から秋にかけて、生徒や地元の方を交えてのイベントを企画しています。これまでは運動会やお祭り、キャンプなどあれこれと行ってきました。今回はこれまでの取り組みを振り返りながら”文化的な行事”や”地域文化”とは何かについて改めて考えてみたいと思います。

前回の記事

地域文化の再生を・・

 そもそもの発端として高畠熱中小学校は2015年に旧時沢小学校の再生プロジェクトとしてスタートしたのですが、廃校再生と共に地域文化の再生をしようという話も出てきました。その中で一番センセーショナルな写真やお話が残っていたのが旧時沢小学校最後の運動会でした。
 そんな中で当時から「未来の運動会プロジェクト」を進められていた、江渡浩一郎先生、犬飼博士先生、米司隆明先生に高畠熱中小学校で講義を行っていただき2016年9月に「熱中運動会」の実現にこぎつけました。7歳から70歳まで地域内外、老若男女問わず、約100名の参加があり大変盛り上がりました。

IMGP0335[1].時沢小

時沢小学校最後の運動会にて地域のみんなで(全校生徒は14名)

2016年9月 第一回熱中大運動会

寄る年波には・・・

 運動会には地元の方もお招きして実現したのですが、そこまで旧時沢小学校学区の方々の参加は思ったほど多くはありませんでした。後から声を聴いてみると中々体動かして競い合うという事をやる気にならないようで、実は昔お祭りもやっていてそっちの方がいいのでは?というような話が地元の区長さんから上がりました。確かにそれもそのはずで20~40代の体動かしたい世代は子供たちと一緒に学校の運動会があるし、そもそも暮らしの拠点をもっと便利の良いところに移しています。
 そこで全国でお祭りのプロデュースや支援をされている(株)オマツリジャパンの山本陽平先生のお越しいただき、2017年9月には「熱中ぶどうまつり」が実現しました。昔地元の取り組みとしてやられていたという時沢音頭やまびこ太鼓の復活などを交えてより地域性が出る取り組みとなりました。最後には地域内外交えて公民館で飲み会をしたのがとてもいい交流の場と感じました。

継続的な取り組みとして・・・

 翌年はまた運動会もやりたいという話が上がり、じゃ交互にやるのはどうだろうという事で、2018年には「第二回熱中大運動会」、2019年には「第二回熱中ぶどうまつり」が行いました。多少のマンネリ化もありながら、地域内外の人が集う文化的行事としてアップデートしながら継続してきました。
 2020年はまた新しい形で作って遊べる運動会を高畠で広げていこうと取り組みを相談していました。しかしながら、2020年の年初からは新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、色々と予定や想定が変わっていきました。

2018年9月 第2回熱中大運動会

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2019年9月 第2回熱中ぶどうまつり ぶどうのピザやスムージーを出す喫茶

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2019年9月 第2回熱中ぶどうまつり 高岡熱中小学校とコラボで獅子舞を体験

コロナ禍を経て・・・

 2020年の4月からは取り組み全体がオンラインを用いた活動になりました。配信機材やスキルなど生徒の皆さんと磨いていくと共に、オンライン運動会などもアイディアとして上がりましたが、地域内外、老若男女問わず楽しめる取り組みにはならないだろうという発想から運動会自体中止になりました。しかしながらお祭りの取り組みを経て、地元有志の「時沢お祭り実行委員会」が発足していたので、せっかくだから何かやろうという事で地区のみなさんに芋煮を作ってふるまうテイクアウト芋煮会を実施しました。
 2021年9月には野外のイベントなら大丈夫だろうという事で、グラウンドでのキャンプイベントを実施しました。農業高校の理事であり尖がった取り組みを仕掛け続けている飯尾裕光先生をお招きして、自社農場から骨付きの熟成肉と高畠の農家さんから鶏を2羽まるまる捌いていただくBBQ、テントサウナでととのい体験、グラウンドのコオロギも焼いて食べ始める人もいたり、ワイルドで贅沢な取り組みになりました。その場の”ノリ”を大事にする飯尾先生流にいえばカッパ的な会でした。この年もテイクアウト芋煮会は地元の有志で引き続き行っていました。

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2021年9月BBQイベントの様子

大分落ち着いてきたけれど・・・

 さて2022年になって今年はどうする?という話が上がりました、ここ数年で実感したのは、文化的な行事は積み重なっていった時には積み重なっていいた理由が、やらなくなった時にはやらなくなったなりの理由がちゃんとあるなという事。これは個人個人の気持ちの問題というより単に人の数や地勢的な話が実は大きいと思います。
 かといってなんの集まりもないところには文化も何も生まれやしないので、でやっぱり大事だなと思うのは「集まってなんかやろう」そんなノリのような気持ちを増幅することかなという事、あたかも少ない資源で火をおこすように。そこで今期の取り組みはまず集まる皆さんの「本当に実現したいこと」を発表してみて、それを元に何やるか決めようという事で進めてきました。

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今一番実現したいことを発表してもらいました。

実現したいことを元にした取り組みの調整

 ただし一つの企画で「本当に実現したいこと」を実行する企画を決めようとすると、あまりにも混雑するし、まとまりのない取り組みになりそうだし、そもそも実現不可能なので、最後に大事になるのは「”なんとなく”、”おもしろそう”」といったその場の”ノリ”かなと改めて感じるところで、ちょっとイケてる感じに言えば”グルーヴ感”的な事かなと。
 一人一人が追い求めている事を共有した上で、その場のノリを大事に文化を創っていくというのが心地いい感覚に思えています。で、その後あれこれとみんなで相談した結果いくつかのブースを設けて展示や体験を行う「熱中万博」という企画を9月18日(日)に実現すべく取り組みを続けています。

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取り組み企画中、乞うご期待ください。

改めて考える地域文化について

 さて今に至る話をまとめたところで、地域文化について改めて考えてみたいと思います。取り組みを重ねる上で実感したことは、地域の運動会やお祭りといった”文化的行事”の歴史も調べてみれば数十年くらいの積み重ねであり、実際のところその中身も時々で変わってきているという事です。そう考えた時に今一番失われているのは新しい文化を創るという先端的な発想ではないかと考えます、そしてそのやり方というのはこれまで高畠熱中小学校でなんとなくやってきたことだったなと。
 新しい文化を創るその肝というのはその時々でその地に集まった人のノリや気分でやった事を紡いで実現する事ではないかと考えています。あとからその物語を紡いだときその地の文化が形づくられていくのでしょう。こうして書き連ねているのもある意味文化の伝承なのかもしれません。

縁起ドリブンな取り組みづくり

 ある特定の時間と場所に集まったノリで何かを起こすという発想はまさに”縁起”だなと思っていて、これは「縁起ドリブン」な企画づくりだなと捉えています。ただし「縁起ドリブン」な取り組みを作るために調整役というのが必須でその場の”ノリ”をどうおもしろおかしく繋いでいくか「縁起コーディネータ」的な役割の人が重要というのも見えてきました。
 そしてこの手法と発想を「諸行無常の文化共創」という名前で捉えています。移り変わりの激しく、熱しやすく冷めやすい、そんな現代社会における文化を0ベースで考え直す発想です。また人と人の距離感がこれからより疎になっていく地域社会ではこの無常感の中で文化を紡ぐ事は特に重要になっていくと感じます。

縁起ドリブンとwishドリブン

 当然その場のノリでやる事では自身の想いを叶えられない事も多いと思うので、個々の想いから生まれる(wishドリブン)取り組みは勝手にドンドン進めてもらって、それをみんなであーだこーだと取り上げながら応援できるような関係性がいいんだろうなと考えます。改めてこういう整理をすると東洋的な発想(縁起)と西洋的な発想(ヒューマニズム)が合わさってて面白いなと感じてます。

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根幹にある発想をまとめてみました。

諸行無常の文化共創のやりかた

 1、なんかやろうぜという人があつまる
  1.5、今それぞれが「本当に実現したいこと」を共有してみる
 (1.5は可能であれば時間をかけて話してみる、まずはカットしてもOK)
 2、”なんとなく”、”おもしろそう”、”やってみたい”という物事を書き出す
 3、書き出した物事を整理し、それはつまりどういうことか名前を付ける
 4、実現に向けてまとめ役を中心に進めていく

 2~3の部分のアイディア出しとグルーピングはKJ法でのワークショップがよさそうだけれど、そこまで大きな取り組みでもないとか、やってもやんなくてもいいなんて時は、お茶会でも飲み会でもできるはず。
 もう一つ大事な観点はなんかやろうぜという人が集まらなかった時や、実現したいと思えるほどまとまらなかった時、それは一つ辞め時なのかもしれないし、ご縁がないかもしれない、縁起を大事にするこのプロセスにおいては”絶対にやらなくてはならない”という発想に固執しないのが重要です。

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色々試した結果、KJ法を用いてまとめていくのが効率がよさそう

 なんとなくおもしろそうな事を書き出した結果、もしかすると伝統的な取り組みに近いと感じる事もあるかと思います。そういう時は満を持して過去の文化を継承して少しアップデートすればいいと思いますし、あまりにもかけ離れていたら一度ご破算にして全く新しい名前を付けて企画を実現して行ったらいいのではないかとそんな風に思います。あとはコーディネーター役が重要なのですが、この「なんとなく、おもしろそう」といったみんなのノリを紡いでいく人に限っては、その場の”ノリ”をある程度俯瞰的にとらえたり熱量を上げていったりするキャラやファシリテーションのセンスとスキルを磨いていく必要があるかもしれません。

無常感を感じながらワクワクする未来を

 地域の行事というのも色んな取り組みが残っていてそれをどうしていくべきか悩ましい事も多いと感じます。そんなときともかく0ベースで”なんかやろう”という気分の人たちが心地よく関われる取り組みを考えて、それを実現し続けていく事が、改めて地域文化というものを繋いでいく上で重要ではないかと考えています。
 あとはなるべく自然な”集まり”を元にやっていく事が大事で、無理して”集まる”という行為は避けるべきかと思います。よく考えれば当然の事なのですが”集める事”が目的になっている取り組みも結構あるなと感じるところで、自然と集まったコアな人たちが本気で面白いと思ってやる事であれば無理せず人が少しずつ集まってくるだろうと考えます。リソースや資金のかけ方についてもこの発想が重要かもしれません。この辺は次回書いてみようと思います。
 キーワードは「なんとなく、おもろそう」、改めて言ってみれば誰しもが普段から行っているであろう選択の根源的な発想ですが、集団的な選択の最適もそういった発想が根源にあるほうがよいと考えています。そんな無常感の中で、0ベースのユニークな取り組みを一緒に作っていくのが楽しいなと感じる今日この頃です。

高畠熱中小学校HP 第15期生徒も募集中です!

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