博多の新生代ラーメン竜骨ラーメンとは何なのか
皆さん、博多と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?ラーメン、そう、豚骨ラーメンが思い浮かぶはずです。
福岡といえばトンコツラーメン。白濁したスープにネギ、チャーシューとキクラゲを浮かべ、細麺とともに味わう一品です。豚の骨をじっくりと時間をかけて煮込み抽出したスープは濃厚で、その虜になる方々は多くあります。
ですが現在博多、いえ、福岡全域でラーメン市場に異変が生じていることをご存じでしょうか。
家系や二郎系の進出?醤油や塩、あるいは味噌の台頭?まぜそばや油そば、冷やし中華が幅を利かせているのでしょうか?
違います。それは竜骨ラーメンの出現です。竜骨ラーメンが今、博多はおろか福岡全域、九州でアツいのです。
竜骨ラーメンって何?美味いの?という皆さん!あなた方は幸運です。この記事を通じてあなた方は竜骨ラーメンを学ぶことができるのです。
竜骨麺って何?
竜骨ラーメンとは、現在九州全域を席巻する新世代のラーメンです。龍の名を関する通り、過去のラーメンを超越する究極の支配者ラーメンです。また、ドラゴンは海と陸、そして空を支配する存在ですので、陸海空の材料を用いた完璧なパーフェクトドラゴンラーメンなのです。
竜骨麺をは過去における福岡のトンことラーメンとは全く異なっているため、お召し上がりの際は注意が必要です。何が違うって?すべてが違っています。
第一に麺!博多の豚骨ラーメンは概ねの場合細麺のやや固めに茹でられています。これは博多っ子のせっかちさを勘案し、早めに提供できるようにと工夫を果たした結果だとされています。しかし考えてもごらんなさい、麺は小麦粉からできています。生の小麦粉を人間は消化できますか?できないでしょう。もっともらしく偉そうにバリカタだの湯気通しだの頼んでいる博多っ子は、後日お手洗いで苦しんでいるのです。しかし竜ラーメンではそういう事実はありません。替え玉含めて安全安心な状態で提供されます。
さて、続いて既存の九州ラーメンと竜骨麺の違いです。第二の違いは具が違います。博多のポーク麺におきましては、具といえばチャーシューとネギとキクラゲとゴマがめいんでありました。しかし竜ラーメンは異なります。竜骨ラーメンにおいて具は添え物でしかなく、麺とスープの組み合わせを楽しむために存在しています。ですがいずれも本物を使用しており、添え物に過ぎないと妥協することはありません。店によって具は変わりますが、いずれも本気で挑んでおり、竜骨麺の顔ともいえる存在へと昇華されています。例えばある店舗ではカウンターからも見える位置に飾られた吊るしチャーシューから包丁で少しずつ削り落として丼へと盛り付けます。気合の掛け声ととともに吊るしチャーシューを削る様子はもはや店の名物です。既存の九州ラーメンにおいてそのような工夫を凝らしているところはありません。ただ麺とスープの添え物に過ぎない決まり切ったものを乗せている。竜骨ラーメンは本物です。
最後に既存の豚骨ラーメンと龍麺の違いですが、スープです。あなた方は豚骨ラーメンのスープの作り方はご存じでしょうか。そう、豚の骨を煮だします。店舗によって使用する部位や煮込む時間、温度、共に煮込む具材などは異なってきます。しかし、豚の骨を使用するという点では変わりありません。この共通した素材を使用するというものが、一定のジャンルを形成していることですね。
竜骨麺においては、スープの材料は様々です。九州といえばトンコツ、という固定概念を覆すように様々な材料が使用されます。陸の材料はもちろん、魚介や鳥、野菜など様々です。それはまるでフレンチのコンソメにもたとえられますが、一部の竜ラーメン提供店の店主が過去にフレンチで働いていたことも一因かもしれません。過去の経験をもとに新たな味を作り出す。それこそが時代の革新かもしれませんね。素材や調理方法、器具や設備などが一定の物を使用することで、一定の味が出来上がる。伝統とも言うべきことです。しかし伝統は時として縛りともなります。発想や挑戦を阻み、予想される味を超えることはできません。ドラゴン麺においてはそれは違います。特定の技法や材料に縛られることなく、各店舗で少しずつ異なる新たな方法が独自に研究、開発されています。こうして竜骨麺は少しずつ馴染みある味へと定着していくのです。
龍骨麺食べたい!
ここまで読んで、皆さんも竜骨ラーメンが頂きたくなったのですね?では早速お店に行ってみましょう。とんとんとん。
「おい親父!ドラゴン!竜骨麺くれれ!」
残念、あなたは追い出されてしまいました。そう、竜骨ラーメンは20年代を代表する福岡の新世代ラーメンですが、提供店は未だ限られています。ですのでその辺の有象無象の店に入り込んだからと言って博多の新たな名物竜拉麺が食べられるとは限りません。竜骨拉麺提供店については、事前によく調査の上に赴く必要があります。基本的にはのれんを出しており、営業中といった看板を掲げているところが該当します。
今回はドラゴン拉麺提供店の一つである「胴羅剛運金愚」を紹介しましょう。
禁宮首領羅金。博多に店を構えるラーメン店です。西鉄沿線、駅から少し離れたビル街にひっそりとドラゴン王軒はのれんを掲げています。テーブル席はなく、カウンターだけの少人数精鋭の営業形態は博多でよく見られる店舗形式です。
龍亭の店主、渡辺さんにお話を伺いましょう。
--渡部さん、この度はありがとうございます。
「ええ、こちらもお話しいただきありがたいです」
--では早速本題に入りますが、渡邊さんにとって竜コツら麺とはなんでしょうか
「そこからですか?まあ、聞かれただけ答えますが、竜拉麺は新たな基本なんです」
--基本ですか?
「はい、醤油とか塩とかみたいに、全てのラーメンの基礎的な味わいの源に位置する新たな味だと思っております」
--なるほど、それほどまでに様々な工夫をしてるんですね。
「ええ、私にとってラーメンとは、素材と調理法の調和です」
--素材と調理法の調和?
「はい。素材とは即ち地産地消です。素材の味わいを引き出すのは、その素材の育った土地の水や他の素材です。生まれ育った土地の水に浸され、ゆっくりと熱を加えられることで味わいが引き出されます」
--昨今ではインターナショナルに様々な土地の調味料や素材を集める手法がよく見られているようですが
「確かに、そうやって簡易的に美味しい素材をかき集めてうま味を引き出そうという手はありますね。ですが竜麺は異なります。地産地消の基本理念に従い、スープづくりにおいてはこれとして据え置いた水を軸に、基本のうまみを産み出す肉と骨、野菜と香味野菜、塩と砂糖といった調味料を加えることで基本のスープを成します」
--なるほど!時間をかけて煮出すコンソメのようですね。
「いいえ、竜骨ラーメンはコンソメを超えています」
--ほう、大層な自信ですね
「ええ、竜骨拉麺においてはその素材を厳選し、各地から己の理想とするスープを形成するために調味を施す、そういったものです」
--へえ、でも実質的にそうやって凝った素材を出すのは、他の店舗や将来的な店の売り上げについて大変なのではないでしょうか。
「そうですね。確かに新たな博多の土地におけるインターナショナル拉麺の味が場所と店主によっていかようにでもブレるのは過ちではないかという説があります。その通りです。」
--なるほど、そういうことですね!
--そうして様々な材料の技法を思いつくということは、過去は様々な業種を渡り歩いたんですか?
「ふふふ、よく言われますが違います。自分はラーメン一筋二十年です。他の店ではありますが、ラーメンの修行をラーメン店で積み、ラーメンとは何なのかを学びました」
--なるほど、そうやってラーメンを学んだことですね
「ええ」
このように麺屋度螺具音の渡部さんは真剣にラーメンに向き合った結果、竜骨ラーメンを作り出すことができるようになったのです。ラーメンと向き合い、ラーメンを愛し、ラーメンに愛された男のなせる究極のラーメン。これこそがラーメン県、福岡県の誇るラーメン魂の持ち主でしょう。
実録 これが竜らぅ麺だ
それではここからは、特別的に渡会さんのお店に伺いラーメンを召し上がるところを再現してみましょう。
福岡空港から地下鉄に揺られて数分、博多駅に直結した駅を降り地上に出る。日の光に目を細めながら線路沿いにのぼり方面へ進み、最初の踏切の角を右へと曲がる。そしてコンビニの角から路地へと入り、スナックの入る雑居ビルの三階に渡邊さんのお店はある。ごく普通のドアには小さく、「ドラゴン」とだけ書いてある。ここを目指す人だけを相手にした、最低限の看板だ。扉の前には三人ほどが並んでおり、ちらりとあなたの方に目を向けると視線を手元に落とした。あなたは四人目として行列の最後に並び、しばし待つ。一人、また一人と扉の内に来ていく中、ついにあなたの番が来た。ノック三回、間をおいて二回、さらにもう一回繰り返してドアを開くと、威勢の良い声が響く。
「アラッサーイ!」
『ようこそいらっしゃいませ』を意味する歓迎語の最上表現である博多弁があなたを迎えるはずだ。弩螺権の店は小規模で、席が四つのカウンターだけだ。あなたは空いている席に向かい、腰を下ろす。すると渡鍋さんがお冷を運んでこう聞く。
「何にしますか?」
「龍骨ラーメン!」
あなたは秒を置かず答えるだろう。そのはず。あなたはこのためにやってきたのだ。
「ドラゴン一丁!」
「ドラゴン!」
「ドラゴン!」
あなたの注文に店内では注文内容を意味する特別な符丁が幾度も繰り返される。その内容がわからずとも、概ねあなた注文した竜骨ラーメンであることはわかる。無論掛け声だけでなく、カウンターの向こうでは早速麺を鍋に放り、温められた丼を取り出し、たれを注ぎ、具の準備が手際よく進められている。一糸乱れぬスタッフたちの動きは、それが幾度も繰り返され無駄を削り最適化されていることがよくわかる。竜骨麺の歴史は短いとされるが、少なくともこの店においてはその歴史全てが積み重ねられており、そのすべてが彼らの身体に積み重なっているのだ。
「ドラゴン!」
「ドラゴン!」
「ドラゴン!」
最後に掛け声を繰り返してから盛り付けを済ませ、あなたの前に丼が出される。ほかほかと湯気を立てる奇跡の一杯、竜ラーメンだ。
あなたは箸を手に取ると、まずは麺をつまんで口に運ぼうとした。
「あ、待ってください。まずはスープからどうぞ」
そういいながら渡来さんはあなたに向けてスプーンを差し出した。
「まずはね、スープから味わってほしいんです。スープはもうね、この店というか、俺の全てなんです」
スプーンを受け取ったあなたに向けた店主の言葉は徐々に熱を帯びていく。
「スープがね、子の全てなんです。スープをまずはね、純粋に味わってほしいんですよ。うちはね、本気でやってるんです!舐められたら終わりなんですよ!わからないんですか!!」
情熱に満ちた雄弁な渡胃さんにあなたは圧倒されつつ、スプーンでスープを救って口に運んだ。あなたの口内にスープの味が広がる。金属製の冷えたスプーンにより掬われた一口は、程よく温度が下がりリアルな味をあなたに伝えてくれる。いきなり麺から啜っていたら、おそらくは感じることができなかっただろう味にあなたは思わずため息をつくだろう。
そう、これこそが博多の新しい味、ドラゴン骨麺なのだ。
麺を啜り、スープを口に運び、時折具をつまむ。初めての味ではあるが、繰り返されるうちにある種のパターンがあなたの内に芽生えているだろう。半ば体に染みついた流れ作業のように、繰り返し繰り返し、順番に口へと箸を、スプーンを動かす動き。その繰り返しがあなたの喜びとなっているはずだ。そして最後に丼を抱え、一滴残らずスープを喉へと注ぎ込んでから、ようやくあなたは一息つける。満腹感と充足感が、恍惚とした感情をあなたにもたらす。
「いかがでしたでしょうか?」
いくらか落ち着いたところで、渡貫さんがあなたに話しかける。どうやら今日はあなたの他に客はなく、すこしだけやり取りできる時間があるようだ。あなたは素直な感想を口にした。すると渡さんはにっこりと微笑んで頷いた。
「そうでしょう。色々と工夫していますからね」
そうして竜骨ラメンについて並べ立て始める。各地から厳選した材料を組み合わせたスープや、自家製麺に用いる小麦について滔々と語るその口調には熱が宿っていた。店内に籠る、寸胴から発せられる熱を上回る情熱が宿っていた。
そしてあなたは、ふと気が付いてとある疑問を口にした。なぜ、渡川さんは竜骨らぁめんを作るようにしたのだろうか。
「実はですね、恥ずかしながらその昔…少し、ヤンチャをしていまして」
そういいながら彼が指し示したのは、壁に貼られた写真だった。停車した大型バイクの前に、ある種統一感のある衣服に身を包んだ若者が並んでいる。列の中央で上半身を晒し、背中に入った聖ゲオルギウスの竜討伐をモチーフにしたと思しきタトゥーを誇示しながら振り返っているのは、渡谷さんだ。
「仲間内で走り屋のまねごとをしており、原付で付いて回ってました。ある日、いつものように走り回ってから帰る前に、24時間営業のラーメン屋を見つけてそこに入ったんですよ。そしたらそいつがうまくてうまくて…それで、俺のやりたいことが決まったんです」
渡来さんは懐かし気に目を細め、写真から目を離した。
「その日の内にチームを解散して、ごねるやつは二発ずつコツン、とやってから別れました。そして外見を整えて店に行ったんです。バイトで入り込んでラーメン作りを勉強させてもらおうと思ったんですが、バイトは募集してないと追い返されまして」
苦笑いを挟んでから、彼は続ける。
「それならば何でもやってやろう、と思って飲食店のバイトを始めました。ええ、いろいろとやりました。ラーメン屋だけじゃなく、中華もイタリアンもフレンチも…いろんな店で経験を積みました。そうやって飲食のイロハを積みつつ、ラーメン屋に通って味を覚えていきました」
そして経験を積んだ果てに、自分の店を開くに至ったということだろうか。
「ラーメン一筋の二十年でした。あっという間だったように感じますが、こうして振り返るといろいろありましたね」
もう少し語り合いたいところであったが、扉が唐突に開いた。客が入ってきたのだ。店の繁盛を邪魔するものは客ではない。私は席を立ち、会計を行った。
麺屋銅鑼権は各種電子マネー利用可能で、現金会計の際は20%の手数料が上乗せされるというキャッシュレス時代の最先端を行く最先端店舗だ。私は電子マネーでの支払いの準備をしながら、レジの傍らに置かれた本に気が付いた。
「竜骨ラーメン創世記」
「お前たちも俺のように龍麺を作れ」
「おれがドラゴンだ」
いずれも著者は渡倍さん。聞くと自伝と回顧録だという。一冊二千五百円。三冊セットならば七千円。さらに電子マネー支払いならば七千円のままラーメンが一杯無料になるという。
自伝が手に入る上にラーメンが無料になる。そして五千円以上から可能になる電子マネーでの支払い条件も満たせる。私は三冊の書籍を手に入れたうえ、ラーメンをただでおごってもらうことにした。
店を後にするとすがすがしい空気が私を迎えてくれた。熱い龍骨ラーメンをすすり、思いのほか火照っていた身体が気持ちよく冷える。
待ちの喧騒へと足を踏み入れながら、来た道を戻っていく。この後どうするかは、あなたの自由だ。
まとめ(ラーメンだけに笑)
いかがだっただろうか。リュウコツラーメンはこのように時代の最先端を行く新たな時代のシンボルとなる未来のラーメンであることがよく分かっただろう。材料、技法、工程、味わい。それらすべてが旧来のラーメンとは異なる新進気鋭のラーメンであることです。是非あなた方も福岡を訪れ、新しい時代のラーメン、龍ラメンを食べることにしよう。
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