思いを込めろ!心を込めろ!
タイトルは乱暴になってしまったが、
これは「 字 」に関する内容。
私はどちらかと言えば
「字が綺麗」に分類される人間であろう。
私の取り柄と言ったらそれくらいのものだ。
これまで色んな場面で
「ましろさんって字が綺麗だよね。
習字やってたの?」
と散々質問されてきたが、
私は習字教室を3日で辞めた。
習字教室は6人くらいの閉鎖空間で、
しかもその先生はメチャメチャ怖かった。
怖い、おばあさんだった。
そういうわけで、
怖いおばあさん先生とあの閉鎖空間に居たくなくて、習字教室をたった3日で去った。
母はよく私にこう言った。
「小学校の時の担任の先生が、
3人とも字が綺麗で、本当に良かった!
特に1,2年生の時の○○先生のおかげだね!」
確かに私の担任の先生たちは、
みんな字が綺麗だった。
ただ、この字によって少し悩んだこともある。
私の字は…プリクラには向かない。
今考えるとバカバカしいが、
プリクラの落書きには、綺麗な字より、
丸文字だったり、特徴のある字の方がいいと
学生時代ずっと思っていた。
だが、字が綺麗なことでプリクラ以外は
そこまで損は見当たらない。
男性で字が綺麗だと「おっ」と思うし、
字が綺麗なだけでちょっとした手紙も
ものすごく心がこもっているように感じる。
その一方で、
謝罪の手紙が汚い字で書かれていると、
いくら少し長かったとしても、
「この人、心こもってないな」
と余計に不快な気持ちになる。
実際にこんな経験がある。
数年前、とある花屋で、
母の日に贈る素敵なあじさいを注文し、
それと一緒に、
用意していたメッセージカードを付けて
配送してほしい、
と、かなり日数に余裕を持ってお願いした。
店員さんはもちろん了承してくれた。
そして母の日当日。
母からお礼のメールが届いた。
無事届いたんだな、と安心していたら、
数日後花屋さんから電話がかかってきた。
配送伝票に書いた電話番号を見たのだろう。
「メッセージカードを群馬のお客様のところに
間違って付けて送ってしまいました。
メッセージカードだけ群馬からお店に送って
もらって、再度宛先にお送りしますか?」
…は?
まずは謝罪をすべきだと思った。
そして、
かなりプライベートなことを書いていたこともあって、そのメッセージを他の人に見られたことにも最悪だと絶望した。
メッセージカードだけ送るかと提案されたが、
ミニサイズのカードだけを送って
何の意味があろうか。
母の日に便乗して、
花に添えて言える、
そんな言葉もある。
私はその必要はないので、
メッセージカードは破棄してください。
と花屋に伝えた。
この一連の流れを母に連絡した。
母はこう言った。
「やっぱりおかしいと思った。
ましろは必ずどんな贈り物にもメッセージを
書いてくれるのに、何もなかったから。」
その声は、どこか寂しげだった…
それから数週間後、突然宅配便が届いた。
宛名は思いもしなかった、あの花屋だった。
中身はお菓子のようだ。
それと共に封筒にも入っていない手紙が
一枚添えられていた。
ものすごい汚い字で。
殴り書きでもしたかのような。
誤字も修正液を使うでもなく、
上から無理矢理二度書きしてあった。
申し訳ありません。お詫びです。
的な内容だったかと思う。
私はその手紙を、即、捨てた。
あんなに心のこもっていない手紙をもらったのは初めてだった。
ただただ怒りしかなかった。
もしかしたら
店員さんは自分なりの、
精一杯の綺麗で、丁寧な字で
書いたかもしれない。
本当に申し訳ない、
と思っていたのかもしれない。
でもその手紙からは、
その思い、気持ちは全く感じられなかった。
汚い字は損をする。
いくら絶世の美女でも、
どんなイケメンだとしても、
知識豊富で聡明でも。
汚い字は相手をがっかりもさせるだろう。
素敵なプレゼントをもらったのに、
カードに並ぶ文字が乱雑だったら、
どんなにがっかりするだろう。
ただ、私がここで本当に言いたいのは
単純に"汚い字が嫌い"ということではない。
そこに心がこもっているか。
自分の正直な、素直な思いや気持ちを
きちんと相手に伝えたいと思えば、
自然と字は、
綺麗になる。
というか、丁寧になる。
ちゃんと字だけでも伝わってくる。
最近も
辞めた職場のオーナーから
心のこもっていない手紙が届いた。
どうやら思いの伝わらない、
本心ではないと受け取れる文字面は、
相当私をイライラさせるようだ。
どうして手紙一枚、丁寧に字を書けないんだ。
そんなに時間がないのか。
そんなに切羽詰ってるのか。
どうしてもっと字を大切に書かないのか。
どうして…どうして…
私も母同様に小学校の時の担任の先生たちに、
改めてここで感謝を伝えたいと思う。
先生たちがわざわざ時間をかけて
字を綺麗に丁寧に書くよう指導してくれたのは、
「そこに心を込めなさい」
ということだったんだ。
辞めた習字教室は恐怖体験しか記憶にないが、
習字そのものも心を落ち着けて、
一画一画を丁寧に書き上げる道である。
字を書くことが減っていく一方でも、
私はどんな小さなことでも
メッセージカードを欠かさない。
私の思いが、私の気持ちが、
きちんと相手に伝わるように。