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「触っちゃダメよ!」脳内母さん、現る!

こんな光景を見かけたことはないだろうか。

スーパーでは野菜を、
デパートでは服などの商品に触れようとする
小さな子どもに対して、
お母さんたちがこう言う姿を。

「こら!触っちゃダメでしょ!」

そんなに怒らなくてもいいのになぁ
といつも思っていたけど、

私は久しぶりに入った本屋で、
私に全く同じことを言う、
" 脳内母さん "と出会うことになる。


昨日、鈍ってる身体を動かすかね、
と立ち上がった私は、
トータル2時間の散歩に出かけた。

私の中で散歩という行為は
15分や30分程度のものではなく、
少なくて1時間の行為を指す。

歩くのも食べるのも遅いらしい私の足では、
大体1時間ちょっとで
隣駅と家とを往復するくらいの感覚だ。

その道中、
久しぶりに開いている本屋を見つけた。

1週間ほど前に散歩した時は
今目の前にしているこの本屋は
開いていなかったように思う。

ちなみに地理的には、
自宅から隣駅に向かい、
そこからさらに奥に位置している。

私は本屋に入ることにした。

いつぶりだろう。

久しぶりに
スーパーとコンビニと薬局以外に入った。

"本屋に入る"という、
ごく当たり前だったはずの日常が、
私に心躍る感覚を与えた。

私は「よし、今日は本を買おう」と決めた。

しかしある問題が脳内で発生する。


…触れない。

ちょっとタイトルが気になった本を手に取って、裏表紙のあらすじを読んでみたり、
最初の1、2ページを読んでみる。

そんないつもしていたことが
以前よりかなり、
いや相当ハードル高いものになっていた。

その時だった。
私は私の脳内母さんに出会ってしまった。

「触っちゃダメだからね!」

ひえぇ…


私の本選びは、前述した通り、
前評価を何かで確認してからではなく、
その場で気になったタイトルやPOPを見て、
読めそうな文章のリズムかを
ページを少しめくって確かめて…
というものだ。

その上で、

この本なら読めそう。
この本は読めなさそう。

という判断が下される。

つまり、触ることがどうしても必要なのだ。

だってレシピ本を買おうと思ったら
どんなレシピが載っているのか、
ちょっと確認してから買いたいでしょ!

買ってみたら、
全然手軽に作れない!
そんな調味料は我が家にゃないよ!
という料理ばかり載っていたら、
もう即座に箪笥の肥やしならぬ、
本棚の肥やしだ。

そういうわけで、
とにかく私は本の表紙と、タイトルと、
ちょこちょこ貼ってあるPOPとを
それぞれ睨みつつ、見つめつつ、
くまなく店内を巡る。

1フロアしかない、そこまで広くない店内。

他のお客さんとすれ違う時は
お先にどうぞと譲り合って、
身体がぶつからないように気を遣って、
店内を巡る。

普段から小説は食いつきやすいので
文庫本で何冊か購入する。

だが、今の私には脳内母さんがいる。

小説こそ触れたいのに…!

申し訳なさげに3冊ほど触れさせてもらったが、
どうやら今の私にはどれもしっくりこない。

脳内母さんが
「あんまり触らないの!」と言い出す前に、
小説コーナーからそそくさと撤退する。

新書は苦手意識がある。

自己啓発も今の私には合わない。

漫画は買い出したらキリがない。

雑誌は買わないようにしている。

困った…どうしよう…

もう一度小説コーナーに戻ろうか…

そんな時、ふと
可愛らしいイラストとタイトルが目に入る。

同じ著者の本を友人からも
勧められたことがある本だった。


キム・スヒョン 著
吉川 南 訳
『私は私のままでいきることにした』

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勧められた時にはそこまでしっくり来なかった本が、今の私にはしっくり来そうだ。

芝生に寝転ぶ女の子のゆるいイラストもいい。

母さん、これはきっと買う気がするよ。
触っていい?

「買うかもしれないなら見てみなさい」

私は一冊のその本を手に取り、
少しだけ確認して、
そのまま無人レジへと歩いて行った。


緊急事態宣言の一部解除が検討され、
明日5/14には発表される模様だ。

東京在住の私にはもう少し先の話のようだが、
どうやら今月末までには解除を検討している、
という報道もされている。

第二波や第三波への不安の声。
一部解除ではなく、時期を見計らって
全体でした方がいいという意見。
若いのに誰よりもしっかり先導を切っていると、
日々ニュースに引っ張りだこな大阪府知事。

新しい生活様式なるものへの違和感も持ちつつ、
きっとこのコロナが収束していく中で、
誰しもの中に
この" 脳内母さん "は出てくると思った。

「無闇矢鱈に物を触ってはいけないよ。」

「いくら帰ってから手洗いうがいを
 入念にするからと言って、
 それとこれとは別問題なのよ。」

なんでもネットショッピングを当たり前にできる人にとっては、もしかしたら変わらない日常を送れるかもしれない。

でも以前書いたことがあるように、
通販恐怖症の私にはそれが難しい。

今後私はこの脳内母さんと、
時にいがみ合い、葛藤し合いながら、
こうやって買い物しなければいけないのか…

そう思うと少しだけ億劫に感じながらも、

私は久しぶりに本屋に入ったことと
新しい本を手に入れたことへの高揚感を胸に、

散歩後半戦へと突入したのであった。

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