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23.ナイフ

僕のいつかの話をしようか

精一杯生きていて
それでも報われないこと
君にも一つくらいはあるだろう


帰り道のまだ途中に
僕はボロボロと泣けてきた

クソって何回も言いながら
ボロボロになった身体で
ボロボロと泣いた

そしたら止まらなくなって
はやく家に帰って崩れたいのに
カーブを曲がっている場合じゃないのに
無情にも赤信号が足止めする
それでも涙は止まらない

とめどなく溢れるから
前がみえなくなって
汚れた服で必死に拭った

命を削るように生きること
いつからだったんだろう

明日もみえなくなっていた


やっと帰ってこれたのに
明日が来ること
そのために眠らないといけないこと
追い討ちをかけるように
さっき吐き捨てられた言葉が
頭から離れなかった

予備に予備を詰め込んだ
重苦しい鞄は床に落とした
同時に口からは
本当に言うと思ってもいなかった言葉が

ああ
落ちる
涙も 鞄も 言葉も
重たく

いつからだったんだろう
僕は限界だった

落ちる

もういい


あの日
僕は一度死んだような気がする


これまでに
そんな日を何度か繰り返して

僕は生まれ変わっている
そんな気分だ


生きるとはそんなことなのか

未だにあの日の僕が報われることを
今の僕は
願っていると言うのに

僕は夢で抱きしめるんだ

あの日の僕は弱いから

だから僕は強くなるために
言葉という
ナイフを握ったんだよ

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