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本物って何。霧の向こう側?( 3分で読める詩、小説)

 本物が『良い』その本物って何だ。

 ドライフラワーと生花だと生花が本物か。けど、ドライフラワーも本物だ。存在しているから。生きているか否かという話か。

 物質ならば原子か。いや『今日の貴方は偽物っぽい』がある。物質以外の雰囲気か。ならば『雰囲気』や『感じ』の本物はどう証明するんだろう。

 わからない、いや分かる。けど、そうじゃない。

 中身が見えない、霧の向こう側には本物があるのか……それとも偽物か。そもそも何も無いのか。

 人々に求められるものは何だろう……きっと『本物っぽさ』であって嘘か本当かなんて関係ないのか。

「ローズさーん あの商品やっぱり売れ残っちゃった」

 話しかけられて、商品を表示されたパソコンから目を離して振り返るローズ。

「あらあら……そうね~、難しかったか」
「素材はうちの方が良いのに、なんで売れないんですかね?」
「まあ……色々見え方、感じ方、想像のさせかたが相手の会社の方が上手だったということね」

 成分はダントツで良いものに違いない。強いてデメリットを挙げるなら値段が高いことかもしれない。コストはどうしてもかかる。ライバル会社とは会社の大きさが天と地ほどの差があり、広報も大きく出来ない。

 ライバル会社の素材は良いとは言えない。同じ道を進むこちらからすれば70点だ。それでも結果を出した。素晴らしいことだと思う、悔しいけど。

「もうどうしたら良いんですか~無理ですよ~」
「仕事だからやらなくちゃならないでしょ。それに、ほぼ100点のこちらが悔しいでしょ。良いものをお客様に届けることが仕事よ」
「えー、でもどうするんですか。デザイン? サービス? 値段変更?」

 またですかと、彼女の顔は疲労感が横切る。

「私達は霧と戦っているのよ」
「霧?」
「初めて商品を見るとき、お客様は霧がかかって見えている状態よ。よく知らないモノだから警戒するのは当たり前よ」
「その霧を払拭するために説明ですね!」

 一筋の光を見つけたとばかりに瞳に輝きが蘇り、彼女は背筋を伸ばして立っているけど、一旦落ち着かせるため隣に座らせる。

「それは手に取ってもらってからよ。まずは、霧の手前に綺麗な透けるカーテンでお化粧するのよ。もっと話を聞きたいって興味を持ってもらわなきゃね」
「化粧! なるほど。よーしがんばるぞ!」

 まあ……これだけで勝てるとも思えないけど。彼女の元気が戻ったのならよかった。

 ここで船を止めるわけには行かない。もう出航しているのだから足掻くのだ。この広い海で。

 『本物っぽく』魅せて、霧の向こうに『良いもの』があったとしたら喜んでもらえるだろうか。

 商品企画の見直しを迫られ、統括している私、ローズは頭がパンクしそうになる。今は港で一時停泊していたわけで……そろそろ重い腰をあげて悩みながら進もうと思う。

 霧がかかる空を眺めて、『帆を上げ、出航!』と心で叫んだ。

End.


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