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【連載3話】妖怪コハクとAIマキナ Call Sign

あらすじ
妖怪とアンドロイド、正反対の二人が最強の相棒となり、悪を蹴散らす旅が始まる。
ジャンル・SFファンタジーバトル

【第3話 出発】

「──っマキナさん」
「君は巻き込まれるタイプなんですね、台風の目かな」

 思わず尻餅をついた僕に、フライパンを持っていない方の手を差し出すマキナさん。

「そんな事言ってる場合じゃないんです! 人質が……」

 その場にそぐわないフライパンに目を奪われながらも、慌てて人質(妖怪たち)がいることを伝えた。

「──承知しています。君はそちらへ。私はここを何とかします」
「……はい!」

 マキナさんは既にスズメたちに呼ばれ向かっている途中に事情を聞いたため、指示が早い。

 感心しながら身体を起こして人質の元へ向かった。

「な、まさかこいつがアンドロイド!」
「退治屋の方ですよね? なぜ無意味な争いをするのですか」

 氷で出来た檻を狐火で燃やして中の妖怪を助けつつ、マキナの方を心配で見た琥珀。

「な、無意味だと!? 機械のくせに生意気な。我々は異形を消すんだ、それがこの世を正す──」
「裁判官のつもりですか? まあ私としては──」
「ぐっ」

 退治屋はフライパンを警戒していたが、マキナの華麗な蹴りで鳩尾を抑えていた。

「テミスの教えを忘れた者に、心置きなく沈められるので良かったです」
「つ、強い……」

 強気なマキナの発言に、怖気つく退治屋たち。しかし、退治屋は攻撃と共に縄を混ぜてその隙に杖を投げた。

「これならっ」

 すぐ氷と炎の欠片が飛んで、混じる縄に気を取られたマキナは、森の木を利用して飛び上がってるものの杖に気づいていない──

「マキナさん後ろ!」
「──っ」

 琥珀の叫びで何とか回避し、腕のシャツが破れただけに留まった。

「……流石に今のは効きそうでしたよ。惜しかったですね」

 そう言って相手を気絶させると、流れるようにまだ戦っているタケの元へ向かい、フライパンと回し蹴りで倒した。

「くっ、アンドロイドのくせに何でそっち側なんだ……」
「なぜ不可解な行動を取る方につくと思うのか、不思議でなりません」

 文句を言いながら意識を保っている退治屋も含めて、先程の縄で縛っておくマキナとタケ。

「妖怪の方が不可解な生き物だろ!」
「だから行動と言って……もういいです」

 時間の無駄だと判断したのか、マキナはタケに残りの縄を渡すと途中で投げたフライパンを拾いに向かう。

「あのマキナさん……僕、あんまり役に立たなくてごめん」
「いいえ。さっきはありがとうございました。緑の方と戦う時も狐火でサポートしていたでしょう? 助かりましたよ」

 些細なサポートを分かってくれていて嬉しい琥珀は照れくさそうに、少し目を逸らして微笑みを返す。

「ところで、退治屋はなぜ……私も最初は妖怪という存在に驚きましたが害があるわけではないでしょう」
「うーん、なんでだろう。最近多くなった気がするよ」
「昔からあることなんですね」
「うん、悪さをした妖怪は退治されるよ」

 彼女に退治屋とはどういうものかを教えた琥珀は、彼女が首を傾げて指を顎へ添え、もう片方の手で支える動作をジッと伺った。

 なにやら「私のデータにある童話でもそんな感じですね、鬼退治とか……ふむ」など呟いている。

「まあ、昔と違って妖怪の数も減ったからな。商売あがったりで、適当に狩ってるんじゃないか」

 答えたのは琥珀ではなくタケで、さっき渡した縄はしっかり大木に退治屋を巻きつけていた。

「なるほど……あ、私は生活用アンドロイドの──」
「ああ、マキナさんだろ。琥珀から聞いた。俺は竹の妖怪タケだ、よろしくな」
「竹の妖怪でタケ……非常に分かりやすいですね」
「──バカにしてんのか?」
「不快であればすみません。感心しておりました」
「……おもしれぇ。これがロボットか、いやアンドロイドだったな」

 淡々と話すマキナと警戒心が強いタケの間で、慌てた琥珀だったが最後の言葉で落ち着いた。

「みんなー大丈夫ー?」

 突然響く声に驚いて発生源を見ると、遠くから浮いて天を駆けてくる雅な着物の桜の妖怪だった。

 土地神や山神と古く親しい仲で、この地域では知らぬ者は居ない。

「あっ、ヨシノ様だ。我々は無事でございますー!」
「まあ、良かったわね。山神様が心配していたのよ、最近物騒だから」

 人質だった河童や瓜坊、兎などの妖怪たちは抱きしめ喜びを勝ち合い、桜の妖怪に嬉々として報告した。

「タケと琥珀くんも元気ー?」
「はい! あっ、こちらはマ──」
「久しぶりねマキナ」

 桜色の美しくウェーブした長い髪を靡かせ、肩と足の露出があるヨシノ様はマキナさんを紹介しようとしたら、もう知り合いだった。

 この時の僕は、まるで子供が一番初めに見つけたはずのものが、自分じゃなかった時のように、少しばかり傷ついて沈黙していた。

「……お久しぶりですね、相変わらずお元気そうで」
「何よー、ちょっと嫌そうな顔しないでよ」
「──挨拶というわけではないのでしょう?」
「そうよ。様子見半分、半分は依頼しに来たのよ。山神様より退治屋の過ぎた行動の理由を探し、妖怪を助けよと」
「えっどういうことですか」

 依頼と聞き、詳しく聞くことにした琥珀。

「あのね──」と話し始めたヨシノ様の話はこうだ。

 最近、良い妖怪たちまで退治屋に狩られているため、理由を探し、妖怪を助けてほしい。

 そして前回琥珀を助け、人間界に詳しく人間に組みしないマキナが適任と判断した。タケもこの土地に詳しいから一緒に連れて行ってほしいとのことだった。

「待って、僕はマキナさんと旅するって約束したから! 僕も行く」
「嘘だろ最悪だ……くそ、山神様には逆らえない」
「はい? 私はまだ依頼を受けるとも返事していないのですが」

 三者三様の動揺をよそに、ヨシノは「良いことじゃない。みんなで調査しましょー!」とやる気だ。

「な、なんとアンドロイドが我らの味方に!? 心強し」
「これが噂の琥珀を救ったアンドロイドか〜ありがとう! 応援するよ」

 助けられた妖怪たちは、マキナの膝下に賑やかに集まりマキナの手を引いては、そう礼を言った。

「僕も妖怪たちを救えるなら、お手伝いします。ね、マキナさんもお願い!」

 断る気を削がれ、琥珀の勢いに押され、最後はマキナもその話を受けることにした。

「じゃ、リーダーは琥珀くんね。あとはチーム名を決めるわ。『チーム掃除屋よ』」
「だ、ダサいな」
「タケは黙ってて! いいのよ。さ、出発しましょ琥珀くん」
「はいっ」

 ヨシノの勢いに乗せられてはいるが、琥珀も旅をしたい気も合間って、この日結成されたチーム。

 ……旅の始まりは突然で、思い返せば僕にとっても忘れられない旅となった日だった。

──つづく。

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