『夜明けのすべて』
初めての読み心地だった。
『夜明けのすべて』瀬尾まいこ
職場の人たちの理解に助けられながらも、月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない美紗は、やる気がないように見える、転職してきたばかりの山添君に当たってしまう。山添君は、パニック障害になり、生きがいも気力も失っていた。互いに友情も恋も感じてないけれど、おせっかい者同士の二人は、自分の病気は治せなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる―。生きるのが少し楽になる、心に優しい物語。(Amazonより)
去年読み始めて一番読みまくったであろう瀬尾まいこの最新作。
PMS(月経前症候群)とパニック障害をそれぞれ抱えている男女の物語。
こういう悩みや苦しみを抱えた人の社会との関わり方って、その当事者と周囲の人の接し方っていう構図が多いイメージだったけど、この物語では同じようにそれぞれ苦しんでいる二人が、なんだかんだ言いながらお互いを気にかけて補完しあっていくような展開。そして職場など周囲の人がとにかく他者への思いやりや気遣いに溢れていて、優しい世界で二人を支えてくれている。
劇的な快復があって改善したりは決してなく、他人事になるけどうまく付き合っていくしかないように思えることに、二人がどのように折り合いをつけ向き合っていくのか、その過程を追体験しているようでどんどんページが進む。
作者特有の心地いい世界観は相変わらずながら、何かをすぐに分かったり、決定的な一文がで出てくるわけではなく、二人にしか気づけないような光を少しずつ手繰っていくような作品。読み込むほどに二人への印象や思いが変わっていく気がする。
帯にもあるように、「夜明けの直前が一番暗い」ってまさにそのとおりで、どん底を自身で認識した先に救いが少しずつ表れていくような希望な物語。
関係はないけど、ZORNの『Brand New Day』の
お先真っ暗出口見っかんない でも夜明け前ってのが一番暗い
ってリリックを思い出した。
こだまの『夫のちんぼが入らない』とか『ここは、おしまいの地』とか好きな人にオススメ。
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