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恋のお墓をつくりましょう

「普段、家ではタバコを吸わないから、外で吸うときは重いやつを吸う。体に悪いことばっかりしてるよ、俺」

知らないパッケージのタバコの箱から取り出したタバコの煙を吐き出し、うつむきながらただ微笑んだ人を、わたしはずっと好きだった。


好きだという感覚は、錯覚に近いものだといつも思う。たった一瞬の笑顔で、たった一言で、心が動かされるとそれを恋だと思う。でもその先には幸福があるとは限らない。

その恋のようなものも、不毛すぎて何の形にもならなかった。自分ばかり心を燃やして、相手の無邪気な姿に嫉妬したり心を病んだりして、いつも自己嫌悪を重ねていた。

わたしの気持ちはいつもドロドロして、全く素敵なものなんかじゃなかった。

それでも好きだった。相手が何を思っているか知ることはできなくても、ひとつひとつの思い出を、わたしは心の中から捨て去ることなんてできない。


だから、恋のお墓をつくりましょう。


無理矢理あきらめるでもなく、玉砕しに行って自分を傷つけるでもなく、ただ記憶を大切に地面に埋めましょう。地面の中で眠る恋のことを時々思い出して胸が痛んだら、そっとお花を供えましょう。

恋のお墓に行けば、記憶の中の人に会うことができる。そっと手を合わせたら、眠っている恋も、自分も、きっと安らかな姿になっていくから。

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