やのまさ

実験を通して、ひとが言葉を理解・産出する仕組みを研究してます。

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最近の記事

言語運用(パフォーマンス)のゴミ箱としての扱いについて考える

こんにちは、やのです。 今日は、タイトルの意味を説明した後、個人的に好きな研究を二つ紹介したいと思います。 言語運用(パフォーマンス)のゴミ箱化まずは、ノーム・チョムスキーの有名な一節から始めていきます。 ここでは、言語の知識(competence)と言語の運用(performance)の間に(何らの意味で)根本的な区別をしましょう、ということを言っています。さらにこの本には次のような有名な主張があります。 「言語理論は、主として、全く等質的な言語社会における理想上の

    • なんだか読み直したくなる日本語

      こんにちは、やのまさです。今日はSNSで見つけた曖昧性の話をしたいと思います。一部は、わたしが担当している「心理言語学」(学部2年生向け)という講義で使用しているものです。 ここで言う曖昧性とは複数の異なる解釈(正確には統語構造ですが)を持つということで、「英語が話せる先生の息子」のように最後まで読んでも曖昧性が残る場合もありますが、心理言語学的により重要なのは、一時的な曖昧性です。一時的に曖昧な文は、最後まで読めば、意味的なもっともらしさなど何らかの情報に基づいて解釈をひ

      • 心理言語学の方法

        こんにちは、やのです。 今日は、言語学会の懇親会で「Advent Calendarやるけど、どう?」と声をかけて頂いたときに話していたことをブログにしたいと思います。(心理)言語学に本当に脳科学的手法は必要なんか?という話です。 簡単な自己紹介私の専門は、言語学の中でも「心理言語学」と呼ばれる分野で、主にことばの獲得・理解・産出・障害を研究する分野です。学際的な分野なので研究者によって関心事はばらばらなのですが、私個人は、ひとが言葉を理解したり話たりするときに、どのように

        • 吃音が自然治癒した子どもと持続した子どもの脳の話

          こんばんは、やのです。 今回は、以下の論文を非研究者向けに日本語で解説したいと思います。 脳の色んな場所の話が出てくるので、難しいです(すいません)。 吃音(きつおん)は、以下のような特徴を持つ発話障害のひとつです。 ・連発:ぼぼぼぼくは ・伸発:ぼーーーくは ・難発:・・・ぼくは  (参考:菊池良和, 2019. 吃音の合理的配慮. 学苑社) 発達性吃音は、幼児期に5%の割合で見られますが、その内、80%は、数年以内に自然治癒すると言われています(ただし、森, 2018で

        言語運用(パフォーマンス)のゴミ箱としての扱いについて考える

          発話以外に注意を向けると非流暢性が軽減した話。

          こんばんは、やのです。 ツイッターで、吃音に関する面白そうな(=個人的に結果が一見直感的でなかった)論文を見つけたので、非研究者向けに日本語で紹介したいと思います。 まず、吃音の主症状には以下のようなものがあります。 ・連発:ぼぼぼぼくは ・伸発:ぼーーーくは ・難発:・・・ぼくは  (参考:菊池良和, 2019. 吃音の合理的配慮. 学苑社) 今回紹介する研究のテーマは、「発話以外に注意を向けながら発話を行うと、このような特徴を持つ吃音にどのような影響があるか?」というこ

          発話以外に注意を向けると非流暢性が軽減した話。