タイでのエピソード・その76
以前も言ったが、紛れもなく今回は私にとって初の「タイ旅行」である。
私はバンコクに通しで4年弱ほど住んだが、旅行目的で行くのは初めてなのだ。
なので以前に比べ、また違うフィーリングがあるかと思った。
「住むぞ!」という決意とはまた違い、気楽な思いでバンコクを旅行できる…こんな日が来ることなど、あの時は全く想像してなかったからね。
友人カナヤンの都合上、予約が遅れてしまったのでタイ航空ではなく、今回は初めてピーチ航空を利用することになった。
余計な荷物はほぼ持っていかなかった。なので預かり荷物もなし。価格もピーチだけあって非常に安価。お手軽な選択肢だったが…
機体が小さいからか、そこそこ機内は揺れた。また、渡航時間も非常に選択が難しかった。
カナヤンはフライトの当日も仕事がある為、搭乗時刻は夜。そして到着するのは現地時間の23:55。
帰りの便も最終日の夜中に搭乗し、午前1時ころのフライトで、日本時間の朝9時ころに着。つまりは完全機内泊だ。
これで3泊4日だから…こうして振り返ってみると、なかなかにハードなスケジュールである。
彼がいつも私に「時間があって羨ましい」と言う意味が、なんとなく分かった。
確かに私は、幸せなのかもしれない。
私はその「時間」ってやつを持っているからこそ、カナヤンのスケジュールにも合わせる事ができたのだ。
そして無事、我々を運ぶ機体は、タイのスワンナプーム国際空港に到着した。
現在、タイに入国する際には入国カードの提出を求められない。係員に「まだ書いてないのでカード下さい」と言うと「No need」と言われた。
ふむ…どうやらコロナの件もあってか、イミグレの事情も大きく変わっているようだ。
入国審査をあっさり終え、私はゲートを潜った。
…?
あれ?
どうした、俺。久しぶりのタイ・バンコクだぞ。もう少し高揚したらどうだ。
7、8年前のあの胸の高鳴りはどこへ行った?自分でも驚くほど冷静で、むしろ関空にいる時と精神状態は変わらない。
季節的に気温が大阪とほぼ変わらないし、流石に4度目だから慣れたのだとは思ったが…今冷静になって振り返ると、過去3度の渡タイは「不安&見えない未来」しか背負っていなかったからな…。
しかし今は友人と共に、純粋に楽しむ為だけにここにいる。この差は大きい。
新しい所に着いた時の高揚感&ドキドキ感の正体…それって実は「期待と不安」だったりするのかもしれない。特に「不安」。これがないとドキドキもクソもあったもんじゃない。皆「不安」を嫌うが、これを避け続ける人生に、一体どれほどの価値があろうか。
私は私なりに、自ら「不安」の渦に飛び込んできた。
下手くそなりに。不器用なりに。ずっと、ずっと…。
…ポケットに入っているスマホに、用意していたタイのSIMカードを差し込むと、早速カナヤンからメッセージが入っていた。
「もう外に出て待ってるで」
そのメッセージを見た私は、無料通話で話をしつつ、イミグレ外の広場で彼と合流した。
空港内の換金レートは最悪なので、必要最低限の換金だけを済ませ、タクシーに乗り、予約したホテルを目指すことになった。
ちなみに、今のスワンナプーム国際空港のタクシーのシステムは非常に単純明快で、チケットを発行し、そのチケットに書かれた番号に該当するタクシーに行き先を言うだけ。大体、待ち時間ゼロで乗れる。もちろんボッタクリもなし。
…が、カナヤンはいち旅行者としてタクシーをスマホアプリで呼びたいみたいなので、私は黙っていた(笑)
早速、彼はタクシーを呼ぶのに苦戦する。運転手がなかなかこちらの場所を特定できずにいた。
その状況を見て、私は「あぁ、タイだなぁ」と改めて実感した。タイ人はアホなのである!(笑)。
カナヤンがイライラしながら運転手と何とかコンタクトをとりつつ、ようやく合流に成功した。予定よりもおそらく15〜20分ほど遅れた。
カナヤンは「アホか!」と文句を言っていたが、慣れている私はケタケタと笑っていた。タイ人が予定時刻通りに現れることなど、ない。もしあったとしたら次の日、タイで雪が降る事になるだろう。
早速タイの洗礼を受けた我々を乗せ、タクシーはナナの中心部にあるホテル「グランドビジネス・イン」へ向かった。
—その77へ続く—
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