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タイでのエピソード・その50
「おはようございまーす!」
「あ、お早う御座います。」
起きてくると、紅一点の女の子が元気に挨拶をして来た。皆で朝食を食べ、バス…ならぬハイエースにぎゅうぎゅうに乗り込み、再びタイ大使館へと向かった。
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ここで2時間…下手するともっと待たされる。まだまだ時間があるので、開門まで近くのコーヒーショップで時間を潰す事にした。
昨日も飲んだラオスコーヒー。改めて飲んでみても、やっぱりコクがあって美味しい。
数人でやって来た中には、例の女の子の姿もあった。
話によると、韓国人国籍である彼女の父は、日本人である母に辛く当たったらしい。
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うーん…こういった家庭内事情はきついよなぁ。そんな中、トップの大学に入学出来たというのも、本当に凄い事だよ。
話を聞く限り、父親に対して強い怒りを覚えている様だ。
故に…彼女の言動や行動にはどこか、自己愛のコップを他人のものから注いでもらおうとする傾向が見られた。でもこれは、仕方ない。まだ若いしね。
何と言うか…「親で決まる」ってのはある。本当に。彼女を見て、改めてそれを強く思った。
私も思わず、故郷の両親を思い出す。元気だろうか。全く連絡を取っていない。
…そうこうしているうち、大使館の門が開いた。
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中に通され、このボロ椅子に座らされる。ここからさらに1時間近く、待たされる事になる。疲れ切った体には、なかなかにキツイ仕打ちだ。
自分の番号が呼ばれるまで、ひたすらに待つ。
呼ばれたら、ビザ更新料を持って窓口に行き、パスポートを受け取って終了。
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ここで問題がある人は、別室に移され、色々と話を聞かされる。書類が足りなかったり、パスポート内情報に不審な点があったりすると、そうなる。
私は…問題無い様だ。無事にパスポートが返って来た。
青ハンは…
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よし、押されていない。まぁ、そりゃそうだ。まだ一回目だもの。
これで最低でも、あとタイに三ヶ月+もう三ヶ月で、計六ヶ月は滞在出来る事になった。
後はクソ狭いハイエースに乗って帰るだけ。帰りだけ、飛行機で帰る事も可能なのだが、私はお金をケチって、帰りも陸路を選んだ。
また拷問の10時間が続く。でも、帰りの方が気持ち的には楽だね。
チューヤンがガンガン、高速道路のごとくぶっ飛ばす。田舎道ってのはどこもこんなもんか。事故らない事を祈る。
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颯爽と流れる景色を見ながら、私は物思いに耽っていた。
これから、どうなるんだろう。
本当に俺は、やっていけるのだろうか…。
何も決めて来なかった。
全てが嫌になって、逃げただけ。
ただただ、死を覚悟しただけ。
他の選択肢は、あったのだろうか…。
中退せず、私立でも我慢して大学を4年間過ごしていたら、また人生は違った形になったのだろうか…。
俺は…間違っていたのだろうか。
…思い浮かぶ独り言は、全てネガティヴなものだった。
—その51へ続く—
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