タイでのエピソード・その78
ホテルで寝たのは、恐らく3時頃。
そして目を覚ましたのが7時30分くらいだ。思ったよりはよく眠れたと言えるだろう。
カナヤンとロビーで待ち合わせし、一緒にオンヌットへ向かう事になった。私が以前、渡タイした時に滞在していた地域だ。
タクシーで行っても良かったのだが、あえてカナヤン初体験となるスカイトレイン(BTS)を利用する事にした。
BTSはその名の通り、バンコクの街の空中を走る電車。
メインとなるスクンビット通りに沿って駅があるので、とりあえずこれを覚えておけばバンコク市内の移動に困ることはない。蜘蛛の巣のように入り組んだ日本に比べれば、遥かに分かりやすいと言えるだろう(BTSを設計したのは日本の企業だが…)。
オンヌットのBTSの中には、バンコクでも特に換金レートが優れている「スーパーリッチ」という換金所があるはず。
ついでに残りの円も、そこでタイバーツに変えようと思っていた。
まずはBTSナナ駅の窓口で「ワンデイ・パス」を購入する事に。価格は150バーツ(約600円)。
これがあれば1日、BTS乗り放題。150バーツ分も乗らないかもしれないが、余計なことを考えなくて良いし、小銭の煩わしさから解放されるのでメリットは大きい。特に観光客にはおすすめ。
ほどなくしてBTSが到着した。
タイ語のアナウンス、車両が到着する際の音、その時の空気感…
その全てが、私の胸を打った。
しかし…思いのほか、私の頭の中はやはり冷たかった。スワンナプーム国際空港に到着した時と同様に…。
もっと全てが感慨深く感じる様な気がしていたのに…どうしたことだろう。
私はこの世の全てに失望し、さらに母を失い…こう言っちゃ何だがある種の「悟り」に近いものを得た。
「ワクワク」や「ドキドキ」といった感情を得るには、無知…つまり「未熟」であることが条件となる。
この世の大概のものを見て、かつ経験してしまった今…私の心は良い意味でも悪い意味でもなく、単純に死んでしまったのかもしれないな。まぁ、これはこれで良いもんだ。
さて、BTSナナ駅からオンヌット駅までは6駅。時間にして大体15〜20分程度といったところ。
ちなみにサイアム線に乗り換えると、「バンコクの秋葉原」ことMBK(マーブン・クロン・センター)に行くことも出来るのだが…
今回の旅では、その時間はちょっと作れないかもしれない。
まぁタイなんぞ関空からひとっ飛びだし、いつでも行けるだろうさ。
オンヌットまで私がガイドとなり、車内で各地域の特徴をカナヤンに解説した。彼は興味深そうに聞いてくれた。
そうこうしているうち、オンヌット駅に到着。
…流石に少し、じんわりと来た(笑)。
全てを捨て、死ぬ覚悟でここに飛び込んだ。
約2年間…私がその間、ここで経験したことはとてもとても…全部なんて書き切れない。
「なっつかしー!!」と叫びつつも辺りを見回すと…
変わっていない…!駐車場のレイアウトなどが少々変わっていたが、駅直結のデパート「センチュリー」も、「テスコロータス」も…ほぼ昔のままだ。
さて…先述した通り、オンヌット駅の構内には、換金所の「スーパーリッチ」があるはず。
ともかく1、2を争うほど換金レートが良い事で有名。バンコク市内の各所にある換金所だが、オンヌットの改札を出てすぐの所にあるここは、観光客にとって本当に便利な場所なのだ。
私とカナヤンは、ここで残りの円をタイバーツに換金するつもりだった。
…が!
おーーーい!どう言うこっちゃい!スーパーリッチがアコムになっとるがな!
何と言うことだ…。ここにスーパーリッチがあるからこそ本当に便利なBTSとして有名だったのに…。
ま、まぁ旅にトラブルは付き物である。この程度のことは想定の範囲内だ。
確かグランドビジネス・インの隣にも換金所があったはず。我々は後ほど、そこで換金する事にした。
早速、思い出を拾って行こう!
まずはセンチュリーの中に入って…
...って、あれ?この雰囲気は…まだ開店してないな、こりゃ(笑)。
時刻をチェックすると、まだ10時前だった。ちょいと早く来すぎたか。
一階のマクドナルドとスターバックスはオープンしていたが、わざわざタイに来てマクドやスタバに行く事もないだろう。
というわけで、既にオープンしているテスコロータスの2階のフードコートにて、我々は小腹を満たしつつ、少々時間を潰す事にした。
—その79へ続く—
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