タイでのエピソード・その59
—その58の続き—
その日、私はS氏の仲間が集まる席に同席した。
どうやらS氏は以前のタイ人の奥さんとは別れ、新しいタイ人の奥さんと結婚したらしい。子供も出来ており、一見すると順風満帆の様に見えた。
一緒にいたケリンと言う女の子は、30歳くらいの子で、とてもそう見えないくらいベビーフェイス。
それに、黙っていたら確実にタイ人だと分からない。見せてやりたいくらい、見た目も日本人そのもの。肌も白いし…本当にびっくりだ。
彼女はS氏を慕っている。話によれば、日本に滞在している際、とある日本人男性との子供を身籠った。だがその後、関係が上手くいかなくなり、子供の親権を争うに至った。
今は無事、親権争いに勝利している。その手助けをしたのがS氏、と言うわけ。まぁ、S氏を敵に回して勝てる奴なんざ、日本にもなかなかいないだろうさ。ケリンちゃん、ラッキーだったね。
S氏とケリンちゃんは見る限り、ハッキリと仕事上の付き合いという事で、割り切っている感じ。ケリンちゃんは普通にタイの会社で通訳として働いている。まぁ、適任だろうな…この日本語レベルなら楽勝で出来るだろう。
このラーメン店をSNSで紹介したり…できる限りのお手伝いをしているみたい。なるほどね。ちなみに、コナンくん大好きっ子(笑)。
タイ人は本当にコナンが好きなんだよ。
私が最初タイ語で話しかけると、ケリンちゃんはその大きな目をさらに大きくして、「えぇ〜!タイ語上手です!すごい〜」と褒めてくれた。
その後S氏の方に向かって、「えぇ、マサヤンさん凄いじゃないですか!発音も良いですよ!」と言った。
…と言う事は、S氏はケリンちゃんに私の事を「タイ語が下手くそな奴」として紹介した…と言う事になるだろうな。まぁ仕方ない。何せ8年ぶりだからね。あんたが見ていない間、俺も俺なりに苦労したわけですよ。
その日は「S氏と愉快な仲間たち」と初お目見え。紹介され、一気に仲間が増えた。
ケリンちゃんを含めて皆、このラーメン店で働いているわけでは無いが…一見するとS氏を慕って集まっている様にも見えた。
集まったのは全て、若い奴ばかり。大学卒業したての子もいる。皆、30にもなっていないくらいだ。
彼らがS氏と知り合ったきっかけは、facebook。
元々、若い奴らで立ち上げた「日タイ交流会」なる集まりがあったのだ。そこにS氏が参加したのがきっかけとのこと。
そして今、その交流会の場所をS氏のラーメン店にする事で、win-winの関係を保っているみたいだ。なーるへそ、彼らの関係がこれでようやく見えた。
確かにお酒もあるし、皆でつまむものも大量にある。S氏が経営しているなら安心して日本人も参加出来るし、都合が良いだろう。
へぇ…相変わらず、上手くやってるじゃないか。
「みんな聞いてくれよ。こいつさ、俺がタイを紹介してやったのに、全く連絡をよこさないんだぜ?」
…S氏に酒が入り、私を責める時間が始まった。言われると思ったよ…やれやれ。
まぁ仕方ないか。私は初回の帰り、そして2回目、3回目の渡タイ全て彼と連絡を取っていない。それが、彼としては悲しかったらしい。
そこは私としても、言える事があるのだが…別に触れないし、掘り下げない。過去を振り返っても仕方ないからね。
でも、びっくりするくらい、S氏はその過去を引きずって来た(笑)。めんどくせぇ。よほど気にしていたんだろうな。
…この日をきっかけに、私は頻繁に呼び出される事になる。まぁ、暇していたし、友達もゼロだったからね。ここまでずーーーーーーーーっと一人で戦って来たから…
これも悪く無いな、と思った。
…この時は、ね。
—その60へ続く—
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