タイでのエピソード・その60
—その59の続き—
S氏と再会してから、私は定期的に呼び出された。
主に彼のラーメン店にだが、時折彼の「取り巻き」と一緒に、大勢で他の飲食店に集まったりもした。
「おい!みんな聞いてくれよ。このマサヤンってやつはさぁ…」
…私はその席に参加する度、いじられた。
まぁ、しゃーない。いじられキャラになるのはあんまり好きじゃ無いんだが、付き合ってやろう。これで楽しい時間になるなら、別に良い。
皆の前でめちゃくちゃバカにされる。そして私はすっかり、「いじられキャラ」として定着した。
——某日、とあるバンコク市内のビアガーデンに集まった時のこと。
その時も、やはりS氏は私の過去の話をネタにしつつ、私をターゲットにし、いじった。
そして、その後「俺の酒が飲めねぇってのか?」的な事を言われ、一気飲みが始まる。私の一番やりたくないやつ。
うげぇ、気持ちわるぅ。皆さん、絶対にやっちゃダメですよ。
続いて、さらにチューハイの一気飲みをやらされた。
横にはS氏と仲の良いK君がいた。K君は筋トレを愛するとても真面目な男で、仕事熱心。S氏の頼みでケリンちゃんと一緒に、Facebook上にラーメン店のコマーシャルを載せたりしてるみたい。
そのK君と、一気飲み競争をやらされる。もちろん、私はずーっとやらされていたので不利。もはや、いじめだ。
K君は「よっしゃ!」ってな感じで、やる気満々。一方、それとは対照的に「もう勘弁してよ…」的な私。
予想通り私は負け、具合の悪さが加速した。
それから私がトイレに行くと…後ろからK君が小走りでついてきた。
そして彼は、私に頭を下げ、こう言った。
「すいません!マサヤンさん…さっきは本当に…。俺、Sさんに『やれ!』って言われて、断る事が出来なくて、それで…」
…私はその一言で、全てを悟った。
Sさん…相変わらずか。
あなたの周りであなたに笑顔を振りまいてくれる人たちは、恐らくあなたが思っているほど、あなたの事を理解しちゃいないだろう。
「帝国」を築きたがるその性根は、変わっていないと言うこと。8年前のあの日から…あなたは変わっていない。
帰り際、とある話の流れの中で、彼は私にこう言った。
「俺のこの8年間に比べたら、お前の8年間なんてクソみたいなもんじゃん?」
…あらあら。
どうやらカネを稼ぐスキルの成長と、ヒトとしての成長は比例しなかった様だ。
久しぶりに「仲間の輪」ってやつが出来たと思ったんだけどなぁ。残念。
「カネやコネクションを持っても、こうなっちゃダメ」の典型。彼もまた、私にとって最高の反面教師の一人なのだ。
—その61へ続く—
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