タイでのエピソード・その38
—その37の続き—
私は時折、仮想通貨の取引をしつつ、バンコク内を探索して時間を潰していた。
テレビも買い替えて、家の中でゲームを満喫する。飽きて来たらジムでトレーニングをしたり、街に出かけたりしていた。うーん、もはや老後の生活ですな(笑)
ノービザなので、観光ビザツアーの手配をしないといけない。一人で隣国まで行けるならそれでも良いのだが、個人で手続きを行うと取得出来ない可能性がある。
ネット上で某ビザツアー専門会社を見つけ、そこに連絡をしてみた。第一印象としては、非常に無愛想。その男は「タカイ」と名乗った。今後、このタカイ氏には世話になる事となる。
「すいません、観光ビザツアーに参加したいのですが…」
「…いつ?」
「ええと…来週の◯日とか、どうでしょう?」
「じゃあ二ページ以上余白のあるパスポート、シャツで胸から上の写真2枚、青のボールペン、ビザ更新料1900バーツとツアー参加費3900バーツ用意しといて。集合は夕方17時にオンヌット駅のロータスの駐車場。前日に連絡入れるからね。キャンセル料は2000バーツ。OK?」
「あ…わ、分かりました。」
一方的な説明で、余計な会話を挟まない。彼なりのやり方なんだろう。何と言うか、どこかのバイヤーとイケナイ打ち合わせをしている時みたいだ(笑)。
ちなみにこのビザツアー、更新はラオスのビエンチャンで行う。
希望すれば空路も選べるが、参加者はほぼ陸路。帰りだけ空路って手もあるがまぁ、出来るだけ安値で済ませたいので、私は陸路を選んだ。
片道、およそ半日ほどかかる。その間いくつかの休憩ポイントを挟むものの、ずーっと狭い車内に閉じ込められる。まー、こればっかりはしゃーない。
幸いにして、集合場所はオンヌット駅直結のロータスの駐車場。
コンドミニアムの前から駅前まで無料バスが出ているし、私にとってはとても好都合なツアーだった。
よし、とりあえず初回のツアーの申し込みは完了した。
後はビザ用の写真を撮っておくだけ。上半身シャツを着て写せばOK。ネクタイは必要なし。
ちなみに、ビザ参加料3900バーツの中には、大使館に渡す「アンダーテーブル」、500バーツも含まれている。これが無いと、取得出来ない事もある。
全ては、カネ次第。カネこそ全て。マネーイズパワー。これぞ、タイだ。
私は散歩がてら、写真を撮るためにアソーク駅へと向かった。
アソークと言えば…
私をテレフォンオペレーターとして半年…いや、通しで一年ほど閉じ込めてくれたあの「牢獄」、エクスチェンジタワーがある。
風の噂によれば、メンツはほとんど変わったとか。知らんけど。
冷やかしにビルの中に入ってみた。
途端、ぎゅうーーーっと胸の奥が蠢くのを感じた。
何も知らなかったあの頃が…走馬灯の様に蘇る。
荷物重量オーバーでも何とか辿り着いたあの日。ゴミ溜めの中に居ながらも夢を見続けたあの日。赤シャツのデモに怯えたあの日。帰国後にすぐ後悔し、またこのビルに泣く泣く戻って来たあの日。パニック障害で死を覚悟したあの日。ヒトシと、S氏と語り合ったあの日々…
ビルの中のテナントもかなり一新されていたが、基本的なレイアウトは変わっていない。
いつもの「たかり場」を覗こうと思ったが…やめた。ここにはもう、私の居場所は無い。…さらば。
アソーク駅近くの某写真屋で撮影をし、現像が終わるまで近場で時間を潰した。
これも噂で聞いた事なのだが、今、S氏はバンコクで日本人向けの某ラーメン店を買収し、経営をしているのだとか。
その某ラーメン店が、アソーク駅付近にある。店舗の前を何気なく通り過ぎた。
すると…
ちょうどミーティングでもしていたのか、偶然S氏の姿が目に入った。おぉ、元気そうじゃないか。
前回の渡タイではとうとう連絡を一切、しなかった。話によればヒトシもS氏も元気らしいし…まぁ、別に私からコンタクトを取る事もあるまい。元気なら、よい。
私は出来上がった写真を受け取り、帰路についた。
そうそう、バンコクには見所と言える有名なデパートも沢山ある。
エンポリアム、サイアムパラゴン、MBK(マーブンクロン)などなど…。私は観光場所回りよりも、国内外問わず、何故かこういったデパート巡りが大好きなのだ(クーラーも効いてるし)。語り尽くすには、かなりの記事量になると思う。休日の暇つぶしは大体、一人で行うウィンドウショッピングだった。
当マガジンでも今後、それらのデパートについて積極的に取り上げていきたい。
—その39へ続く—
もし私の研究に興味を持って頂けたなら、是非ともサポートをして頂けると嬉しいです。サポート分は当然、全て研究費用に回させて頂きます。必ず真理へと辿り着いて見せますので、どうか何卒、宜しくお願い致します。