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Bukalapak (ブカラパック):インドネシアのデジタル化をもたらすユニコーン・プラットフォーマー

"Warung in Garut" by Gunawan Kartapranata under CC-BY-SA-3.0


本記事は、インドネシアのユニコーンである、Bukalapak(ブカラパック)に関する記事です。


今までのEC関連記事

今までEC関連の記事として、インドのFlipkart、アフリカのJumiaを紹介してきました。また、中国におけるライブコマースの人気の高まりや毎年勢いを増すECのお祭りである独身の日なども紹介してきました。


今回は、インドネシアのECを紹介します。Bukalapak です。


自分の屋台を開く

インドネシアで、Bukalapak(ブカラパック)という企業が注目されています。

「buka(ブカ)」は開く、開放するという意味で、「lapak(ラパック)」は屋台のことを指します。つまり、Bukalapak は「自分の屋台を開く」という意味です。


2010年に設立した Bukalapak はインドネシア4番目の、評価額が10億ドルを超える未上場企業、いわゆるユニコーンです。(インドネシアのユニコーンは6社あります。Bukalapakの他に、EC企業のTokopedia、中国EC大手であるJD.comのインドネシア事業 JD.ID、ライドハイク企業のGojek、旅行サイトのTraveloka、モバイル決済サービスのOVO、があります。)

世界第4位の人口を誇るインドネシアは、東南アジアで最も多くのインターネットユーザーを抱えており、さらなる成長の可能性を秘めていると分析されています。インドネシアの人口は2億7,000万人ほどですが、Bukalapak はインドネシアの広大な農村地域をおさえて、約1350万の加盟店と約1億人の顧客を抱えているEC企業です。いわゆるB2B2Cモデルで加盟店のEC事業を支えています。Bukalapakは、加盟店のコミュニティを作り上げ、セミナーや各種イベントでのプラクティス共有や情報共有などを行い、強い結びつきを作っています。出店店舗のコミュニティを形成し、楽天大学というセミナーでプラクティスの共有をはかっている、日本の楽天のビジネスに似ているところがあります。それに加えて、Bukalapakは、B2B2CだけでなくB2B、C2C、O2Oなど幅広い領域にもサービスを展開しています。

2020年時点で、Bukalapakは、インドネシアでのECの売り上げ順位で、1位のシンガポール発のShopee、2位の同じく地場のTokopediaに続いて、3位となっており、激しい競争を展開しています。


Warung (ワルン)のデジタル化支援

Bukalapak は、ECモールとして知名度が高いだけでなく、Warung(ワルン)のデジタル化支援も行っています。

インドネシアには、Warungと呼ばれる何百万もの屋台や売店という個人商店があります。


Warungは、本記事のサムネイル画像や上記動画の中にあるような、カジュアルな売店や質素な食堂、喫茶店といった形のもので、6700万あるといわれるインドネシアのスモールビジネスの多くがこの様式で商売を営んでいます。インドネシアの日常生活にとって欠かすことのできない重要な一部です。多様な種類のWarungが存在し、キオスク的なもので食料品、日用雑貨を提供する店から、バナナを揚げた食べ物、ナシゴレン、ミーゴレンを提供する屋台や食堂から、インターネットカフェまであります。

Bukalapak はWarungのデジタル化支援として、支店を持たない銀行サービスであるMitra Bukalapakを提供しています。Mitra とは、「提携者」「パートナー」を指すインドネシア語で、つまり、Mitra Bukalapakとは「Bukalapak パートナー」という意味になります。

このサービスは加盟店であるWarung向けのものと、Warungのお客さんである消費者向けのものがあります。加盟店向けのものとしては、Warung がこのMitra Bukalapakにより、インスタントヌードルやタバコ等の商品回転率の高い商品を仕入れることができるようになります。消費者向けのものとしては、銀行口座を持たない人でも、請求書での支払いを行ったり、Warungの屋台や売店を通じてお金を預けたり、引き出したりすることができます。現在、350万店以上のWarungがMitra Bukalapakに登録しており、この金融サービスの提供店となっています。インドネシアで最大の銀行でさえ支店数1万、ATM設置数4万程度であることを踏まえると、これはインドネシア最大級の金融ネットワークと言えるかもしれません。

世界銀行のデータによると、インドネシアの人口の半分は未だに銀行口座を持っていません。Bukalapak はインドネシアの人々が日常的に利用するWarungをデジタル金融のインフラとし、そのトランザクションフィーによるビジネスを拡大することで、ECの先の展開を狙っています。(ここも、銀行・クレジットカード・証券を取り込み、金融ビジネスへと業容を大きく拡大した楽天の成長を想起させます。)


CEOの交代と今後の展開

地元に密着しているECプラットフォーマーとして、ユニコーン企業となり、成長をしてきたBukalapak ですが、2020年1月、10年にわたって指揮を執ってきたファウンダーであるAchmad Zaky氏がCEOを退任。41歳の元銀行員であるRachmat氏が後継者となりました。Achmad氏は、このCEO交代を「Bukalapakがプロフェッショナルな企業として更なるステージに入るため」と説明しています。

Rachmat氏がCEOに就任して100日目にCOVID-19による感染拡大が起こりました。結果、消費者のデジタルシフトが一気に進み、インドネシアのEC利用率は40%近く増加、2020年のオンライン支出は11%増の440億ドルに達しています。Bukalapak も、取引額が130%以上増加し、今までの最大の課題であった収益性は大きく向上しています。

2021年1月には、Standard Chartered銀行が、同社の事業拡大のための2億ドルの資金調達ラウンドに参加しました。このパートナーシップは、Bukalapakのデジタルバンキングサービスの構築を進ませるものと見られています。

他にも、インドネシアのメディアコングロマリットであるEmtek社、アリババ傘下のAnt Financial社、シンガポールの政府系ファンドであるGIC社、韓国のNaver等が出資しており、同社の評価額は25億ドルから30億ドルになると予想されています。

2020年飛躍的な成長を遂げた同社ですが、今後はIPOを計画しているとも言われています。
上に貼りましたインタビュー動画の中で、Rachmat氏は海外展開は優先事項ではないと述べています。インドネシアの市場のポテンシャルはまだまだ大きいためです。実際、インドネシアのEC利用率はCOVID-19で躍進したとはいえ、まだ20%程度に留まっています。また、Bukalapakのビジネスも大都市圏以外の領域が70%を占めており、都市部への進出の伸びしろがあります。金融領域も含めたデジタル化の進展はこれから本格化します。今後のBukalapakの成長も見逃せません。

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